[北東アフリカ・クラスター第5回研究会]眞城百華「エチオピア・エリトリア関係の現状と史的検討」(2014年01月25日開催)
日時:2014年1月25日(土)10:00~12:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階318号室
プログラム
「エチオピア・エリトリア関係の現状と史的検討」
眞城百華(津田塾大学)
報告
1993年に独立を果たしたエリトリアだが、独立後の国家運営ならびに対外関係が北東アフリカにおいても注視されている。本報告では、まず独立後20年が経過したエリトリアの内政、外交関係について取り上げた。独立後、国政選挙は実施されていない。内政において特徴的なナショナル・サービス、国内外における移動の規制、経済政策について説明がなされた。また世界中に約100万人いるといわれるエリトリア・ディアスポラによるディアスポラ税や送金が同国経済に及ぼす影響も2009年以降実施されている国連制裁との関係で述べられた。ソマリアのアッシャバーブへの軍事支援と関連して行われている制裁が同国の政治、経済に与える影響についてもふれられた。国連制裁、国政選挙の実施、世代交代、硬直した政治体制の変革など現政権が抱える課題は多い。
エリトリアの現政権による政策を特徴づけるのは「孤立主義」である。一見不可解に映るこの孤立主義は、1961~1991年のエチオピアからの解放闘争期、とくに1970年代以降に外国援助を受けることができず孤独な戦いを強いられた歴史を振り返ると、理解できる部分もある。将来を考えるうえで重要なのは隣国エチオピアとの関係であるが、エチオピア政府は2005年ごろからエリトリア難民の受入に積極的になっており、エリトリアの反政府勢力もエチオピアを拠点にした活動の可能性について議論していることから、関係改善は容易ではない。隣国エチオピアとの関係のみならず北東アフリカ政治の文脈でエリトリアを捉えなおす必要も指摘された。1940年代以降のエチオピア・エリトリア関係史から現在の両国関係を再考すると、エチオピアとアメリカの蜜月がエリトリア、エチオピア、ソマリア関係にも影響する構図が現在の対テロ戦争の文脈でも再現されているといえるだろう。
討論の時間には、エリトリアの憲法草案はリベラルで先進的なものだったとされるが憲法はすでに施行されているのか、PFDJの民族構成はどのようなものか、政権はいかなる意図のもとにソマリア内戦への関与をおこなったのか、ディアスポラは現政権をどう評価しているのか、といった問いが出された。また、現在のエリトリアのあり方はエチオピアとの歴史的な関係によって多くを規定されており、エリトリアの変化はエチオピアの変化とともに起きるのではないか、といった指摘がなされた。
(眞城百華、佐川徹)
[第14回全体会議]「アフリカにおける法の補助線:法学・人類学の視点から」(2014年1月25日開催)
日時:2014年1月25日(土)13:00~16:30
場所:京都大学稲盛記念館、3階、中会議室
プログラム
13:00~13:30 事務連絡
研究会「アフリカにおける法の補助線:法学・人類学の視点から」
13:30~14:05 石田慎一郎(首都大学東京)
「趣旨説明:アフリカ法の諸問題」
14:05~14:40 雨宮洋美(富山大学)
「アフリカの土地所有権:タンザニアを事例として」
14:40~15:15 久保山力也(名古屋大学)
「Prostitutionにおける多元的正義と紛争管理の構造研究」
15:15~15:50 小宮理奈(元ユニセフ、ウガンダ事務所)
「援助の潮流:国際機関による ローカルな組織へのエンパワメントと紛争解決」
15:50~16:30 総合討論
報告
石田慎一郎(首都大学東京)
「趣旨説明:アフリカ法の諸問題」
社会を経験的かつ一般的に記述するという点において、裁判の判決文と民族誌は類似しており、相互互換性をもっている。修復的な司法や真実委員会といったオルタナティブ・ジャスティスは、すこぶる地域指向的であり、制度だけではなく、社会のあり方をどう想定するのかが重要である。固有法(indigenous law)は、地域固有の法のあり方であり、その固有法が国家の枠組みに取り込まれることによって慣習法(customary law)となる。柔軟で常に動態的な<生ける法>としてのアフリカ法を固定してしまうことをゾンビ法化と称したい。アフリカ慣習法の柔軟性は社会内部の多様性と歴史性への視点を確保するためのものであり、規範性を退け、裁判官による恣意的な運用を認めるものではけっしてない。アフリカ慣習法における新しい規範形成が今後の大きな課題となる。
雨宮洋美(富山大学)
「アフリカの土地所有権―タンザニアを事例として」
アフリカの土地問題は、土地所有権の導入過程で起こる慣習を含む固有法と、いわゆる近代法との軋轢の問題である。世界銀行は「2003年土地政策」を打ち出すことによって、アフリカ諸国の市場経済化を進め、集団的または共同体的などと称される権利を個人的な権利への転換が推進された。2006年ころより、世界銀行による土地権利に対する調査、それにもとづいて、土地政策は変化している。法制度の問題が貧困問題の根幹だという前提にたち、貧困層の法的エンパワーメントの枠組みにのっとり 司法と法の支配へのアクセス、とくインフォーマルな慣習手続きにもとづくフォーマルな司法・土地行政システムを作ること、集団的権利(group right)を確保するために創造力に富んだ法的思考が必要とされる。タンザニアの土地法の特徴として、(1)「慣習的使用権」の規定、(2)入会地の明文化、(3)村土地法の構造、(4)土地の貧困対策機能、(5)慣習的な紛争処理機能の明文化の5点について検討した。アフリカにおける法整備においては、急激な変化を避けるため、個人の土地所有権から多様性を認めることの必要性、個人を基本とする土地所有権の段階的な導入が必要であると論じた。
