[第21回全体会議]「African Potentials 2016: International Symposium on Conflict Resolution and Coexistence」(2016年1月23 – 24日開催)

日 時:2016年1月23日(土)-24日(日)
場 所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室

概要

本研究プロジェクトは、2011年度から5年間にわたって実施してきましたが、その最後を締めくくる国際シンポジウムを開催しました。このシンポジウムの目的は、以下の2点にありました。

本プロジェクトでは、これまでに毎年一度、アフリカ各地で「アフリカの紛争と共生 国際フォーラム」を開催し、アフリカ人研究者・実務家の参加を得て「アフリカ潜在力」に関する議論を深めてきました。これまでに5回のフォーラムを開催したわけですが、そのプロセスにおいて、わたしたちの議論を常にリードし、「アフリカ潜在力」という考え方をともに彫琢してきた、「常連」ともいうべきアフリカ人研究者が登場してきました。今回の国際シンポジウムの第一の目的は、こうしたアフリカ人研究者の参加を得て、「アフリカ潜在力」とは何かに関する議論を集大成することでした。その「常連」とは以下の6人です。

  • Edward Kirumira (Makerere University, Uganda)
  • Kennedy Mkutu (United States International University, Kenya)
  • Michael Neocosmos (Rhodes University, South Africa)
  • Samson Wassara (University of Bahr El Ghazal, South Sudan)
  • Francis Nyamnjoh (University of Cape Town, South Africa)
  • Yntiso Gebre (Addis Ababa University, Ethiopia)

この国際シンポジウムの第二の目的は、5年間にわたる本プロジェクトにおいて日本人研究者が集積した成果を広く公表することでした。このプロジェクトには50人以上の日本人研究者が参加して「アフリカ潜在力」に関する探究を続けてきました。その成果は「アフリカ潜在力シリーズ」全5巻として、2016年3月末に京都大学学術出版会から公刊されます。このシンポジウムでは、本プロジェクトの代表者と上記5巻の編者を務めた5人の研究者が、いままでの研究成果にもとづいて「アフリカ潜在力」とは何かに関する考えを述べ、活発な議論をかわしました。

この国際シンポジウムの成果にもとづき、近い将来に英文で「アフリカ潜在力」に関する議論をまとめた書籍の出版を実現することも合意されました。

プログラム

2016年1月23日(土)
10:30 – 10:40
Welcome Address: Shigeki Kaji (Kyoto University)
10:40 – 10:55
Opening Remarks: Itaru Ohta (Kyoto University)
10:55 – 11:00
Introduction of the Keynote Speaker: Motoji Matsuda (Kyoto University)
11:00 – 11:45
Keynote Speech: Edward Kirumira (Makerere University)
African Potentials and Sustainable Development
11:45 – 12:00 Discussion

 

12:00 – 13:30 Lunch

 

13:30 – 14:05 Kennedy Mkutu (United States International University)
New Challenges for African Potentials in Meditating Cross Border Conflicts
14:05 – 14:40 Michael Neocosmos (Rhodes University)
The Universality of Humanity as an African Political Potential
14:40 – 15:15 Samson Wassara (University of Bahr El Ghazal)
African Potential in Negotiating Statehood: Handling Crises of South Sudan
15:15 – 15:35 Break

 

15:35 – 16:10 Francis Nyamnjoh (University of Cape Town)
Incompleteness and Conviviality: A Reflection on International Research Collaboration from an African Perspective
16:10 – 16:45 Yntiso Gebre (Addis Ababa University)
Systematizing Knowledge about Customary Laws in Africa: The Case of Ethiopia
16:45 – 17:10
Comments (by five Japanese scholars on above five presentations: 5 minutes each)
17:15 – 18:15
Discussion
2016年1月24日(日)
10:00 – 10:35 Itaru Ohta
“Liberal Peace” Debates and African Potentials for Materializing Coexistence
10:35 – 11:10 Motoji Matsuda (Kyoto University)
Cultural Creativity for Conflict Resolution and Coexistence: From the Viewpoint of African Potentials
11:10 – 11:45 Shinichi Takeuchi (Institute of Developing Economies)
African Potential as an Analytical Perspective
11:45 – 12:20 Motoki Takahasi (Kobe University)
People as Lithe Agents of Change: African Potential for Development and Coexistence
12:20 – 13:50 Lunch

 

13:50 – 14:25 Masayoshi Shigeta (Kyoto University)
How People Can Achieve the Coexistence through the Sound Use of Resources?
14:25 – 15:00 Gen Yamakoshi (Kyoto University)
Who Owns African Nature? African Perspectives on the Future of Community-Based Conservation
15:00 – 15:20 Break

 

15:20 – 16:20
Comments on these six presentations by six African scholars
16:20 – 17:00 General Discussion

 

[第20回全体会議]特別フォーラム「アフリカ潜在力:紛争解決と共生の実現にむけて:成果出版の各巻の目的と構成」(2015年5月16日開催)

