[国際ワークショップ] International workshop on indigenous manufacturing in Africaの開催(2020年2月28日)

日時:2020年2月28日(金)10:00-17:00
場所:京都大学 稲盛財団記念館3階 中会議室

本ワークショップはアフリカ潜在力の研究の一部でアフリカの地場製造業の発展の経緯と要因及びその国家との関係のあり方に関する理解を深めることを目的として2020年2月28日に京都大学で開催された。ワークショップではアフリカにおける企業の今日的状況の実証調査を通じて、アフリカにおける地場企業のインフォーマル性と発展過程、企業と労働者による技術の習得と適応・応用、信用サービスの展開、国家の政策・市場の状況変動などの把握を踏まえ、アフリカの「下からの」工業化における課題と可能性を検討した。

ワークショップのためケニアからジェルマーノ・ムワブ教授(ナイロビ大学)、マダガスカルからラミアリソン・ヘリンザトボ教授(アンタナナリボ大学)が来日し、日本からはフェルダ・ゲレゲン国際連合工業開発機関(UNIDO)東京投資・技術移転促進事務所次長、峯陽一教授(同志社大学)、福西隆弘主任研究員(日本貿易振興機構アジア経済研究所)、大山修一准教授 (京都大学、当時)、尾和潤美准教授(中京大学)およびラランディソン・ツィラヴ講師(京都大学)がコメンテーターとして参加した。 高橋基樹京都大学教授の司会で、井手上和代立命館大学講師、西浦昭雄創価大学教授、京都大学博士課程の松原加奈氏、ラミアリソン・ヘリンザトボアンタナナリボ大学教授、鄭傚民京都大学研究員、加藤珠比京都大学研究員が発表報告を行った。以下がそのプログラムである。

プログラム

オープニングセッション

開会の辞: 高橋基樹

セッション1(午前)
  • 井手上和代
    Finance for Industrialization in Mauritius, 1970s-1990s: Focus on the Role of Local Industrial Capitalist and Catalyst
    コメンテーター: ラミアリソン・ヘリンザトボ 、福西隆弘
  • 西浦昭雄
    Market entry and supply chain of food processing SMEs in Zambia
    コメンテーター: ジェルマーノ・ムワブ、大山修一
  • 松原加奈
    Skill formation, labor relations and firms’ development in shoe-making industries in Ethiopia
    コメンテーター: ラランディソン・ツィラヴ、福西隆弘
セッション2(午後)
  • ラミアリソン・ヘリンザトボ
    Madagascar’s informal sector: Main challenges and survival strategy
    コメンテーター: 高橋基樹、ラランディソン・ツィラヴ
  • 鄭傚民
    TVET institutes and donor supports in Uganda
    コメンテーター: フェルダ・ゲレゲン、尾和潤美
  • コーヒーブレイク
  • 加藤珠比 (京都大学)
    Growing market on nutritional supplementary food in Tanzania: mixed porridge flour
    コメンテーター: ジェルマーノ・ムワブ、峯陽一

上記の報告に対して、それぞれのコメンテーターだけでなく、他の出席者からも様々な質問や意見が出された。アフリカの工業化は、開発援助や、外国からの直接投資によるだけでは、決して持続的なものとはならないとの共通認識のもと、アフリカの「下からの」工業化における課題と可能性について活発に議論した。今後も、アフリカの潜在力の一つのかたちとして地場製造業の発展を、その実態に即して多面的に捉えるため、調査を継続していくことが合意された。

[班研究会] ジェンダー・セクシュアリティ班第12回研究会(2019年11月2日開催)

日時:2019年11月2日(土)13:00~14:50
場所:京都大学稲盛財団記念館3階中会議室

報告タイトル:「Forget-me-not」
氏名: 藤元敬二(ドキュメンタリー写真家)