久保山力也(名古屋大学)
「Prostitutionにおける多元的正義と紛争管理の構造研究」
久保山氏は、ケニアで「性的交渉による稼ぎによって、生計の全てもしくはその一部をたてている女性」の性を活かした生活の実体を包括的に明らかにするとともに、彼女たちが生活の過程でいかに紛争管理をおこなっているのかに着目した分析をおこなった。データはケニアの主要な都市で101人の女性に対しておこなった質問調査から得たものである。女性の多くは客とのあいだに不払いや暴行などのもめごとを経験している。くわえて8割の女性が警察に逮捕された経験がある。これに対して彼女たちは、インフォーマルな「生ける法」を用いて紛争の管理や解決を試みているし、警察に対しては賄賂の支払いをとおして争いを回避しようとしている。
小宮理奈(元ユニセフ、ウガンダ事務所)
「援助の潮流:国際機関によるローカルな組織へのエンパワメントと紛争解決」
まず小宮氏は、トップダウン型援助の見直しがはかられる過程で、ADRや修復的司法が注目され、援助パートナーとして宗教団体などのFaith Based Organization (FBO)が浮上してきた経緯を示した。調査対象であるウガンダでは、司法・警察がキャパシティ不足に陥っているため、人びとは代替的司法に紛争の解決をつよく依存している。代替的司法には地域限定のものにくわえて、全国の地方自治体に立法・司法機能を備えたLocal Council Court (LCCs)が存在する。人びとにとってLCCsはもっとも身近な司法であり、「フォーマルな」訴訟に比べて金銭的負担は少なく、その和解的アプローチはコミュニティに好ましい解決策を提供することがある。一方でLCCsには、構成員の知識不足による権限逸脱、汚職、女性の軽視、フォーマルな機関との連携不足などの問題点もある。最後に小宮氏は、フォーマルな機関が機能する以前に代替的司法をエンパワーすることは妥当か、代替的司法がフォーマルな機関のキャパシティ不足の隠ぺいに使われていないか、といった論点を提示した。
(大山修一、佐川徹)
[第17回公開ワークショップ/南部アフリカ・クラスター第6回研究会]リチャード・ズール「たばこと健康:ザンビアにおける喫煙行動のコントロールに関する研究」(第20回 Kyoto University African Studies Seminarとの共催、2014年1月10日開催)
日 時:2014年1月10日(金) 15:00~17:00
場 所:京都大学稲盛財団記念館3階318号室
プログラム
「たばこと健康:ザンビアにおける喫煙行動のコントロールに関する研究」
リチャード・ズール(ザンビア大学、ASAFAS客員准教授)
※講演は英語で行われます。日本語通訳はございません。日本語資料は発表要旨のみとなります。
要 旨
たばこの喫煙は、世界各地で健康問題を引き起こしているが、予防できるものである。 2002 年、2007 年、2011 年に実施された青少年の喫煙に関する国際調査によると、7~9 年生 で喫煙経験のない生徒のうち 22.6%が翌年に喫煙しており、今までに紙巻きたばこを吸っ たことのある生徒は 19.1%であった。22%の生徒は、両親あるいは父親か、母親のいずれか が喫煙していると回答をした。喫煙する生徒のなかには、朝にまず、たばこを吸いたくなる という、ニコチン中毒の症状を示す者も含まれている。たばこ会社の無償提供によって紙巻 きたばこをもらった生徒もいる。ザンビアは 2008 年 5 月 28 日に、WHO(世界保健機関) のたばこ規制枠組み条約(FCTS)に批准し、たばこによる健康被害の防止に努めている。FCTS に沿った包括的なたばこの喫煙を制限する法律が必要である。本発表のなかでは、若年層に よるたばこの喫煙行動の規制の必要性を示していきたい。
Tobacco is a major public health concern worldwide and a major leading cause of preventable deaths. Methods used are review of survey results from the 2002, 2007 and 2011 Global Youth Tobacco Survey (GYTS) and a desk review. The GYTS included school grades 7, 8 and 9. The never smokers likely to initiate smoking in the next year were 22.6%. About 19.1% of the students had ever smoked cigarettes. About 22% of students reported that one or more of their parents smoke. Among some of the students who were current smokers some reported wanting a cigarette first thing in the morning, an indicator of nicotine addiction. Some students reported being offered