日時:2015年5月16日(土)13:30~17:30
場所:京都大学稲盛財団記念館、3階中会議室

本プロジェクトには50人以上の日本人研究者が参加して、「アフリカ潜在力」とは何か、それはアフリカの紛争解決と共生の実現にどのように活用できるのかに関する議論を続けてきました。その成果は、「アフリカ潜在力」シリーズ全5巻として、2016年3月に京都大学学術出版会から公刊する予定です。

この全体会議では、この出版の全体の趣旨について最終的な議論をおこなうとともに、各巻の目的と構成を、各巻の編者の説明にもとづいて全員が共有し、シリーズ全体として、どのような主張をおこなうのかについて議論をかわしました。

プログラム

13:30~13:50 事務局からの連絡
特別フォーラム「アフリカ潜在力:紛争解決と共生の実現にむけて:各巻の目的と構成」

13:50~14:00 太田至(京都大学)
『アフリカ潜在力:紛争解決と共生の実現にむけて』シリーズの出版について

14:00~14:30 遠藤貢(東京大学)
「武力紛争を越えるアフリカの潜在力」

14:30~15:00 高橋基樹(神戸大学)
「アフリカにおける開発、変動、及び紛争: 社会の新しい結合に向けて」

15:00~15:30 伊谷樹一(京都大学)
「地域社会における自然資源をめぐる対立と共生」

15:30~15:45 休憩

15:45~16:15 山越言(京都大学)
「アフリカの自然は誰のものか:参加型自然保護活動の現状と将来像」

16:15~16:45 松田素二(京都大学)
「現代アフリカの紛争解決と和解のための「アフリカ的」可能性」

16:45~17:30 全体討論

[第19回全体会議/第5回公開講演会]「現代アフリカの暴力を考える:大規模紛争からテロリズムの時代へ」(2015年1月24日開催)

日時:2015年1月24日(土) 15:00-17:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階会議室

現在のアフリカでは、大規模な紛争が多発した1990年代〜2000年代初頭の状況が大きく変化して、武装勢力が小規模化すると同時に国境を超えて拡散し、テロリズムが台頭しています。この講演会では、報道界の現場で長く活躍されてきた講師をお招きして、アフリカにおける安全保障上の脅威の変質、そしてアフリカ社会の伝統的な紛争解決方法の限界と希望について話していただきました。

講師の白戸圭一さんは、現在、三井物産戦略研究所・国際情報部・中東アフリカ室・主任研究員で、以前は毎日新聞外信部記者をされていました。とくに、ヨハネスブルク支局特派員や北米総局ワシントン特派員を歴任されています。著書の「ルポ資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄」(2009年、東洋経済新報社)は、第53回日本ジャーナリスト会議賞受賞を受賞しています。

プログラム

15:00-15:10
趣旨説明 太田至(京都大学) 
15:10-16:30
「現代アフリカの暴力を考える:大規模紛争からテロリズムの時代へ」白戸圭一(三井物産戦略研究所)
16:30-17:00 質疑応答

[第18回全体会議]特別フォーラム「2014年12月のヤウンデ・フォーラムにむけて」(2014年11月8日開催)

日時:2014年11月8日(土)14:00~17:30
場所:京都大学稲盛財団記念館、3階中会議室

プログラム

14:00~14:10
  平野(野元)美佐(京都大学)
「趣旨説明:ヤウンデ・フォーラムにむけて」

14:10~14:35
松本尚之(横浜国立大学)
「ナイジェリアにおける移民と首長位:アフリカの潜在力と伝統的権威」

14:35~15:00
近藤英俊(関西外国語大学)
「関係の呪術的移行:アフリカ妖術研究における対立関係の再考」

15:00~15:25
清水貴夫(総合地球環境学研究所)
「周辺化されるムスリムの生き残りのための非抵抗的な営み:ブルキナファソのムスリム再生産に関して」

15:25~15:40
休憩

15:40~16:05
岡野英之(大阪大学)
「インフォーマル・セクターの公権力化:紛争後シエラレオネにみるバイク・タクシー業界の事例から」

16:05~16:30
大石高典(総合地球環境学研究所)
「カメルーン東南部の近年のカカオ生産拡大過程における土地をめぐるコンフリクト:多民族状況の中での民族間交渉と文化伝播」

16:30~17:30 全体討論

報告

「趣旨説明:ヤウンデ・フォーラムにむけて」
平野(野元)美佐(京都大学)

2014年12月5日と6日に開催するヤウンデの国際フォーラムについて、これまでの準備状況とフォーラムの趣旨、セッションの構成について説明があった。また、キーノート・スピーカーと各発表者の発表内容の要旨について説明がされたのち、今日の全体会議の趣旨が述べられた。(大山修一)

「ナイジェリアにおける移民と首長位:アフリカの潜在力と伝統的権威」
松本尚之(横浜国立大学)

