[全体会議] 第19回全体会議「「アフリカ潜在力」のプロジェクト10年(最終成果報告会)」(2021年3月6日)

日時:2021年3月6日(土)14時~16時30分
場所:オンライン開催

プログラム:
14:00~14:05:事務連絡
14:05~14:15:趣旨説明:松田素二(プロジェクト代表:京都大学)
14:15~15:25:各研究班の成果出版に関する報告(Vol. 1~5)
『African Politics of Survival: Extraversion and Informality in the Contemporary World』
遠藤貢(国家・市民班班長:東京大学)
『Knowledge, Education and Social Structure in Africa』
山田肖子(教育・社会班班長:名古屋大学)
『People, Predicaments and Potentials in Africa』
落合雄彦(対立・共生班班長:龍谷大学)
『Development and Subsistence in Globalising Africa: Beyond the Dichotomy』
高橋基樹(開発・生業班班長:京都大学)
『Dynamism in African Languages and Literature: Towards Conceptualisation of African Potentials』
竹村景子(言語・文学班班長:大阪大学)
15:25~15:35:休憩
15:35~15:55:各研究班の成果出版に関する報告(Vol. 6~7)
『‘African Potentials’ for Wildlife Conservation and Natural Resource Management: Against the Images of ‘Deficiency’ and Tyranny of ‘Fortress’』
目黒紀夫(環境・生態班班長:広島市立大学)
『Contemporary Gender and Sexuality in Africa: African-Japanese Anthropological Approach』
椎野若菜(ジェンダー・セクシュアリティ班班長:東京外国語大学)
15:55~16:30:総合討論・質疑応答(司会・平野(野元)美佐:京都大学)

本プロジェクトの最終的な成果として、以下の7冊の英文論文集を出版する。そのうち、Vol. 1~5は2021年3月、Vol. 6~7は、2021年7月に出版予定である。いずれも出版社は、カメルーンのLangaa RPCIGである。

7冊は、それぞれ本プロジェクトを構成する7つの班のメンバーを中心とした執筆陣によって書かれている。そのために本会議では、7つの班の班長であり、それぞれの巻の編者も務めた7人が、各巻の出版の目的、構成と内容を報告し、それをもとにして議論をおこなった。

Volume 1
Title: African Politics of Survival: Extraversion and Informality in the Contemporary World
Editors: Mitsugi Endo (The University of Tokyo), Ato Kwamena Onoma (CODESRIA) and Michael Neocosmos (Rhodes University)

Volume 2
Title: Knowledge, Education and Social Structure in Africa
Editors: Shoko Yamada (Nagoya University), Akira Takada (Kyoto University) and Shose Kessi (University of Cape Town)

Volume 3
Title: People, Predicaments and Potentials in Africa
Editors: Takehiko Ochiai (Ryukoku University), Misa Hirano-Nomoto (Kyoto University) and Daniel E. Agbiboa (Harvard University)

Volume 4
Title: Development and Subsistence in Globalising Africa: Beyond the Dichotomy
Editors: Motoki Takahashi (Kyoto University), Shuichi Oyama (Kyoto University) and Herinjatovo Aimé Ramiarison (University of Antananarivo)

Volume 5
Title: Dynamism in African Languages and Literature: Towards Conceptualisation of African Potentials
Editors: Keiko Takemura (Osaka University) and Francis B. Nyamnjoh (University of Cape Town)

Volume 6
Title: ‘African Potentials’ for Wildlife Conservation and Natural Resource Management: Against the Images of ‘Deficiency’ and Tyranny of ‘Fortress’
Editors: Toshio Meguro (Hiroshima City University), Chihiro Ito (Fukuoka University) and Kariuki Kirigia (McGill University)

Volume 7
Title: Contemporary Gender and Sexuality in Africa: African-Japanese Anthropological Approach
Editors: Wakana Shiino (Tokyo University of Foreign Studies) and Christine Mbabazi Mpyangu (Makerere University)

太田 至

[全体会議] 第18回全体会議「アフリカ潜在力プロジェクトの総括と今後の展望」(2021年1月30日)

Wrap-up Meeting: A Ten-Year Challenge of African Potentials Project(会議言語:英語)

日時:2021年1月30日(土)15:00~17:00
場所:オンライン開催

会議に先立ち、2020年12月29日にハルツームで急逝されたサムソン・ワサラ教授(ジュバ大学)のご冥福を祈り、全員で黙祷を捧げたあと、栗本英世(大阪大学)が弔辞を述べた。ワサラ教授は、2011年12月にナイロビで開催した第一回アフリカ・フォーラム以来、本プロジェクトの主要なメンバーとして多大な貢献をされた。