プロフィール:
1983年生まれのドキュメンタリー写真家。米国州立モンタナ大学ジャーナリズム学部を卒業後にはネパールの新聞社勤務を経て、主に発展途上国に暮らす肉体的、精神的な影を主題とした数々のドキュメンタリープロジェクトを制作・発表している。
2014年8月から2015年12月にかけてはケニアに暮らしながら東アフリカに暮らすゲイの人々の撮影を行った。
http://www.keijifujimoto.net/

発表要旨: 2014年8月。朝早くに目が覚めた。陽はまだ昇っておらず、眠った大地を覆う東の空は暗かった。僕はエアアラビアの機内サービスでコーヒーを頼み、これから始まる東アフリカでの生活への期待と不安の中で揺れ続けていた。
    思春期を迎えゲイであると感じ始めた頃から、世の中に絶対的に正しい価値観など存在しないと信じてきた。よく晴れた太陽のもとでこそ、大地にくっきりと刻み込まれる影。そこに生きる自身の宿命を自覚したのだ。
    ネパール山間部の少女売買、ムエタイギャンブルに生きるバンコクの人びと、中朝国境での密輸や脱北者たちなどなど。若き僕が敢えて選び映し取ってきた写真の中には、常に社会の少数派として生きる人々の『苦しみ』が映し込まれていた。
    己の核心に触れられることは許さず、苦境に在る人々の姿を通して感情を代弁してもらい続けている。いつしか自身が卑怯だと感じる様になっていった。そんな僕が30代を迎え、新たな歩みとして『同性愛』を東アフリカに暮らしながら撮影することを決断したのは、必然的なことだったのかもしれない。
着陸の時間は迫っていた。
「これから始まる撮影はきっと、自分自身を見つめ続ける日々にもなるだろう」
心で反芻する僕の横で太陽が昇り、朝日に照らし出されたナイロビの高層ビル群が光り輝いていた。

[班研究会] ジェンダー・セクシュアリティ班第10回研究会(2019年1月26日開催)

日時:2019年1月26日(土)14:00-16:30
場所:京都大学稲盛財団記念館小会議室1

タイトル:「エチオピア西南部マーレにおける子どもの世帯間移動と家族の紐帯」
発表者:有井晴香(京都大学)

アフリカ社会において拡大家族のなかで子どもの養育が考えられることによる子どもの世帯間移動は多くみられてきた。本報告では、とくに遺棄された子どもに注目して、実子の養育を放棄する状況がいかにして生じるのか、また遺棄された子どもの養育がどのような文脈でおこなわれているのかについてエチオピア西南部マーレ社会の事例を報告した。婚外子と特定の禁忌に触れたドゥーニと呼ばれる子どもがいかに遺棄されまた同時に保護されるのかについて検討した。婚外子の場合、その多くは親族がひきとり養育されてきたのに対して、ドゥーニは災いをもたらす存在として殺害されてきた。こうした嬰児殺しの慣習は、政府による取り締まりやプロテスタント信仰の広がりを背景にほとんど見られなくなっている。現在では、ドゥーニという考え方は在来信仰特有のものであり、改宗者にとっては無害な存在であるとして、血縁ではない改宗者がドゥーニを保護・養育する事例を報告した。メンバーからは、土地制度とのかかわりや子どもの認知に関する価値規範についてコメントを得た。

(有井晴香)

[班研究会] 国家・市民班第9回研究会(2019年11月2日開催)

日時:2019年11月2日(土)13:00-14:45
場所:京都大学稲盛財団記念館3階301

報告タイトル:「正統な代理人?:アフリカの地域機構の立場から見た国連コートジボワール活動」
氏名:佐藤章
所属:アジア経済研究所

本報告は2011年4月に国連PKOがコートジボワールで行った軍事行動に焦点を当て、武力紛争への強い介入策に必要な国際的な正統性がどのように構築されたかについて論じるものである。