ナイジェリア三大民族のひとつイボ社会は非集権的な社会構造をもっていたが、王位や首長位といった称号が創造され、授与されている。イボは「商業民」や「移民」として知られており、各地に成功した商人がおり、彼らのなかには称号を得るものがいる。このような動きは、称号の売買と非難されることもある。称号が付与された人物は、首長を象徴する衣装を着用し、握手の作法をもち、イベント開催どきに敬意が払われる。称号の付与には3種類があり、(1)故郷コミュニティへの支援に対する証として、故郷コミュニティからの称号の授与、(2)故郷以外のコミュニティからの称号の授与、(3)みずからがコミュニティと称号を創り出すことがある。(3)の場合では、故郷のコミュニティを分割し、王位と首長位が新設される。いずれにしろ、称号が付与されることによって、各地に分散した移民が故郷コミュニティとのつながりを得ている。称号の授与により、移民と故郷の関係が再構築されている。(大山修一)

「関係の呪術的移行:アフリカ妖術研究における対立関係の再考」
近藤英俊(関西外国語大学)

これまでのアフリカの妖術研究において、呪いをかける側とかけられる側の対立軸は富む者と貧しい者というものだった。例えば、妖術の理解として、富む者の観点からは妖術を仕掛けるのは貧しいものが富むものを妬み、富を分配する圧力を掛けていると説明されることが多かった。また、貧しい者の観点からは妖術を仕掛けるのは富む者であり、富む者は妖術を使って貧しい者を労働力として使っていると理解されていると説明する研究もあった。しかし、このような研究の多くは経済的合理性の元に行動する人間の構造を前提としていると同時に、研究者自身の生き様というフィルターを通して妖術を分析している。報告者は妖術の一つ一つの事例を観察し分析すると、人びとは不可解な不幸や理不尽な差異を理解するために、妖術を理由とするという。妖術使い(ウィッチ)と見なされる人びとは決してウィッチ的な生活を送っているわけではなく、他の人びとと変わらない日常生活を送っている。しかし、不可解な不幸に直面した際に、ウィッチとしての力が認識されるという。(伊藤義将)

「周辺化されるムスリムの生き残りのための非抵抗的な営み:ブルキナファソのムスリム再生産に関して」
清水貴夫(総合地球環境学研究所)

ブルキナファソにおいて、イスラーム教徒は周縁化されている。イスラーム教徒の若者は農村部では畑を求めて移動したり、都市部では托鉢をしたりしながら生活している。近年、イスラーム教徒はコーランスクールに近代的な学校教育カリキュラムを導入したようなフランコ・アラブ・スクールを設立し拡大している。このような現象はイスラーム教徒を作り出す場である「学校」を近代化させ、イスラーム教徒のコミュニティを拡大させたいからであると考えられる。(伊藤義将)

「インフォーマル・セクターの公権力化:紛争後シエラレオネにみるバイク・タクシー業界の事例から」
岡野英之(大阪大学)

シエラレオネでは、内戦終結後にバイク・タクシーが急速に増え、現在では基本的な交通手段となっている。最初は元軍人の商売だったが、若い世代が多数参入するようになってきている。バイク・タクシー業界は制度化が進み、それまであった任意団体が統合して2012年には商業バイク運転手組合が設立された。組合は、(1)運転手と乗客、警察、バイク所有者との間の問題解決、(2)保険料を徴収し、運転手のための保険を提供、(3)運転手を管理し、違反者から罰金を徴収するなどの活動をおこなっている。地方NGOの元職員が事務を担当し、公共の目的のための組織という役割が明確になった。組合はコミュニティ・レベルから郡レベル、州レベル、国レベルまで4つの階層から構成されており、上の階層の役員は下の階層の役員によって選出されることになっている。こうした選挙制度が導入されたことによって、選挙における暴力、利益誘導型政治、汚職などアフリカ政治の負の側面が現れ始めている。(市野進一郎)

「カメルーン東南部の近年のカカオ生産拡大過程における土地をめぐるコンフリクト:多民族状況の中での民族間交渉と文化伝播」
大石高典(総合地球環境学研究所)

カメルーン南東部の狩猟採集民バカ・ピグミーの事例から、森のポテンシャルと森の利用をめぐるコンフリクトについて報告した。アフリカ熱帯林では、これまで農耕民と狩猟採集民の間の生態学的「共生」関係があることが報告されてきたが、1980年代に伐採会社が入ってきた後から調査地に定住する移住者が出てきた。こうした移住者は、カメルーン北部のムスリムや西アフリカのサヘル地域の出身者が多く、商業活動にかかわることが多い。この地域では1980年から90年にかけてカカオ栽培が広がってきたが、所有するカカオ園の面積に個人差が広がってきている。開墾したカカオ園の売買が進むと同時に、賃貸契約もバカ・ピグミーからバクウェレ、そしてハウサへという方向性のあるものになっている。こうした流れは、移住してきた商業民が大規模なカカオ園を保有することにつながっている。こうした一連の流れは、将来もっと深刻なコンフリクトを引き起こす可能性を秘めているだろう。(市野進一郎)