本会議は、以下のプログラムでおこなわれた。

Opening Remarks: Motoji Matsuda (Kyoto University, Japan)
Comments
1.Kennedy Mkutu (United States International University, Kenya)
2.Francis B. Nyamnjoh (University of Cape Town, South Africa)
3.Itaru Ohta (Kyoto University, Japan)
4.Edward Kirumira (Stellenbosch Institute for Advanced Study, South Africa)
5.Yaw Ofosu-Kusi (University of Energy and Natural Resources, Sunyani, Ghana)
6.Eisei Kurimoto (Osaka University, Japan)
7.Michael Neocosmos (Rhodes University, South Africa)
8.Motoji Matsuda (Kyoto University, Japan)
General Discussion (Chair: Itaru Ohta)
Closing Remarks (Misa Hirano-Nomoto)

最初にプロジェクト代表者の松田素二(京都大学)が、第1期(2011~2015年度)と第2期(2016~2020年度)の10年間にわたって、このプロジェクトがなにを目的としてどのような活動をおこなってきたのかをまとめた。本プロジェクトは、さまざまな困難を解決するためにアフリカの人々が活用する在来の考え方や技法に焦点をあてて、それらがポスト・コロニアルな状況とグローバル化の波のなかでどのように変容しているのか、また、わたしたちは人文社会科学を刷新するためにそこからなにを学び、どのような知の生産をおこなえるのかを検討してきた。

そのプロセスでわたしたちは、さまざまな取り組みをおこなってきたが、なかでも、毎年、アフリカの諸都市で開催してきた合計9回のアフリカ・フォーラムは、「アフリカ潜在力」という考え方を彫琢しつつ、アフリカと日本の研究者のあいだのネットワークを構築するために特に有効であった。また、松田は、アフリカ潜在力という考え方の特徴を、「Fluidity and Flexibility」「Incompleteness and Multiplicity」「Bricolage (Coviviality)」の三点にまとめて論じた。

本プロジェクトの成果の一部は、以下の7冊の英文論文集として出版する。そのうち、Vol. 1~5は2021年3月、Vol. 6~7は、2021年7月に出版予定である。

Volume 1
Title: African Politics of Survival: Extraversion and Informality in the Contemporary World
Editors: Mitsugi Endo (The University of Tokyo), Ato Kwamena Onoma (CODESRIA) and Michael Neocosmos (Rhodes University)

Volume 2
Title: Knowledge, Education and Social Structure in Africa
Editors: Shoko Yamada (Nagoya University), Akira Takada (Kyoto University) and Shose Kessi (University of Cape Town)

Volume 3
Title: People, Predicaments and Potentials in Africa
Editors: Takehiko Ochiai (Ryukoku University), Misa Hirano-Nomoto (Kyoto University) and Daniel E. Agbiboa (Harvard University)

Volume 4
Title: Development and Subsistence in Globalising Africa: Beyond the Dichotomy
Editors: Motoki Takahashi (Kyoto University), Shuichi Oyama (Kyoto University) and Herinjatovo Aimé Ramiarison (University of Antananarivo)

Volume 5
Title: Dynamism in African Languages and Literature: Towards Conceptualisation of African Potentials
Editors: Keiko Takemura (Osaka University) and Francis B. Nyamnjoh (University of Cape Town)

Volume 6
Title: ‘African Potentials’ for Wildlife Conservation and Natural Resource Management: Against the Images of ‘Deficiency’ and Tyranny of ‘Fortress’
Editors: Toshio Meguro (Hiroshima City University), Chihiro Ito (Fukuoka University) and Kariuki Kirigia (McGill University)

Volume 7
Title: Contemporary Gender and Sexuality in Africa: African-Japanese Anthropological Approach
Editors: Wakana Shiino (Tokyo University of Foreign Studies) and Christine Mbabazi Mpyangu (Makerere University)