この軍事行動は、現地に駐留していた国連PKO (国連コートジボワール活動: UNOCI)が、国連憲章第7章の権限に基づき、フランス軍の支援のもと、ローラン・バボ大統領の指揮下にある軍事拠点を攻撃したものであり、「保護する責任」の考えに則って行われた介入でもあったと一般に理解されている。ただ、この軍事行動に関しては、これがバボ大統領の失脚を確実なものとすることが事前に十分に予見されるものであった。では、このように副次的効果をもたらす政治的な介入になることがあらかじめ想定されたにもかかわらず、国連PKOが軍事行動に踏み切りえたのはなぜだろうか。

本報告はこのクエスチョンに対して、アフリカの地域機構の態度から回答を与えようとするものであり、考察は、(1) 国連PKOが軍事行動をとる正統性をアフリカ諸国が保証したとい側面、(2)、ECOWASが自主的に遂行してもかまわなかった軍事行動を国連PKOが代わりに行ってくれたという側面、の2方向から行われた。

報告に対しては、主に、当時の安保理が直面していた状況や、地域機構を主体とした記述に伴う問題などをめぐって討論が行われ、研究会の最終成果執筆に向けた有意義な機会となった。

文責:佐藤章

[班研究会] 国家・市民班第8回研究会(2019年6月21日開催)

日時:2019年6月21日(土)12:30-14:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階小会議室2

内容:出版に向けた意見交換

[班研究会] 対立・共生班第11回研究会 (2019年11月2日開催)

日時:2019年11月2日(土)12:30~14:30
場所:京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科稲盛記念館3階小会議室1

今回の班会議では、班員の阪本が「サヘルにおける牧畜民と農耕民の対立と共生:シミュレーションによる検討」というタイトルで研究の進捗状況に関する報告を行った。この研究では、ニジェール南部をフィールドに、現地の農耕民(ハウサ)と牧畜民(フルベ・トゥアレグ)との共存関係に深刻な影響を及ぼしている家畜による食害(crop damage)のリスクの評価とその低減のための方策の検討を行うことが目指されている。報告では、2019年9月の現地調査で得た牧畜民の放牧キャンプの分布などに関するデータが紹介され、こうしたデータを、衛星画像の判読やシミュレーションなど他の手法と組み合わせることで、食害のリスク評価を広域的に行いうることが示された。

発表後の質疑応答では、現地の農耕民と牧畜民の生業や相互関係のあり方を問う様々な質問が寄せられたほか、「牧畜民vs農耕民」といった表象やカテゴリーを無批判に所与とすることに対して注意を促す意見も提起された。

阪本拓人

[班研究会] 教育・社会班第9回研究会(2019年11月2日開催)

日時:2019年11月2日(土)12:00~14:30
場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室

11月2日の班会議では、前回会議に引き続き、英文書籍の出版に向けて、各章担当者の内容を具体的に共有するとともに、書籍全体のビジョンを討議した。今回は特に、教育社会班研究視角を明確にするため、班メンバーは、事前に宿題として準備してきた論文の①関連するアクター、②取り上げるテーマに関わる社会構造や制度枠組み、③社会的文脈、を整理し簡単にプレゼンした。この活動から、相互にテーマの関連性を確認することができ、研究視角と書籍の構想がまとめられた。書籍は、フォーマルな学校教育から学校外での在来知の伝達、学校で伝えられる政治思想、学校を卒業した後の雇用や社会とのかかわり、アフリカ社会に学校教育が制度化された植民地期からの歴史的分析などを、知識の中身、実践、制度の三部構成として考えていくことが提起された。会議では、アフリカ研究者3名も教育社会班の書籍に寄稿予定であることが報告され、出版までの今後のスケジュールも確認した。全体の構想がまとまり、班メンバーも出版に向けての意識と意欲が高まった。

[班研究会] 対立・共生班第10回研究会(2019年10月12日開催)

日時:2019年10月12日(土)13:30-17:40
場所:龍谷大学深草学舎紫英館第1共同研究室

報告タイトル:「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の難民政策形成の要因分析」
報告者:田中翔(大阪大学大学院)
報告タイトル:「アフリカにおける国家の形成と非形成」
報告者:細井友裕(東京大学大学院)