全体討論

総合討論では、ヤウンデで開催されるフォーラムについて、西アフリカという地域性という枠組みではなく、経済のグローバル化という側面が共通な話題として議論できるのではないだろうかというコメントがあった。また、フォーラムでは他の発表者の話を意識して報告の内容を修正して欲しいという要望が研究代表者の太田から出された。(伊藤義将)

[第17回全体会議]特別フォーラム「アフリカ潜在力から考える紛争解決に向けた国際関係の諸相」(2014年7月19日開催)

日時:2014年7月19日(土) 13:30〜17:30
場所:京都大学稲盛財団記念館3階中会議室

プログラム

13:30~14:00 事務局からの連絡
14:00~17:30 特別フォーラム「アフリカ潜在力から考える紛争解決に向けた国際関係の諸相」

プログラム

14:00~14:10
遠藤貢(東京大学大学院総合文化研究科)
趣旨説明

14:10~14:50
クロス京子(立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構)
「移行期正義と女性の正義―リベリア平和構築プロセスにおけるエージェントとしての女性」

14:50~15:30
杉木明子(神戸学院大学法学部)
「「国内紛争」の越境・拡散と「紛争解決」-北部ウガンダ紛争の事例から」

15:30~16:10
栗本英世(大阪大学大学院人間科学研究科)
「南スーダン新内戦和平調停におけるIGADの役割」

16:10~16:25
  ブレイク

16:25~16:45
遠藤貢(東京大学大学院総合文化研究科)、武内進一(アジア経済研究所)
コメント

16:45~17:30
  総合討論

報告

移行期正義と女性の正義―リベリア平和構築プロセスにおけるエージェントとしての女性
クロス京子(立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構)

クロス氏は、平和構築プロセスにおいて、社会変革のエージェントとしての女性が果たす役割について論じた。最初に、移行期正義が制度化されてきた背景やそのスコープの拡大について説明し、平和構築において、ジェンダー、移行期正義、社会正義の3領域がどのような連環にあるかという問題設定を明確にした。次に分析の枠組みとしてジェンダー視点を導入する意義を述べた。紛争下の性的暴力撲滅推進は国際的な流れであり、国連安保理でも女性の平和、安全保障が議論され、繰り返し決議がなされている。決議では、①「被害者」としての女性という観点のみならず、②社会変革の「エージェント」としての女性という観点が導入されている。以上のことから、クロス氏は、ローカル正義が持つ構造的不平等問題にはジェンダー観点を導入する意義があり、女性が社会変革のエージェントとして参加するローカル正義は女性の正義実現に効果を持つという仮説を提示した。最後に、この仮説を検証するために調査をおこなっているリベリアの女性組織の事例が紹介された。リベリアにおける既存の紛争解決法としては、チーフ・長老による検討会議Palava Hutがある。これを模して作られたPeace Hutという女性組織によって、紛争解決、小規模ビジネス、DV被害者保護・加害者の引き渡しなど女性の能力強化のための様々な活動がおこなわれている。質疑応答では、このような活動を可能にした要因が何であるかが問われた。ジェンダー指数で見る限りリベリアの女性の地位は低いままであるが、寡婦として生活する中で女性がエンパワーするためのアクセスは増えたという点が指摘された。(市野進一郎)

「国内紛争」の越境・拡散と「紛争解決」-北部ウガンダ紛争の事例から
杉木明子(神戸学院大学法学部)

杉木氏は、北部ウガンダで発生した紛争が「ミクロ・リージョン化」、つまり近隣諸国へ越境、拡散していったプロセスを概観したあとで、紛争解決に向けた取り組みとその課題について論じた。ウガンダ北部では、1987年にジョセフ・コニー率いる神の抵抗軍(LRA)がムセヴェニ政権に対する軍事抵抗を開始した。LRAは1994年にはスーダン(現・南スーダン)に拠点を移し、2005年にはコンゴ民主共和国へ、さらに2008年には中央アフリカへと移動を続けた。LRAの現在の軍事力はわずか210~240人程度だとされる。軍事的には圧倒的な優位にあるのに、これらの4か国がLRAを制圧できていない背景として、①LRAは関係国にとって安全保障上の最優先課題ではないため、解決へ向けた政治的意思が欠如していること、②各国で反政府勢力への支援や資源の収奪などをおこなってきたウガンダ政府に対して、近隣諸国が不信感を抱いていること、③現在、LRAの拠点や攻撃対象はウガンダ北部にはないため、紛争を解決すべき主体がどの国なのかが不分明であること、の3点を挙げた。ウガンダ北部紛争のような越境した紛争を解決するための平和構築は、国レベルではなく地域(リージョナル)レベルでおこなわれる必要があり、その実現に向けて対話・コンセンサス型のアプローチによる地域協力、つまり関係諸国が協議を重ね、紛争解決や安全保障の価値を共有する環境を醸成していくことが求められている。最後に杉木氏は、紛争解決の潜在力として、草の根レベルで形成されたCBOである地域市民社会タスクフォース(RCSTF)による各国政府への働きかけがもつ可能性に言及した。ただし、「KONY2012」運動のような当該地域の住民の意思を無視したアドボカシー・ネットワークは、地域住民からの反発を招きかねない点で問題含みのものであることも指摘した。(佐川徹)