松田の講演のあと、本プロジェクトの主要メンバー8人が、それぞれにこのプロジェクトの成果と残された問題点について論じた。そこで提出された今後の検討課題は、以下のとおりである。
(1)「アフリカ潜在力」をどのように定義し、また、どのように概念化するのかに関しては、まだ、誰もが同意する地点に到達していない。今後、実証的・経験的な研究と同時に、理論的・哲学的な研究をさらに進める必要がある。
(2)「アフリカ潜在力」は、アフリカで実際に生起しているさまざまな困難の克服のために、いったいどれだけ有効であるのかについて、マクロ、ミクロの両レベルから、もっと研究を深める必要がある。また、アフリカ潜在力を実現するためには、国家やアフリカ連合、地域共同体などの組織は、どのように動員できるのかも検討しなくてはならない。
(3)アフリカの政治、経済、社会や文化が現在、大きく急速に変容する状況のもとで、アフリカ潜在力は、どのように評価され、どう変化するのかに関して、さらなる研究が必要である。
(4)アフリカ潜在力という考え方は、アフリカ以外の地域ではどのように有効であるのかを、他地域の研究者との共同研究によって検討する必要がある。

太田 至

[全体会議] 第17回全体会議「環境・生態班からの報告」(2020年10月17日)

日時:2020年10月17日(土)15:00~17:00
場所:オンライン開催

はじめに、プロジェクト成果出版の進捗状況や今後の予定などについて、事務局から連絡があった。
引き続き、環境・生態班の研究発表がおこなわれた。司会を務める環境・生態班の班長目黒紀夫氏(広島市立大学)が趣旨説明をおこない、下記2名の発表者が研究発表をし、阿部利洋氏(大谷大学)と山越言氏(京都大学)がそれぞれコメントした。その後、総合討論があった。発表者、タイトル、発表内容は下記の通りである。

発表者1:市野進一郎(京都大学)
タイトル: 生物多様性保全のためのアフリカ潜在力:マダガスカル南部、川辺林におけるタマリンド、ヒト、キツネザルの関係

発表者は、マダガスカル南部の川辺林におけるタマリンド、地域住民、キツネザルの関係を事例に、生物多様性保全のためのアフリカ潜在力について考察した。マダガスカル南部の河川流域にはタマリンドが優占する川辺林が発達しているが、断片化が著しい。残された少数の森林は、地域住民(タンルイの人々)によって保護されてきた。タマリンドは、地域住民にとって経済的・文化的に重要な樹種で、特に救荒食物として重要視されている。また、タマリンドはワオキツネザルにとっても食物や休息場所として重要である。ワオキツネザルは、地域住民によって保護されてきたが、タマリンドの種子散布者として森林更新に貢献している。以上のように、3者の関係は相互に利益のある生態学的相互作用と地域住民にとっての文化的価値を含んだ関係である。そうした関係を包括的に理解することが重要であると論じた。

発表者2:藤岡悠一郎(九州大学)
タイトル:人為自然環境の潜在力:南アフリカ、ファラボルワ地域におけるマルーラの商品化の事例から

発表者は、南アフリカの非木材林産物の商品化を事例に、非木材林産物の活用と人為自然環境の機能をアフリカ潜在力の観点から考察した。ファラボルワ地域では、ウルシ科の落葉高木マルーラの木が地域全域に自然増加しており、伝統的に、その果実で醸造酒が作られてきた。1980年代以降、ある企業がマルーラの果実から蒸留酒を作ることに成功し、商品化をおこなってきた。企業は、その原料となるマルーラの果実を地域住民から買い取っているが、それが低所得者のエンパワーメントになっているという見方と、構造的な搾取という見方がある。またマルーラは薪炭材には適さないため、結果保護されており、サステイナブルな地域資源となっていることが論じられた。

平野(野元)美佐/市野進一郎

[全体会議] 第16回全体会議「ジェンダー・セクシュアリティ班ワークショップ」(2020年6月20日開催)

日時:2020年6月20日(土)15:10~17:00
場所:Zoomによるオンライン開催

はじめに事務局より、プロジェクト成果出版に向けての進捗状況や、今後の予定について連絡があった。引き続き、ジェンダー・セクシュアリティ班のワークショップがおこなわれた。司会を務めたジェンダー・セクシュアリティ班の班長である椎野若菜氏(東京外国語大学)による趣旨説明のあと、2名が研究発表をし、はじめの発表には橋本栄莉氏(立教大学)が、2つ目の発表には宮地歌織(佐賀大学)がコメントした。最終討論後、松田素二プロジェクト代表(京都大学)から総合コメントがなされた。発表者、タイトル、発表内容は下記の通りである。