free cigarettes by a tobacco company representative. Zambia has made tobacco use prevention a primary health issue as evidenced by the ratification of the World Health Organization (WHO) Framework Convention on Tobacco Control (FCTC) on 28th May 2008. There is need to have a comprehensive tobacco control law which is FCTC compliant. Findings presented in this paper show that there is need for interventions towards tobacco control amongst young people who represent the ages of tobacco use initiation.
[南部アフリカ・クラスター第6回研究会/第17回公開ワークショップ]リチャード・ズール「たばこと健康:ザンビアにおける喫煙行動のコントロールに関する研究」(第20回 Kyoto University African Studies Seminarとの共催、2014年1月10日開催)
日 時:2014年1月10日(金) 15:00~17:00
場 所:京都大学稲盛財団記念館3階318号室
プログラム
「たばこと健康:ザンビアにおける喫煙行動のコントロールに関する研究」
リチャード・ズール(ザンビア大学、ASAFAS客員准教授)
※講演は英語で行われます。日本語通訳はございません。日本語資料は発表要旨のみとなります。
要 旨
たばこの喫煙は、世界各地で健康問題を引き起こしているが、予防できるものである。 2002 年、2007 年、2011 年に実施された青少年の喫煙に関する国際調査によると、7~9 年生 で喫煙経験のない生徒のうち 22.6%が翌年に喫煙しており、今までに紙巻きたばこを吸っ たことのある生徒は 19.1%であった。22%の生徒は、両親あるいは父親か、母親のいずれか が喫煙していると回答をした。喫煙する生徒のなかには、朝にまず、たばこを吸いたくなる という、ニコチン中毒の症状を示す者も含まれている。たばこ会社の無償提供によって紙巻 きたばこをもらった生徒もいる。ザンビアは 2008 年 5 月 28 日に、WHO(世界保健機関) のたばこ規制枠組み条約(FCTS)に批准し、たばこによる健康被害の防止に努めている。FCTS に沿った包括的なたばこの喫煙を制限する法律が必要である。本発表のなかでは、若年層に よるたばこの喫煙行動の規制の必要性を示していきたい。
Tobacco is a major public health concern worldwide and a major leading cause of preventable deaths. Methods used are review of survey results from the 2002, 2007 and 2011 Global Youth Tobacco Survey (GYTS) and a desk review. The GYTS included school grades 7, 8 and 9. The never smokers likely to initiate smoking in the next year were 22.6%. About 19.1% of the students had ever smoked cigarettes. About 22% of students reported that one or more of their parents smoke. Among some of the students who were current smokers some reported wanting a cigarette first thing in the morning, an indicator of nicotine addiction. Some students reported being offered free cigarettes by a tobacco company representative. Zambia has made tobacco use prevention a primary health issue as evidenced by the ratification of the World Health Organization (WHO) Framework Convention on Tobacco Control (FCTC) on 28th May 2008. There is need to have a comprehensive tobacco control law which is FCTC compliant. Findings presented in this paper show that there is need for interventions towards tobacco control amongst young people who represent the ages of tobacco use initiation.