南スーダン新内戦和平調停におけるIGADの役割
栗本英世(大阪大学大学院人間科学研究科)

栗本氏は2013年12月から続く南スーダンの紛争について、背景と経緯を説明した後、IGADなどの地域(リージョナル)機関がどのように対応したのか、主にニュースメディアの報道を取り上げながら解説を行った。紛争が生じた背景については2005年から続く復興の遅れ、汚職、キール大統領の強権的な政治などに対する不満の蓄積が挙げられた。また、大統領と副大統領の軋轢が民族紛争の様相を呈した点について、大統領が副大統領と関係者を武力によって排除した際に「エスニック・カード」を切ったためであるという私見が述べられた。次にAUやIGADの介入による和平調停に至るプロセスと停戦協定が破棄され各地で戦闘が継続している現状と、それぞれの機関が制裁を検討している様子が示された。質疑応答では、民間人レベルの民族間関係の現状がどうなっているのか、マルチ・エスニックなNGOはどのように活動しているのか、という質問が出された。また、キール大統領がなぜエスニック・カードを切ったのかという質問に対して、栗本氏から大統領が政治家として未熟であったという見解が示された。(伊藤義将)

[第16回全体会議]「今後の研究方針の打ち合わせ」(2014年5月10日開催)

日 時:2014年5月10日(土)13:30〜15:00
場 所:京都大学稲盛記念館3階中会議室

今回の全体会議では、各ユニットとクラスターの世話人と副世話人があつまり、今後の研究活動について、以下の議論をおこなった。

議題

(1) 成果の出版について
研究成果を、和文、英文でどのように出版するかを検討した。

(2) 今年度の全体会議、ユニット研究会、クラスター研究会、公開講演会の予定について

(3) 2014年12月に開催予定の「ヤウンデ・フォーラム」の進捗状況の報告
フォーラムのタイトル、キーノート・スピーカー、スピーカー、日程(発表者のタイトル、アブストラクト、ペーパーの提出予定など)を確認した

(4) 2013年10月に開催した国際シンポジウムの成果出版の進行状況
成果は、African Study Monographs の Supplementary Issue として今年度中に出版する。

(5) 2014年5月24~25日に京都で開催される日本アフリカ学会における成果発表について
フォーラムのかたちでセッションを組み、太田、遠藤、高橋、山越、松田がそれぞれのユニットの研究成果を報告し、永原陽子さんにコメントをしていただく。

(6) 国際人類学・民族学連合(International Union of Anthropological and ethnological Sciences: IUAES)における成果報告について
2014年5月16日に、松田素二さんが企画したパネルによって、IUAESの中間会議にて、本プロジェクトの成果を報告する。

(7) 本プロジェクトで招へいしたMurray Last さん(5月20日開催)、Idah M. Makukuleさん(5月26日開催)を講師とした研究会の開催について

(8) 「第4回アフリカ紛争・共生セミナー」(2013年度に派遣した若手研究者の報告会)について

[第15回全体会議/第4回公開講演会]「現代アフリカにおける紛争のリアリティ」(2014年3月29日開催)

日 時:2014年3月29日(土)15:00~17:00

場 所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室

要旨

現代アフリカは、さまざまな紛争をどのように終結させ、紛争によって解体・疲弊した社会をいかに再建してゆくのか、という困難な課題に直面しています。この講演会では、報道界と学界で活躍されているお二人に、この問題について講演していただきました。

プログラム

15:00-15:30
「アフリカの紛争の現在(いま)を考えるために」 遠藤貢(東京大学)
15:30-16:30
「アフリカの紛争現場で感じた、つながること、つなげて考えることの大切さ」 高尾具成(毎日新聞社)
16:30-17:00 質疑応答

[第14回全体会議]「アフリカにおける法の補助線:法学・人類学の視点から」(2014年1月25日開催)

日時:2014年1月25日(土)13:00~16:30
場所:京都大学稲盛記念館、3階、中会議室

プログラム

13:00~13:30 事務連絡
研究会「アフリカにおける法の補助線:法学・人類学の視点から」
13:30~14:05 石田慎一郎(首都大学東京)
「趣旨説明:アフリカ法の諸問題」
14:05~14:40 雨宮洋美(富山大学)
「アフリカの土地所有権:タンザニアを事例として」
14:40~15:15 久保山力也(名古屋大学)
「Prostitutionにおける多元的正義と紛争管理の構造研究」
15:15~15:50 小宮理奈(元ユニセフ、ウガンダ事務所)
「援助の潮流:国際機関による ローカルな組織へのエンパワメントと紛争解決」
15:50~16:30 総合討論

