日時:2020年6月20日(土)15:10~17:00
場所:Zoomによるオンライン開催
はじめに事務局より、プロジェクト成果出版に向けての進捗状況や、今後の予定について連絡があった。引き続き、ジェンダー・セクシュアリティ班のワークショップがおこなわれた。司会を務めたジェンダー・セクシュアリティ班の班長である椎野若菜氏(東京外国語大学)による趣旨説明のあと、2名が研究発表をし、はじめの発表には橋本栄莉氏(立教大学)が、2つ目の発表には宮地歌織(佐賀大学)がコメントした。最終討論後、松田素二プロジェクト代表(京都大学)から総合コメントがなされた。発表者、タイトル、発表内容は下記の通りである。
発表者1:香室結美(熊本大学)
タイトル:ナミビア・ヘレロ人の衣服のふるまいにおける潜在力:植民地的遭遇とファッション性の洗練に関する事例から
発表者は、ナミビアのヘレロ人女性が、ヘレロを虐殺しようとまでしたドイツ人入植者のロングドレスを自分たちの衣装として取り入れ、今日までそのスタイルを洗練させてきた過程を分析した。彼女たちは日常生活において、「ドイツ人移住者のドレスをなぜ着るのか」を問うことはなく、「いかに着るのか」、つまり、ロングドレスの種類、入手法、布の選び方、作り方、着こなしといったヘレロ的美を追及してきた。ヘレロ女性になるためには、ロングドレスのさまざまな着こなしを身体化する必要があるのである。ヘレロ女性は、惰性的にドイツ人のドレスを選んで着続けてきたのではなく、「ヘレロのスタイル」として、柔軟な創造性を発揮しながら、時代に合わせて改変し続けてきたのである。
発表者2:宮脇幸生(大阪府立大学)
タイトル:女性性器切除をめぐる近年の研究動向-何が問題でどのように論じられているのか?
発表者は、女性性器切除(Female Genital Mutilation/Cutting: FGM)に関する近年の研究動向とその問題点を明らかにした。FGMは、健康問題、人権問題として論じられてきた。健康問題としてのFGMについては、医学的研究が不十分であること、FGMのタイプによっては健康に大きな影響がないことを示唆する。人権問題としてのFGMについては、これまで文化相対主義の立場などから批判があったが、近年では、FGMと地続きの関係にある男子割礼や女性性器美容整形については広く容認されているなど、WHOのダブルスタンダードが指摘される。また発表者は、WHOが多様なFGMすべてを単一カテゴリーに入れることに対し、研究者はこのカテゴリーを解体し、それぞれの地域的文脈に置き直し、FGM の医療化や代替的価値の提示も含めた方策を提案すべきであると論じた。
平野(野元)美佐