[第16回公開ワークショップ]「現代アフリカ地域研究の多様性とその展望」(第200回アフリカ地域研究会との共催、2013年12月19日開催)
日時:2013年12月19日 (木) 15:00~17:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
プログラム
演題1:「言葉から心へ」
講 師:梶 茂樹
(京都大学アフリカ地域研究資料センター・教授)
演題2:「アフリカの自然から見つけたおもしろさと驚き」
講 師:水野一晴
(京都大学アフリカ地域研究資料センター・准教授)
演題3:「アフリカにおける紛争解決と 共生の実現にむけて」
講 師:太田 至
(京都大学アフリカ地域研究資料センター・教授)
演題4:「北部タンザニア、都市近郊農村の20年」
講 師:池野 旬
(京都大学アフリカ地域研究資料センター・教授)
ディスカッサント:市川光雄
(京都大学・名誉教授、日本モンキーセンター・所長)
要 旨
現代アフリカを理解するためのアプローチは多様であり、地域研究はその多様性 を含んで発展してきた。1986年から開始されたアフリカ地域研究会200回を記念し、4人の 研究者がそれぞれの立場から自身のアフリカ地域研究をふり返り、ディスカッサントを交 え、今後のアフリカ地域研究を展望する。
[第3回アフリカの紛争と共生 国際フォーラム(ジュバ)](2013年12月06‐08日開催)
日 時:2013年12月6~8日
場 所:ジュバ、Juba Grand Hotel
概要
第3回アフリカの紛争と共生 国際フォーラムは、2013年12月6日から南スーダン共和国の首都ジュバで、京都大学アフリカ地域研究資料センターとジュバ大学平和開発研究センター(Centre for Peace and Development Studies)の共催で開催された。会場はジュバグランドホテルであった。
第3回国際フォーラムのタイトルは「平和構築と『アフリカの潜在力』:南スーダンと周辺地域における上からと下からのアプローチの調和」(”Peacebuilding and ‘African Potentials’: Harmonizing Approaches from Above and Below in South Sudan and Beyond”)であった。第1回と第2回の国際フォーラムは、それぞれ東アフリカと南部アフリカという、複数の国からなるアフリカ大陸のひとつの地域を対象とし、紛争解決と共生、さらには「アフリカの潜在力」をめぐる問題系の地域的特性を議論した。それに対して今回の国際フォーラムは、南スーダンというひとつの国に焦点をあてたものであった。
とくに南スーダンをフォーラムの対象に選らんだことには三つの理由がある。第一に、2005年まで22年間にわたる内戦を経験し、内戦が終結した2005年以降、そして住民投票をへて2011年7月に南部スーダンが南スーダン共和国として独立した以降も、さまざまな武力紛争が継続しており、アフリカの紛争を考えるうえでは格好の対象と考えられることがある。第二に、武力紛争が継続する一方で、内戦中から多数の和解と平和構築の試みが行われてきたことが挙げられる。南スーダン人自身のイニシアティヴに基づき、主としてキリスト教会系の市民組織が支援・仲介したこうした試みは「人びと同士の平和」(People-to-People Peace)や「草の根平和構築」(Grassroots Peacebuilding)と呼ばれている。本フォーラムでは、こうした試みを「下からの平和」(Peace from Below)と呼ぶ。第三に、内戦が終結した2005年以降、国連、国際社会、そして南部スーダン政府/南スーダン共和国政府によって、戦後復興と開発の枠組みにのなかで、平和の定着を目指した、本フォーラムで「上からの平和」と呼ぶ、さまざまなプロジェクトが開始されたことがある。つまり、南スーダンは、平和構築の巨大な実験場なのであり、その実験には上から下まで、外部と内部、さまざまな主体がかかわっている。その意味で、たんに紛争だけでなく、共存や和解のあり方、さらには「アフリカの潜在力」を考えるうえでも、南スーダンはきわめて重要な位置を占めているといえる。
私たちの基本的な認識は、現時点でも進行している武力紛争と国民が分断されたままの状況を考えると、この巨大な実験は成功しつつあるとは言い難いこと、そして、根本的な問題は、「下からの平和」と「上からの平和」のあいだにギャップが存在しており、二つのアプローチのシナジー、接合、あるいは調和を模索する必要があるということであった。
以上に基づき、本国際セミナーでは、南スーダンにおける紛争と平和構築にかかわってきた、考えられるすべての関係者を招へいし、それぞれの立場から発表してもらうことにした。具体的には、関係者とは研究者、「下からの平和」の実践者、南スーダン政府と議会の責任者、国連と国際NGOの専門家である。また、南スーダンの状況と直接関連しているスーダンとウガンダ北部を研究対象としている研究者も発表者に加わってもらった。
本国際フォーラムでは、基調報告に続いて4つの分科会で13件の発表が行われた。3日間の発表と討論で、「上からと下からのアプローチの調和」への道筋が明確になったわけではない。むしろ、あらためてあきらかになったのは、両者のあいだのギャップの大きさかもしれない。今回のフォーラムの目的のひとつは、紛争と平和構築の研究者と平和構築の実践者と政策決定者のあいだの対話の場を提供し、しかもたんなる情報交換ではなく、自己の営為を相対化して自省的・自己批判的に捉える視点を獲得することであった。3日間という期間は、こうした深い対話を実現するには短すぎたのかもしれない。また、主催者側の意図が発表者に十分には伝わっていなかったという問題もあった。しかし、今回のフォーラムの成果を踏まえて、思考と対話を継続していく必要があることはたしかである。