報告

石田慎一郎(首都大学東京)
「趣旨説明:アフリカ法の諸問題」

社会を経験的かつ一般的に記述するという点において、裁判の判決文と民族誌は類似しており、相互互換性をもっている。修復的な司法や真実委員会といったオルタナティブ・ジャスティスは、すこぶる地域指向的であり、制度だけではなく、社会のあり方をどう想定するのかが重要である。固有法(indigenous law)は、地域固有の法のあり方であり、その固有法が国家の枠組みに取り込まれることによって慣習法(customary law)となる。柔軟で常に動態的な<生ける法>としてのアフリカ法を固定してしまうことをゾンビ法化と称したい。アフリカ慣習法の柔軟性は社会内部の多様性と歴史性への視点を確保するためのものであり、規範性を退け、裁判官による恣意的な運用を認めるものではけっしてない。アフリカ慣習法における新しい規範形成が今後の大きな課題となる。

雨宮洋美(富山大学)
「アフリカの土地所有権―タンザニアを事例として」

アフリカの土地問題は、土地所有権の導入過程で起こる慣習を含む固有法と、いわゆる近代法との軋轢の問題である。世界銀行は「2003年土地政策」を打ち出すことによって、アフリカ諸国の市場経済化を進め、集団的または共同体的などと称される権利を個人的な権利への転換が推進された。2006年ころより、世界銀行による土地権利に対する調査、それにもとづいて、土地政策は変化している。法制度の問題が貧困問題の根幹だという前提にたち、貧困層の法的エンパワーメントの枠組みにのっとり 司法と法の支配へのアクセス、とくインフォーマルな慣習手続きにもとづくフォーマルな司法・土地行政システムを作ること、集団的権利(group right)を確保するために創造力に富んだ法的思考が必要とされる。タンザニアの土地法の特徴として、(1)「慣習的使用権」の規定、(2)入会地の明文化、(3)村土地法の構造、(4)土地の貧困対策機能、(5)慣習的な紛争処理機能の明文化の5点について検討した。アフリカにおける法整備においては、急激な変化を避けるため、個人の土地所有権から多様性を認めることの必要性、個人を基本とする土地所有権の段階的な導入が必要であると論じた。

久保山力也(名古屋大学)
「Prostitutionにおける多元的正義と紛争管理の構造研究」

久保山氏は、ケニアで「性的交渉による稼ぎによって、生計の全てもしくはその一部をたてている女性」の性を活かした生活の実体を包括的に明らかにするとともに、彼女たちが生活の過程でいかに紛争管理をおこなっているのかに着目した分析をおこなった。データはケニアの主要な都市で101人の女性に対しておこなった質問調査から得たものである。女性の多くは客とのあいだに不払いや暴行などのもめごとを経験している。くわえて8割の女性が警察に逮捕された経験がある。これに対して彼女たちは、インフォーマルな「生ける法」を用いて紛争の管理や解決を試みているし、警察に対しては賄賂の支払いをとおして争いを回避しようとしている。

小宮理奈(元ユニセフ、ウガンダ事務所)
「援助の潮流:国際機関によるローカルな組織へのエンパワメントと紛争解決」

まず小宮氏は、トップダウン型援助の見直しがはかられる過程で、ADRや修復的司法が注目され、援助パートナーとして宗教団体などのFaith Based Organization (FBO)が浮上してきた経緯を示した。調査対象であるウガンダでは、司法・警察がキャパシティ不足に陥っているため、人びとは代替的司法に紛争の解決をつよく依存している。代替的司法には地域限定のものにくわえて、全国の地方自治体に立法・司法機能を備えたLocal Council Court (LCCs)が存在する。人びとにとってLCCsはもっとも身近な司法であり、「フォーマルな」訴訟に比べて金銭的負担は少なく、その和解的アプローチはコミュニティに好ましい解決策を提供することがある。一方でLCCsには、構成員の知識不足による権限逸脱、汚職、女性の軽視、フォーマルな機関との連携不足などの問題点もある。最後に小宮氏は、フォーマルな機関が機能する以前に代替的司法をエンパワーすることは妥当か、代替的司法がフォーマルな機関のキャパシティ不足の隠ぺいに使われていないか、といった論点を提示した。
(大山修一、佐川徹)

[第13回全体会議]「African Potentials 2013: International Symposium on Conflict Resolution and Coexistence」(2013年10月05-06日開催)

日 時:2013年10月5日(土)& 6日(日)
場 所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室

議論の概要

この国際シンポジウムは、5年間の予定で実施している本研究プログラムの3年目に、これまでの成果をもちよって議論を深め、「アフリカの潜在力」に関する今後の研究方針を検討することを目的として、10人の外国人研究者を招へいして開催した。全体を4つのセッションにわけて、それぞれ4つずつ、合計16件の口頭発表があった。また、同時に開催したポスター・セッションには、日本人の若手研究者を主体として13件の発表があった。

キーノート・スピーチには、アフリカ史研究を牽引してきた歴史学者であるFrederick Cooper氏(ニューヨーク大学)を招へいして、”Decolonization and the Quest for Social Justice” と題する講演をしていただいた。