今回の班研究会では、田中翔氏と細井友裕氏の2名の若手研究者が発表した。田中氏の発表では、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)に加盟する一部諸国が2007年に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と調印した多国間協定をひとつの軸として議論が展開された。これまで難民問題の解決策としては、①出身国への帰還、②受入国への統合、③第三国定住という主に3つの選択肢しかなかった。これに対して西アフリカでは、一部のECOWAS加盟諸国が2007年にUNHCRとの間で協定を締結し、停止条項にもとづいて難民資格を喪失したシエラレオネ・リベリア難民に対してECOWASパスポートを発給することで引き続き受入国などでの定住を可能にする方策がとられた。田中氏によれば、こうしたECOWAS諸国による施策は、従来の難民政策にはなかった「第四の選択肢」の可能性を示唆するものであるという。発表後、UNHCRの難民政策の変容やECOWASの移民・難民政策の動向について活発な質疑応答が行われた。

他方、細井氏の発表では、「どのようなメカニズムで政府の行政能力や公共財提供は向上するのか」という国家形成に関する問いをめぐって議論が展開された。細井氏によれば、従来は、政府の行政能力が高い国家がいかに形成されるのかを、戦争が果たす役割に注目する「好戦主義理論」や、課税を通じた支配者と被支配者の間の関係性から分析しようとする「租税国家論」が主流であったという。しかし、アフリカの国家形成に関してはそうした主流理論が適用できないとした上で、細井氏は、アフリカの国家形成に関する「代替理論」を提示する。それは、「政府が地位を維持するために国内勢力に依存するときは国家形成が進み、国外勢力に依存しないときは国家形成は進まない」とするものであり、その検証のために南アフリカやジンバブウェの事例が紹介された。発表後、田中氏が提示する仮説の有用性などをめぐって様々なディスカッションが行われた。

落合雄彦

[班研究会] 教育・社会班第8回研究会(2019年6月22日開催)

日時:2019年6月22日(土)12:30~14:30
場所:京都大学稲盛財団記念館3階中会議室

6月22日の班会議では、英文書籍の出版に向けて、各章担当者の執筆計画を共有するとともに、書籍全体のビジョンを討議した。当日参加した9名を含め、12名が執筆案を提出し、班メンバーの参加意識の高さがうかがわれた。

執筆テーマは、フォーマルな学校教育から学校外での在来知の伝達、学校で伝えられる政治思想、学校を卒業した後の雇用や社会とのかかわり、アフリカ社会に学校教育が制度化された植民地期からの歴史的分析など、多岐にわたる。当班では、今回の科研で、従来アフリカの学校教育に関する研究をしてきた研究者だけでなく、政治学、文化人類学、歴史学等、異なる学問的背景から「教育」「知識」をテーマにしている研究者の学び合いの中から、学問領域の新しい融合を図ってきた。6月22日の研究会で出された様々な章執筆案から提起された議論や研究視角は、更なる議論に向けてマッピングされ、研究会後に班メンバーに共有された。

次回以降の研究会で、出版企画がバラバラの章の寄せ集めでなく、相互に響き合い、共通の理論的提起につながるよう、更なる議論を積み重ねる予定である。

[班研究会] 対立・共生班第9回研究会(2019年6月22日開催)

日時:2019年6月22日(土)11:30-14:00
場所:京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科稲盛記念館3階

報告タイトル:「南アフリカに暮らす移民・難民の生活を支える社会的実践の諸相」
報告者:佐藤千鶴子(アジア経済研究所)

佐藤氏は、南アフリカ(以下、南ア)最大の産業都市ジョハネスバーグに暮らす3つのアフリカ諸国出身者(コンゴ民主共和国<以下、コンゴ>、ジンバブウェ、マラウィ)の間に見られる、生活を支えるためのさまざまな社会的実践について報告した。