フォーラムのハイライトのひとつであったのは、長年コミュニティレベルでの草の根平和構築を実践してきた2名のキリスト教会関係者による、きわめて生き生きとした、笑いを引き起こすとともに共感を呼んだ発表であった。人びとをひきつけるこうした「身体化された雄弁術」は、南スーダン人びとが共有している伝統であることはあきらかであり、「アフリカの潜在力」の例証である。さらに言えば、困難な状況のなかで粘り強く継続されてきた平和構築の試み自体に、「アフリカの潜在力」を見いだすことができるだろう。
第3回国際フォーラムが終了したちょうど1週間後にジュバで政府軍SPLA同士の衝突が発生し、動乱はまたたくまに全国各地に飛び火し、内戦と呼んでさしつかえない状態に展開した。そのなかで、内戦は「民族紛争」の側面を色濃く帯びるようになった。幸い、フォーラムに参加した南スーダン人のなかで犠牲者はでていないが、彼/彼女たちの生活や運命もおおきく転換することになった。 2013年12月以降の動乱は、長年続けられてきた平和構築の試みが成功したとは言えないことを示唆している。南スーダンにおける「潜在力」とは、平和を志向するものではなく、武力紛争へと向かう傾向を意味しているのではないかとさえ思えてしまう。2014年1月23日に停戦合意が成立したが前途は多難である。新生国家南スーダンは、早くもおおきな危機を迎えている。紛争が発生した当初は、国際フォーラムの開催および成果のとりまとめがむなしく思えていたが、現在は将来のためにも成果の英語出版が必要であると考えている(2014年3月6日、栗本英世)。
プログラム
December 6 (Fri.)
- 14:00 – 14:20 OPENING REMARKS
- Dr. Sirisio Oromo (Director, Centre for Peace and Development Studies, University of Juba) & Prof. Itaru Ohta (Center for African Area Studies, Kyoto University)
- 14:20 – 14:40 WELCOME ADDRESSES (chaired by Dr. Sirisio Oromo)
- Prof. Aggrey L. Abate (Vice Chancellor, University of Juba)
- 14:40 – 14:45 INTRODUCTION OF THE KEYNOTE SPEAKER
- Prof. Eisei Kurimoto (Graduate School of Human Sciences, Osaka University)
- 14:45 – 15:30 KEYNOTE SPEECH
- Dr. Peter Adwok Nyaba (Former Minister of Higher Education, Republic of South Sudan /
Independent scholar)
“The War of Liberation Is Over; South Sudan Is Independent; Why Are the People Still Dying?” - 15:30 – 15:50 DISCUSSIONS (chaired by Prof. Eisei Kurimoto)
- 15:50 – 16:10 COFFEE/TEA BREAK
- 16:10 – 18:10 PANEL 1: INTERNAL AND EXTERNAL DYNAMICS OF ARMED CONFLICTS
- Chair: Mr. Philip Ohuyoro (Lecturer, College of Social & Economic Studies, University of Juba)
- 1) Prof. Eisei Kurimoto
- “Armed Conflicts in South Sudan since 2005: Old and New, an Attempt of Classification and Contextualization”
- 2) Prof. Samson Wassara (College of Social & Economic Studies, University of Juba)
- “Indigenous Potentials for Dispute Settlement and Reconciliation Waning in South Sudan: Consequences of Armed Conflicts”
- 3) Mr. Simon Monoja (College of Social & Economic Studies, University of Juba)
- “Ethnicity and Conflict: The Case of Jonglei State”
- Discussant: Prof. Edward K. Kirumira (College of Humanities and Social Sciences, Makerere University)
- 18:30 – 20:00 RECEPTION AT AFRICAN HUT, JUBA GRAND HOTEL
December 7 (Sat.)