以下には、シンポジウムの総合討論のために栗本英世氏がまとめてくれたメモにそって、議論の要点を報告する。

(1)このシンポジウムでは多様な紛争、もめ事があつかわれた

  • 内戦:シエラレオネ、ウガンダ、モザンビーク、南アフリカ
  • 武装闘争:北部ケニアと南スーダンの牧畜社会、カメルーン北部の地域社会
  • 武器をともなわない争い:タンザニア・モシの協同組合、タンザニア・キロンベロ渓谷における自然資源をめぐる争い、タンザニアに導入された「緑の革命」、エチオピアのアルシ・オロモ社会、エチオピアにおける自然保護をめぐるもめ事、ニジェールにおける農民と牧民の争い
    武力をともなわない争いは、かならずしも非暴力的なわけではない。それどころか人びとは、しばしばみずからの意志に反して攻撃的にふるまし、その結果、一部の人びとは避難を余儀なくされている。また、それまでのように生計を立てていくことが困難な状況におかれる。
  • 南部アフリカ:アパルトヘイト、ポスト・アパルトヘイト期における暴力的な状況をわれわれはどのように位置づけるべきか。

(2) 紛争は、どのような主体のあいだにおこっているのか。

  • 国家(政府)と武装グループ
  • 国家(政府)とローカルな共同体や民族集団
  • ローカルな共同体や民族集団同士のあいだ:カメルーンにおけるバミレケとほかの民族集団、南アフリカにおけるソトとツワナ、エチオピアにおけるマンジョとカファ、牧民と農民、移住民と地元民など
  • 市民社会、共同体、民族集団の内部:エチオピアのアルシ・オロモ、ケニアのイゲンベ社会、カメルーンのバミレケ社会
  • 国際的な組織や運動(環境保護、開発、人道援助、人権保護)とローカルな共同体とのあいだ
  • 国際的な組織や運動とアフリカ国家(政府)
  • 階級間のあらそい
  • 生者と死者のあいだのもめ事

    しかしながら、こうした主体間に明確な境界線を想定すると、しばしば現実を誤認することになる。関係は重層的であるし、また、一見したところでは非常にローカルな紛争にも、地域や国家、国際関係がつよく影響している場合もある。発表者のひとりのMamo Hebo Wabe氏は、エチオピアのオロモ社会には、“A human being is a human being because of other human beings.” ということわざがあると語っていたが、逆にいえば、他者が「人間」ではないと見なされたときに、激しい暴力をともなう紛争がおきることになる。この状況は、いつ、どのように発生するのだろうか。

(3) 「アフリカの潜在力」をめぐる諸問題

  • 「潜在力」とは誰のものか、それを同定し活用するのは誰なのか。すくなくともそれは、外部の研究者や実務家によって発見されるものにとどまるべきではない。
  • 経済発展と紛争解決、そして共生の実現は両立しうるのか。すくなくとも開発=発展計画は、新たな紛争・もめ事を引き起こすものであってはならない。
  • 自然資源をめぐっていろいろな対立がおこる。こうした競合がおこることは、ある意味で不可避であるし、また状況は重層的で複雑である。
  • 社会的・経済的な「正義」「不公平」(Justice/Injustice)の問題は、十分に議論されてこなかった。また、Justiceとは何かをめぐって、多様な主体間にはおおきなギャップがある。

(4) 「アフリカの潜在力」という概念を明確にするための指針

  • これまでの研究では、単純な二元論(近代/伝統、普遍的/特殊的、西欧/アフリカ)にもとづく議論が多かったが、それは「アフリカの潜在力」を考えるためには無用のものである。
  • われわれが現地で遭遇する事件は、想像以上に複雑で錯綜しており、動的なものである。「伝統」「慣習的」「部族的」「エスニック」「共同体」といった概念は、所与のものとみなすことはできない。こうした概念で指示されるものは、実際には可変的・状況依存的であって、つねに競合や交渉にさらされている。それゆえに ”positioning”といった概念が有効になる。
  • 「国家」「政府」といった概念もまた、構造や機能が普遍的なものとみなされているが、実際には、地域によって異なる働き方をする。・
  • 紛争にかかわる主体は重層的な関係をもち、相互に浸透・混合し合う。状況によって、異なる”positioning”をとる。主体は、ある種の社会的・政治的・文化的な集団や組織に属しているとみずから主張するが、しかし、その集団や組織自体が可変的なものである。
  • このように、動的で柔軟性をもち、可変的であるもの、つねに競合と交渉にさらされているものとして「アフリカの潜在力」を考えるべきだろう。
  • 同時にまた、そうした性質をもつがゆえに「アフリカの潜在力」は権力をもつものによって操作され、悪用される可能性もある。こうした側面の研究も必要である。

プログラムとプロシーディング

>> 最新情報:プログラム/ポスター発表 PDF (2013.10.02 Up)

