[班研究会] 対立・共生班第10回研究会(2019年10月12日開催)

日時:2019年10月12日(土)13:30-17:40
場所:龍谷大学深草学舎紫英館第1共同研究室

報告タイトル:「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の難民政策形成の要因分析」
報告者:田中翔(大阪大学大学院)
報告タイトル:「アフリカにおける国家の形成と非形成」
報告者:細井友裕(東京大学大学院)

今回の班研究会では、田中翔氏と細井友裕氏の2名の若手研究者が発表した。田中氏の発表では、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)に加盟する一部諸国が2007年に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と調印した多国間協定をひとつの軸として議論が展開された。これまで難民問題の解決策としては、①出身国への帰還、②受入国への統合、③第三国定住という主に3つの選択肢しかなかった。これに対して西アフリカでは、一部のECOWAS加盟諸国が2007年にUNHCRとの間で協定を締結し、停止条項にもとづいて難民資格を喪失したシエラレオネ・リベリア難民に対してECOWASパスポートを発給することで引き続き受入国などでの定住を可能にする方策がとられた。田中氏によれば、こうしたECOWAS諸国による施策は、従来の難民政策にはなかった「第四の選択肢」の可能性を示唆するものであるという。発表後、UNHCRの難民政策の変容やECOWASの移民・難民政策の動向について活発な質疑応答が行われた。

他方、細井氏の発表では、「どのようなメカニズムで政府の行政能力や公共財提供は向上するのか」という国家形成に関する問いをめぐって議論が展開された。細井氏によれば、従来は、政府の行政能力が高い国家がいかに形成されるのかを、戦争が果たす役割に注目する「好戦主義理論」や、課税を通じた支配者と被支配者の間の関係性から分析しようとする「租税国家論」が主流であったという。しかし、アフリカの国家形成に関してはそうした主流理論が適用できないとした上で、細井氏は、アフリカの国家形成に関する「代替理論」を提示する。それは、「政府が地位を維持するために国内勢力に依存するときは国家形成が進み、国外勢力に依存しないときは国家形成は進まない」とするものであり、その検証のために南アフリカやジンバブウェの事例が紹介された。発表後、田中氏が提示する仮説の有用性などをめぐって様々なディスカッションが行われた。

落合雄彦

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