発表者1:香室結美(熊本大学)
タイトル:ナミビア・ヘレロ人の衣服のふるまいにおける潜在力:植民地的遭遇とファッション性の洗練に関する事例から

発表者は、ナミビアのヘレロ人女性が、ヘレロを虐殺しようとまでしたドイツ人入植者のロングドレスを自分たちの衣装として取り入れ、今日までそのスタイルを洗練させてきた過程を分析した。彼女たちは日常生活において、「ドイツ人移住者のドレスをなぜ着るのか」を問うことはなく、「いかに着るのか」、つまり、ロングドレスの種類、入手法、布の選び方、作り方、着こなしといったヘレロ的美を追及してきた。ヘレロ女性になるためには、ロングドレスのさまざまな着こなしを身体化する必要があるのである。ヘレロ女性は、惰性的にドイツ人のドレスを選んで着続けてきたのではなく、「ヘレロのスタイル」として、柔軟な創造性を発揮しながら、時代に合わせて改変し続けてきたのである。

発表者2:宮脇幸生(大阪府立大学)
タイトル:女性性器切除をめぐる近年の研究動向-何が問題でどのように論じられているのか?

発表者は、女性性器切除(Female Genital Mutilation/Cutting: FGM)に関する近年の研究動向とその問題点を明らかにした。FGMは、健康問題、人権問題として論じられてきた。健康問題としてのFGMについては、医学的研究が不十分であること、FGMのタイプによっては健康に大きな影響がないことを示唆する。人権問題としてのFGMについては、これまで文化相対主義の立場などから批判があったが、近年では、FGMと地続きの関係にある男子割礼や女性性器美容整形については広く容認されているなど、WHOのダブルスタンダードが指摘される。また発表者は、WHOが多様なFGMすべてを単一カテゴリーに入れることに対し、研究者はこのカテゴリーを解体し、それぞれの地域的文脈に置き直し、FGM の医療化や代替的価値の提示も含めた方策を提案すべきであると論じた。

平野(野元)美佐

[班研究会] 対立・共生班第13回研究会(2020年12月20日開催)

オンラインセミナー「ギニアにおけるメンタルヘルス」

日時:2020年12月20日(日)18:00~19:30
場所:Zoomを利用したオンライン開催

テーマ:「ギニア共和国のメンタルヘルスを考える:現地における医療事情の報告と精神科医療支援活動」
講師:猪股晋作氏(医療法人韮崎東ヶ丘病院副院長、精神科医)

司会:落合雄彦(龍谷大学)

共催:龍谷大学社会科学研究所共同研究「『アフリカ潜在力』概念の批判的検証」、科研費基盤研究(S)「「アフリカ潜在力」と現代世界の困難の克服:人類の未来を展望する総合的地域研究」(対立・共生班)、科研費基盤研究(B)「シエラレオネにおける当事者・家族主体のメンタルヘルスケア導入アクションリサーチ」

今回の班研究会では、精神科医の猪股晋作氏が「ギニア共和国のメンタルヘルスを考える:現地における医療事情の報告と精神科医療支援活動」と題して発表を行った。同発表のなかで猪股氏は、ギニアにはコナクリの総合病院精神科病棟(10床)とクリニック、そして、地方のンゼレコレ精神病センター(10床)の3か所しか精神科医療施設がないという同国のフォーマルなメンタルヘルスケアの現状を述べた。その上で、ギニアにおける実際の症例について紹介した。その後、参加者間でフォーマルあるいはインフォーマルなギニアのメンタルヘルスとそのケアについて活発な議論が展開された。

[アフリカ潜在力セミナー] 第3回次世代調査支援報告会(2020年6月20日開催)

日時:2020年6月20日(土)13:00~15:00
場所:Zoomによるオンライン開催

プログラム
13:00-13:30
 
発表者:鄭傚民(京都大学アフリカ地域研究資料センター)
タイトル:ウガンダにおける東アジアドナーの職業訓練支援:韓国と日本の事例を中心に

13:30―14:00
発表者:藤井広重(宇都宮大学)
タイトル:アフリカと国際刑事裁判所の位相:分析枠組みの構築に向けて

14:00―14:30
 
発表者:山崎暢子(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科)
タイトル:国境地帯の農村の生計維持とローカル・マーケット―ウガンダ北部・西ナイルを事例に―

14:30―15:00
 
発表者:松原加奈(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科)
タイトル:エチオピアの革靴製造業の展開過程と労働者の技能形成:国際援助機関の関与の検討

4人の方の調査報告は下記からご覧いただけます。
https://www.africapotential.africa.kyoto-u.ac.jp/mms/field-report

[班研究会] 対立・共生班第12回研究会(2020年8月28日開催)