- 09:00 – 10:30 PANEL 2: DESIGNING PEACEBUILDING AND RECONCILIATION
- Chair: Dr. Sirisio Oromo
- 1) Ms. Nguyen Thi Ngoc Van (Head of the South Sudan Recovery Fund Secretariat, UNDP) & Dr. Mayumi Yamada (Recovery, Reintegration, Peace Building (RRP) Officer, UN Resident Coordinator’s Office)
- “A Human Rights-Based Approach (HRBA) to Sustainable Peace and Development in South Sudan”
- 2) Hon. David Okwier Akway (Chair, The Peace and Reconciliation Committee, South Sudanese Legislative Assembly)
- 3) Hon. Chuol Rambang (Chair, The Peace and Reconciliation Commission, Government of the Republic of South Sudan)
- Discussant: Prof. Yoichi Mine (Graduate School of Global Studies, Doshisha University)
- 10:30 – 10:50 COFFEE/TEA BREAK
- 10:50 – 12:50 PANEL 3: VIEWS FROM BELOW: LEARNING FROM CASE STUDIES
- Chair: Prof. Samson Wassara
- 1) Mr. Isao Murahashi (Ph.D. Candidate, Graduate School of Human Sciences, Osaka University / JSPS Postdoctoral Research Fellow)
- “Inter-ethnic and inter-communal conflicts after CPA: The root cause of conflicts and the possibility of coexistence in Eastern Equatoria State”
- 2) Ms. Eri Hashimoto (Ph.D. Candidate, Graduate School of Social Science, Hitotsubashi University)
- “Searching for ‘African Potentials’ in the ‘Modern’ Conflicts of South Sudan: An Aspect of Armed Youth and the Prophet in Jonglei State”
- Discussant: Prof. Motoji Matsuda (Department of Sociology, Graduate School of Letters, Kyoto University)
- 12:50 – 14:30 LUNCH BREAK
- 14:30 – 17:20 PANEL 4: CHALLENGES OF GRASSROOTS PEACEBUILDING AND RECONCILIATION
- Chair: Prof. Eisei Kurimoto
- 1) Mr. Michael Arensen (The PACT-South Sudan)
- “Implementing Peacebuilding in South Sudan”
- 2) Ms. Gladys Mananyu (The South Sudan Council of Churches (SSCC))
- “Peoples Voices, Desires for Peace That Starts within Tender Hearts”
- 3) Fr. Archangelo Lokoro (Vicar-General, Catholic Diocese of Torit (DOT))
- “Be a Good Neighbour Yourself”
- 4) Rev. James Ninrew (Nuer Peace Council)
- Discussant: Prof. Sam Moyo (The Executive Director, The African Institute for Agrarian Studies (AIAS))
December 8 (Sun.)