民主化後の南アには、歴史的につながりの深い南部アフリカ諸国のみならず、地理的に離れた中部や東部アフリカからも移民・難民が流入してきている。特に2010年代に入って移民(難民含む)の数が増えているが、その背景として佐藤氏は、南アと他のアフリカ諸国の間に存在する経済力の差のみならず、南アにいる親族や同郷の友人たちとの個人的な繋がりを通じて南アにやってくる人びとが増えたことが重要であるとする。そして、このような社会的紐帯が国境を越えた移動を引き起こすのみならず、移動先での生活を形作る上でも重要な役割を果たしている、との認識のもと、コンゴ、ジンバブウェ、マラウィの3カ国出身者を対象に、社会的紐帯に基づく実践がどのような形で行われているのか、3ヵ国出身者の社会的実践の間に何らかの相違が見られるならば、相違が何によって引き起こされているのかを明らかにしたい、とした。

これら3ヵ国出身者が南アに移動するようになった背景や、南アで得られる滞在資格は異なっている。コンゴ人の移住はアパルトヘイト末期に開始されたが、2000代以降に増加しており、今日の移住者は主に紛争や政治的迫害から逃れて難民認定を受けるために庇護申請者として生活している。3カ国の中で南アにおける移住者数が最多のジンバブウェ人は、アパルトヘイト時代から南部に住むンデベレ人を中心に非正規で国境を越え、南ア黒人に紛れて庭師や建設現場で働く人びとがいたものの、南アへの移住者が急増するのは、政治経済的混乱とインフレが悪化した2000年代半ば以降である。他方、マラウィは歴史的には政府間協定に基づく南ア鉱山への男性の単身出稼ぎ労働者の送出し国であったが、1990年代初頭までに鉱山への出稼ぎは激減した。経済的な機会を求める個人での移動は南アの民主化後に徐々に増加してきたが、そのペースが加速したのは2000年半ば以降である。ジンバブウェ人とマラウィ人は基本的に経済移民であり、その多くは正規の就労ビザを持たない非正規移民として南アに暮らしている。

佐藤氏は、これら3ヵ国出身者の間で見られる社会的実践を、①南アに到着して生活を開始する、②生活を軌道に乗せる(衣食住の「住」と生計手段=仕事を見つける)、③アクシデント(死、大病)に備える、④精神的支えを得る、⑤トランスナショナルな絆を維持する、の5つの局面に分けた上で、3ヵ国出身者に共通してみられる実践と、特定の諸国出身者に主にみられる実践、に分類して列挙した。そして出身国による社会的実践の違いを生む原因として、地理的距離、移民の規模、移住の歴史の長短に加えて、出身国の政治状況や、国に帰ることが可能かどうかに起因する将来像の違いが関係しているのではないか、とした。また、出身国が同じでも、出自に基づく社会的ネットワークから得られる利点には個人差があるため、これらのネットワークからこぼれ落ちてしまう人々がいることについて、今後、考察を深めていきたい、とした。

質疑応答では、①親族や友人関係に基づいて行われる実践と単に出身国が同じであるということに基づいて行われる実践を同じ土俵で論じることが適切かどうか、②1950年代~60年代の農村から都市への出稼ぎ移民の間で見られた相互扶助と21世紀の国際移民の間での相互扶助のあり方の類似点と相違点は何か、③人々が「同胞」といった際に実際には誰――どのようなつながりに基づく人――を意味しているのかもっと注意深く見る必要があるのではないか、④「同胞」意識に基づく内向きの関係性を超えて、ホストである南ア人や南ア社会との関係性やさまざまなアフリカ諸国出身者の間での関係性の構築のような外向きの、共存に向かう関係性のあり方を見るべきではないか、⑤関係性に基づく実践のみならず、実践から生まれる新たな関係性についても考慮すべきではないか、⑥等価交換が行われる場合と、等価交換が行われない場合の実践を分けるのが良いのではないか、⑦男性と女性の間での実践の違いについてもっと注意すべきではないか、といった点を含むさまざま論点が提起され、活発な議論が行われた。

佐藤千鶴子