連続Web Seminar「アフリカにおける伝統医療と新型コロナウイルス」

日時:2020年8月28日(金)17:00~18:15
場所:zoomを利用したオンライン開催

テーマ:「アフリカにおける伝統医療と新型コロナウイルス:カメルーンの事例」(Traditional medicine and the COVID-19 pandemic in Africa: the case of Cameroon)
講師:フォンゾッシ・フェドゥング・エヴァリスト(ドゥアラ大学上級講師、カメルーン在住)(Dr Fongnzossie Fedoung Evariste, University of Douala, Cameroon)
司会:落合雄彦(龍谷大学)

言語:英語(通訳なし)

共催:千葉大学グローバル関係融合研究センター、龍谷大学社会科学研究所共同研究「「アフリカ潜在力」概念の批判的検証」、科研費基盤研究(S)「「アフリカ潜在力」と現代世界の困難の克服:人類の未来を展望する総合的地域研究」(対立・共生班)

趣旨:2019年末に中国・武漢で始まったとされる新型コロナウイルスの感染拡大は、瞬く間に近隣のアジア、中東、欧米、そして南米諸国などに飛び火した。アフリカでも当初、南アフリカにおける感染拡大が国際社会の注目を集めた。これに対して、他のサハラ以南アフリカ諸国における新型コロナウイルスの関連情報は実に乏しく、その感染状況の実態は必ずしも十分には知られていない。本ウェッブ・セミナーでは、カメルーン在住の研究者とオンラインで結び、現地の新型コロナウイルスの感染状況や対応について議論する。その際、カメルーンの人びとが新型コロナウイルスに対応するためにどのような伝統医療的実践を展開しているのかを特に検討する。

[全体会議/公開講演会] 第15回全体会議/第4回公開講演会「アフリカと日本の協力関係:両方の潜在力をどう生かすか」(2020年1月26日)

日時:2020年1月26日(日)15:00~17:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室

・司会 松田素二(京都大学 教授)「アフリカ潜在力」プロジェクト代表)
・講演 ウスビ・サコ(京都精華大学 学長)
・コメンテーター 和崎 春日(中部大学 教授)

はじめに、司会である松田素二(「アフリカ潜在力」プロジェクト代表)より、本プロジェクトの概要と本講演会の趣旨について説明があった。

続いて、日本の大学において初のアフリカ系学長となったウスビ・サコが、「アフリカと日本の協力関係―両方の潜在力をどう生かすか」というタイトルで講演を行った。アフリカは、その人口が2050年には世界の約4分の1を占めると予想され、また「最後のフロンティア」として経済的にも注目されており、日本におけるアフリカへの関心も高まっている。一方、日本がアフリカ社会の現在について深く理解しているとはいえない。講演者は、出身国であるマリ共和国の事例などを用いて、アフリカと日本の関係を深めるためのさまざまなアイデアや実施中のプロジェクトを披露した。また、現代アフリカに見いだされる、鉱物資源以外のさまざまな潜在力について、建築、若者、教育等の切り口で論じた。最後に講演者は、今後のアフリカと日本の協力関係がより深まり、相互の潜在力が活性化するという未来の展望を語った。

続いて、コメンテーターの和崎春日が、「『在日・在中アフリカ人から見たアフリカ―アジアの関係』の視点から」と題し、日本、ベトナム、韓国、中国など、アジア各地に暮らすアフリカ人のダイナミズムやアジアとの関わりについて、多くの写真を交え、示唆に富む報告を行った。

最後にフロアからの質問に両者が答え、本講演会は終了した。今回の全体会議は一般市民に開かれた公開講演会として開催され、100人を超える参加者を迎え、大変盛況であった。

平野(野元)美佐


[全体会議] 第14回全体会議「ルサカ・フォーラムにむけて」(2019年11月2日開催)

日時:2019年11月2日(土)15:00~17:15
場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室

はじめに、事務局から以下5点に関する連絡がおこなわれた。

1)次世代調査支援
2)アクラ・フォーラム成果出版
3)ASMサプリ『Agricultural Practices, Development and Social Dynamics in Niger』と、サム・モヨ氏追悼本『Land, the State and the Unfinished Decolonisation Project in Africa』の出版
4)プロジェクト成果出版
5)中間評価
6)ルサカ・フォーラムなど今後の予定