- 09:00 – 11:00 PANEL 5: VIEWS ACROSS NATIONAL BORDERS
- Chair: Mr. Simon Monoja
- 1) Dr. Itsuhiro Hazama (Assistant Professor, Graduate School of International Health Development, Nagasaki University)
- “Peace and Bodily Expression from Below: Violence through Disarmament in Karamoja, Northern Uganda”
- 2) Prof. Tanga Odoi (College of Humanities and Social Sciences, Makerere University)
- 3) Dr. Christine Mbabazi (College of Humanities and Social Sciences, Makerere University)
- “Potential and Limitations of Traditional Rituals in Peacebuilding”
- 4) Prof. Akira Okazaki (Graduate School of Social Science, Hitotsubashi University)
- “Peacebuilding from the ‘Bottom’: African Traditional Wrestling Matches as Potentials for Conflict Prevention and Reconciliation”
- Discussant: Prof. Kennedy Mkutu (International Relations and Peace Studies, United States International University)
- 11:00 – 11:30 COFFEE/TEA BREAK
- 11:30 – 13:00 GENERAL DISCUSSIONS
- Chairs: Prof. Eisei Kurimoto & Prof. Motoji Matsuda (Department of Sociology, Graduate School of Letters, Kyoto University)
- 13:00 – 13:10 CONCLUDING REMARKS (by Prof. Itaru Ohta)
- 13:20 – 14:50 FAREWELL LUNCH
[西アフリカ・クラスター第5回研究会]「誰が道路を止めたのか:カメルーン東南部、バクエレの妖術と開発」(2013年10月26日開催)
日時:2013年10月26日(土)
場所:東京外国語大学本郷サテライト3階セミナー室
プログラム
山口亮太(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
「誰が道路を止めたのか:カメルーン東南部、バクエレの妖術と開発」
報告
山口氏は、カメルーン東南部の民族バクエレが暮らすある村で起こった道路建設をめぐる「紛争」について論じた。この村周辺の人々は、19世紀末以降、ドイツ人の進出やフランスによる強制労働、他民族の移動などに翻弄されながら、現地域に定着した。この地域には1970年代から伐採会社が進出し、道路が建設され、村々は川沿いから道路沿いに移動した。同時に、異邦人や現金が流入するなど社会変動にも見舞われた。
この地域の村々を通っていた道路は、1980年代に伐採会社が撤退すると荒廃し、通行が困難な状況が続いていた。2010年には、村々にとって念願であった道路改修工事が開始されたが、ある村で重機の故障により改修が止まり、奥の村まで道路が届かなくなった。その後、道路が届かなかった村々で、工事停止の原因がある人物のエリエーブ(妖術)によるものだという噂が広まった。それを解決するため、村の代表があつまって会議が行われたが、解決には至らなかった。
山口氏は、この「紛争」で焦点となったエリエーブについて分析し、エリエーブは肯定的にも否定的にも作用する両義性をもつこと、持ち主に働きかける内なる強制力、あるいは逆に持ち主がコントロールできる道具性という両面で語られていることを論じ、モダニティとローカルな出来事の接続による新しいエリエーブの可能性を示唆した。
発表の後の質疑では、エリエーブの性質についてや、他地域の妖術との比較などが議論された(平野美佐)。
[第15回公開ワークショップ/経済・開発ユニット第7回研究会]西浦 昭雄「成長する東アフリカのビール産業」(第198回アフリカ地域研究会との共催、2013年10月17日開催)
日 時:2013年10月17日 (木) 15:00~17:00
場 所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
プログラム
「成長する東アフリカのビール産業」
西浦 昭雄(創価大学学士課程教育機構・教授)
要 旨
東アフリカのビール産業は外資系資本による内需型製造業として成長を遂げている。原料である大麦の現地調達化が推進されることで現地農業にも影響を与えており、例えば、ウガンダ最大手のウガンダ・ブルワリーズ社は6千を超える小売店を定期的に訪問するなど、きめ細かなマーケティング戦略を展開している。本発表ではビール産業を通じてアフリカ経済を理解する新しい切り口を探っていきたい。
[経済・開発ユニット第7回研究会/第15回公開ワークショップ]西浦 昭雄「成長する東アフリカのビール産業」(第198回アフリカ地域研究会との共催、2013年10月17日開催)
日 時:2013年10月17日 (木) 15:00~17:00
場 所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
プログラム
「成長する東アフリカのビール産業」
西浦 昭雄(創価大学学士課程教育機構・教授)
要 旨
東アフリカのビール産業は外資系資本による内需型製造業として成長を遂げている。原料である大麦の現地調達化が推進されることで現地農業にも影響を与えており、例えば、ウガンダ最大手のウガンダ・ブルワリーズ社は6千を超える小売店を定期的に訪問するなど、きめ細かなマーケティング戦略を展開している。本発表ではビール産業を通じてアフリカ経済を理解する新しい切り口を探っていきたい。
[政治・国際関係ユニット第9回研究会]ゼンジーレ・コイサン「南アフリカのコイサン:承認と再生への闘争」(2013年10月08日開催)
日 時:2013年10月8日(火)18:00~20:00
場 所:東京大学駒場キャンパス 18号館4階コラボレーションルーム1
プログラム
ゼンジーレ・コイサン(ファースト・ネイション・ニュース)
「南アフリカのコイサン:承認と再生への闘争」
司 会:遠藤貢(東京大学大学院総合文化研究科)