引き続き、「ルサカ・フォーラムにむけて」がおこなわれた。プロジェクトリーダーの松田素二(京都大学)より12月6日~8日におこなわれるルサカ・フォーラムの趣旨説明が行われ、フォーラムで発表予定の4名の発表があった。司会は大山修一(京都大学)が務めた。発表者、タイトル、発表内容は下記のとおりである。

発表者1:中和渚(関東学院大学)Nagisa Nakawa (Kanto Gakuin University)
タイトル:Guided Participation as a Means of Classroom Interaction in Zambia: Observing Children’s Play

ザンビアでは、幼児教育に比べると、初等教育の現場において、子どもの積極性があまりみられない。では子供たちは、学校外でどのような遊びをしているのか。発表者は、子どもたちの学校外での遊びや学びを分析し、その相互行為を観察した。子どもたちの遊びは、英語、現地語(トンガ語)、その他民族語などマルチリンガルで、ときに「造語」がつくられていた。手遊び、石遊び、土に穴を掘っての遊びなど、遊びに共通性がみられた。また、さまざまな年齢の子ども(ときに大人)が一緒に遊び、そのなかで手助け、協力、分担などの行為がみられた。最後に、このような学校外での遊びにみられる創造性や積極性を、学校教育においてどのように活かせるのかが論じられた。

発表者2:松平勇二(兵庫県立大学)Yuji Matsuhira (University of Hyogo)
タイトル:日本人によるジンバブエ音楽実践の宗教的側面
(Potentials of African Music: A Case of Zimbabwean Music in Japan)

発表者は、ジンバブエの楽器であるンビラ(親指ピアノ)が、日本人の宗教観に与える影響について論じた。日本においてンビラは、個人の楽しみや余興、音楽ビジネス界での演奏など娯楽要素が強い。一方、ジンバブエでは、ンビラは娯楽のみならず、祖先(ムズィム)祭祀における憑依儀礼に欠かせない楽器であるなど、宗教的側面をもっている。日本にンビラが導入されて30年以上がたった現在、ンビラによって、コンサートでトランス状態になる客があらわれたり、宗教的体験に誘われる演奏家がいたりするなど、日本の土着信仰とのシンクレティズムが起こっているという。このように発表者は、ジンバブエ(のショナ社会)の宗教思想やそれを体現するンビラの音楽が、日本人の宗教観を変える可能性を論じた。

発表者3:杉山祐子(弘前大学)Yuko Sugiyama (Hirosaki University)
タイトル:社会包摂的プロセスとしてのイノベーション:ザンビア北部州ベンバの事例から
(英語タイトル “We Have Already Tried It, Only Politicians Just Don’t Know It”: Making Innovation Socially Inclusive Among the Bemba of Northern Zambia)

発表者は、ザンビア北部州ベンバのイノベーションの特徴についてFolk/local Innovation Historyの視座から分析をおこなった。ベンバ社会では、長期的に安定した食料確保を重視する生計戦略がとられる。そこには「持つ者が持たざる者に分け与える」原則があり、それが広範囲の相互扶助ネットワークを生み出していた。また、この生計戦略が「食の選択肢を増やす」選好性につながり、農耕システムが歴史とともに変化する中で栽培植物の種類が増えてきた。生計活動の中で村人の誰もが小規模な試行を実践しており、これが安定を確保しつつ多様な革新の可能性を広げていた。さらに、現金経済の浸透によって「雇用労働」の在地化や「酒の販売」の在地化が起きた。そこでは、新しい技術が広がる過程で生産資源へのアクセスが開かれ、持たざる者も含めた全体への普及につながっていた。

発表者4:佐藤哲(愛媛大学/総合地球環境学研究所)Tetsu Sato (Ehime University & Research Institute for Humanity and Nature)
タイトル:Potentials of Sustainability Transformations Emerging from Community-based Innovative Practices: Case Studies in Lake Malawi Riparian Villages

発表者は、フューチャー・アースのプロジェクト「貧困条件下の自然資源管理のための社会的弱者との協同によるトランスディシプリナリー研究」の紹介を通して、社会的弱者である普通の村人を研究パートナーとしておこなうトランスディシプリナリー研究が有用であることを示した。まず、研究するべき課題を村人といっしょに決め、そのプロセスを共有した。そして、村人との対話と慎重な検討によって、彼らが抱える制約について明らかにした。また、村人によるインターナショナルフォーラムを開催することで、新しいトランスディシプリナリーな方法論を発見した。最後に、今後の課題として、因果関係の連鎖をネットワーク分析することで、課題解決に向けて大きな変化を引き起こせるレバレッジ・ポイントの同定を目指していることが紹介された。

平野(野元)美佐/市野進一郎

[アフリカフォーラム] 9th African Forum: Lusaka ザンビア (2019年11月29日〜12月1日)

9th African Forum: Lusaka Mobility as African Potentials
日時:2019年11月29日〜12月1日
場所:Cresta Golfview Hotel, Lusaka, Zambia

フォーラム報告

2019年11月29日から12月1日まで、ザンビア共和国の首都ルサカで第9回の「アフリカ潜在力フォーラム」が開催されました。日本とザンビアを中心とする南部アフリカ諸国からの報告者、そしてザンビア大学の学生やザンビア在住の日本の研究者、実務家など30名余りが参加して、移動(性)を切り口にしてアフリカ潜在力の可能性を拡張するために、様々な角度から多様なディシプリンを用いて調査の報告がなされ、活発で濃密な議論を行うことができました。

フォーラムでは、まずプロジェクトを代表して松田代表から9年間にわたって本プロジェクトが切り開いてきた成果について、各地で開催されたアフリカフォーラムの到達点と課題、理論的概念的な困難と達成点、実証的な知見の蓄積に分けて説明し、同時に、このプロジェクトが新しいタイプの日本とアフリカの学術交流・協働のモデルとなりつつあることが提示された。続いてザンビア側を代表してザンビア大学のGodfrey Hampwaye教授から、本プロジェクトへのアフリカ側としての期待を中心に歓迎の辞が述べられた。同教授は、2019年に半年間、東京外国語大学の現代アフリカ地域研究センターの客員教授として来日しており、京都大学にもセミナ報告のため訪問し、本プロジェクトのメンバーともプロジェクトについて議論し、成果を共有していたので、極めてポイントを得た注文や期待が指摘された。

今回のルサカフォーラムの基調講演者は、ザンビア北部の銅山地帯にキャンパスを持つ歴史のある国立大学the Cppperbelt Universityのハマーショルド平和・紛争研究所の前所長、Owen Sichone教授である。Sichone教授は、政治学、政治社会学を専門にしながら南部アフリカ社会の現状をコロニアリティ、ポストコロニアリティの視点から鋭く分析する研究者として尊敬されているが、今回はプロジェクト事務局との事前の相談会(2019年8月)において、移動(性)をキーワードとして社会の流動化と再編成を読み取ることが合意されたので、その線にそって、地理的移動のみならず多様な移動のあり方をポストコローニアル・アフリカのコンテキストで見事に切り取って見せた。第二期のプロジェクトでは、2016年のカンパラでは土着性、2017年のグラハムズタウンでは普遍性(複数形)、2018年のアクラでは未来性とインフォーマリティを、アフリカ潜在力を理論化するための補助線として設定してきたが、今回の移動(性)によって、アフリカ潜在力の複雑な全体像が浮かび上がらせることができた。これは、第1期において、アフリカ潜在力の特性をやや形式的に規定してきた試みからさらに一歩進んだものとなった。

Sichone教授の圧倒的な基調講演のあと、口頭報告14本(アフリカ側8本と日本側6本)が、Education & Knowledge Production, Rural Transformation & Development, Wisdom from Below, Gap & Integration, Culture & Humanityという五つのセッションとしてなされ、全員で集中的な討議を実施した。参加者は、日本、ザンビアだけでなく、ジンバブエやマラウィからも参加し、その専門領域も政治学、法学、人類学、環境学、地理学、社会学など多様な研究者が協働してアフリカ潜在力の議論を作り出していった。特に今回のフォーラムでは、フェミニズム法学の立場から学術のみならず社会実践も行なっている女性研究者からアフリカの慣習法の「生きられた法」としての柔軟性・強靭性が提起されたことは、アフリカ潜在力の議論に新たな可能性を切り開くことができた。

五つそれぞれのセッションには、日本側とアフリカ側からコメント役が用意され、これまでのフォーラムとの連続性の観点から創造的な位置づけや提言を行なった。その中心になったのが2011年に始まった第1期のプロジェクトから、継続してアフリカフォーラムに参加しているアフリカ側コアメンバーと、日本側の研究分担者であった。コアメンバーはアフリカフォーラムの回を重ねるたびに強化され、現在は、ケニア、南ア、南スーダン、エチオピア、カメルーン、ガーナ出身の第一線の研究者が揃っている。

最後の総合討論では第一回のナイロビフォーラムから全てのフォーラムに参加してきた日本側の栗本英世教授と太田至教授を始め、アフリカ側コアメンバーが獲得地平を総括した上で、全員で自由な議論を展開していった。

これらの成果の一部は、最終年度にLANGAA社から刊行予定の「シリーズAfrican Potentials」の中に収められる予定です。

(プロジェクト・リーダー松田素二)

PROGRAM

Program Timetable

November 29, Friday
18:00 – 18:30 Registration
18:30 – 20:30 Reception
November 30, Saturday
8:40 – 9:00 Opening Remarks
Motoji Matsuda (Project leader, Kyoto University)
9:00 – 9:20 Greeting Address
Godfrey Hampwaye (University of Zambia)
9:20 – 10:40 Keynote Address (Chair: Itaru Ohta)
Owen Sichone (Copperbelt University)
Mobility as Freedom, and Strangers as Potential Kin: Reflections on the African Potential for Managing Social Conflict
10:40 – 12:40 Session 1: Education and Knowledge Production (Chair: Itaru Ohta)
Commentators: Edward Kirumira & Yaw Ofosu-Kusi
1-1. John Mweshi (University of Zambia)
A Critique of the Dilemmas of Education in Africa from the Perspective of “African Potentials.”
1-2. Godfrey Hampwaye & Gilbert Siame (University of Zambia)
Championing Innovations in Urban Planning Discourses in Africa: Insights from the Master of Science in Spatial Planning Programme at the University of Zambia
1-3. Nagisa Nakawa (Kanto Gakuin University)
Guided Participation as a Means of Classroom Interaction in Zambia: Observing Children’s Play
12:40 – 13:40 Lunch Break
 
13:40 – 15:40 Session 2: Rural Transformation and Development (Chair: Yaw Ofosu-Kusi)
Commentators: Michael Neocosmos & Eisei Kurimoto
2-1. Tetsu Sato (Ehime University)
Potentials of Sustainability Transformations Emerging from Community-Based Innovative Practices: Case Studies in Lake Malawi Riparian Villages
2-2. Rangarirai G. Muchetu (Sam Moyo African Institute for Agrarian Studies)
Land Reform and Then What? Post-Reform Community Development Strategies in Sub-Saharan Africa; Lessons from Zimbabwe
2-3. Yumi Sakata (Embassy of Japan in Zimbabwe)
African Potentials in Peasant Tobacco Farmers: A Case Study from the State-Led Capitalism and the Expansion of Tobacco Contract Farming in Zimbabwe
15:40 – 15:50 Coffee Break
 
15:50 – 17:50 Session 3: Wisdom from Below (Chair: Motoji Matsuda)
Commentators: Francis B. Nyamnjoh & Toshio Meguro
3-1. Bosco Rusuwa (University of Malawi)
Africa’s Potential: Historical Perspectives, Local Initiatives and the Wider Macro-Economic Environment as Drivers of Progress
3-2. Yuko Sugiyama (Hirosaki University)
“We Have Already Tried It, Only Politicians Just Don’t Know It”: Making Innovation Socially Inclusive among the Bemba of Northern Zambia
3-3. Shuichi Oyama (Kyoto University)
Willingness to Make a Profit While Being Fearful of Jealousy: The Role of “Piecework” in Bemba Society in Northern Zambia
December 1, Sunday
9:30 – 11:30 Session 4: Gap and Integration (Chair: Eisei Kurimoto)
Commentators: Michael Neocosmos & Francis Nyamnjoh
4-1. Chuma Himonga & Tinenenji Banda (University of Zambia)
The Regulatory Potential of Living Customary Law in Southern African Contexts
4-2. Chidongo Phiri (University of Zambia)
The African Potential on Reduction of Corruption “Nichekeleko” and “Ndishamo” in the Transport Sector in Zambia
4-3. Horman Chitonge (University of Cape Town)
The African Union Protocol on the Free Movement of Persons in Africa: Implications for Labour Mobility and the Skills Gap
11:30 – 13:00 Lunch Break
 
13:00 – 15:00 Session 5: Culture and Humanity (Chair: Itaru Ohta)
Commentators: Edward K. Kirumira & Motoji Matsuda
5-1. Yuji Matsuhira (University of Hyogo)
Potentials of African Music: A Case of Zimbabwean Music in Japan
5-2. Francis Nyamnjoh (University of Cape Town)
Ubuntuism and Africa
15:00 – 15:45 Coffee Break
 
15:45 – 16:45 General Discussion
Convener: Eisei Kurimoto (Osaka University)
Convivial Dinner