October 5 (Saturday), 2013
9:20 – 9:30 Itaru Ohta (Kyoto University) Opening Address
9:30 – 10:15 Frederick Cooper (New York University)
Keynote Speech: Decolonization and the Quest for Social Justice in Africa
10:15 – 10:45 Questions and Answers with Professor Cooper
10:45 – 11:00 Break
11:00 – 12:00 Core Time of “Poster Presentations” (Middle-sized Conference Room)
12:00 – 13:30 Lunch
13:30 – 16:00 Session 1 Revisiting Transitional Justice
16:00 – 16:20 Break
16:20 – 18:50 Session 2 Beyond Conflicts in Africa: How to Understand Nexus
between Social Relations, Resource Scarcity and Economic Development
October 6 (Sunday), 2013
9:30 – 12:00 Session 3 Whose Potential Can Contribute toward the Process of Conflict Resolution over Natural and Livelihood Resources?
12:00 – 14:00 Lunch
14:00 – 16:30 Session 4 Local Wisdoms and the Globalized Justice in a Process of Conflict Resolution
16:30 – 16:50 Break
16:50 – 18:00 General Discussion

セッション 詳細

October 5 (Saturday), 2013

◎Session 1. Revisiting Transitional Justice

Chaired by
Shinichi TAKEUCHI (Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization)

 

13:30-14:00 John CAULKER (Fambul Tok International)
The Role of Community Owned and Led Reconciliation Processes in Post War Sierra Leone
14:00-14:30 Zenzile KHOISAN (KhoiSan First Nation Status / Eerste Nasie Nuus[First Nation News])
Transitional Justice under Pressure: South Africa’s Challenge
14:30-15:00 Toshihiro ABE (Department of Literature, Otani University)
Is Transitional Justice a Potential Failure? Understanding Transitional Justice Based on Its Uniqueness
15:00-15:30 Tamara ENOMOTO (Graduate School of Arts and Sciences,
University of Tokyo)
Governing the Vulnerable Self at Home and Abroad: Peace and Justice in Northern Uganda and “KONY 2012”
15:30-15:40 Comment
Kyoko CROSS (Graduate School of Law, Kobe University)

 

15:40-16:00 General Discussion

◎Session 2. Beyond Conflicts in Africa: How to Understand Nexus between Social Relations, Resource Scarcity and Economic Development

Chaired by
Motoki TAKAHASHI (Graduate School of International Cooperation Studies, Kobe University)

 

16:20-16:50 Othieno NYANJOM (Kenya Institute for Public Policy Research and Analysis)
Understanding Pastoralism in Northern Kenya: The Imperative for Socio-Economic Transformation
16:50-17:20 David G. MHANDO (Sokoine University of Agriculture) , Juichi ITANI (Graduate School of Asian and African Area Studies, Kyoto University)
Social Conflicts as a Motive for Desirable Change: The Case of Farmer’s Primary Societies in Moshi, Tanzania
17:20-17:50 Yuko NAKANO (Faculty of Humanities and Social Sciences, University of Tsukuba), Takuji TSUSAKA (International Crops Research Institute for the Semi-Arid Tropics), Shimpei TOKUDA (Japan International Cooperation Agency), Kei KAJISA (School of International Politics, Economics and Communication, Aoyama Gakuin University)
Potential of a Green Revolution in Sub-Saharan Africa and the Role of Communities in Technology Adoption
17:50-18:20 Shuichi OYAMA (Graduate School of Asian and African Area Studies, Kyoto University)
Farmer-Herder Conflicts and Conflict Prevention in Sahel Region of West Africa
18:20-18:30 Comment
Jun IKENO (Graduate School of Asian and African Area Studies,Kyoto University), Takahiro FUKUNISHI (Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization)
18:30-18:50 General Discussion
Sun 6th October, 2013

◎Session 3. Whose Potential Can Contribute toward the Process of Conflict Resolution over Natural and Livelihood Resources?

Chaired by
Masayoshi SHIGETA (Center for African Area Studies, Kyoto University)

 

9:30-10:00 MAMO Hebo Wabe (Department of Social Anthropology, Addis Ababa University)
Avoidance as a Mode of Handling Disputes in Everyday Life: Cases from Arsii Oromo Villages, Ethiopia
10:00-10:30 Stephen J. NINDI, Hanori MALITI, Samwel BAKARI, Hamza KIJA and Mwita MACHOKE (Tanzania Wildlife Research Institute)
Conflicts over Land and Water Resources in the Kilombero Valley Basin, Tanzania
10:30-11:00 Nobuko NISHIZAKI (Faculty of Administration and Social Science, Fukushima University)
Contribution of Local Praxis to Conflict Resolution in Conservation Issue: Lessons from the Management of Conservation Areas in Ethiopia
11:00-11:30 Toshio MEGURO (JSPS Research Fellow PD / Graduate School of Frontier Sciences, University of Tokyo)
The Potential for Changing Attitudes and Self-Representations: Resolving Multilayered Conflicts Regarding Wildlife
11:30-11:40 Comment
Gen YAMAKOSHI (Graduate School of Asian and African Area Studies, Kyoto University)
11:40-12:00 General Discussion

◎Session 4. Local Wisdoms and the Globalized Justice in a Process of Conflict Resolution

Chaired by
Motoji MATSUDA (Graduate School of Letters, Kyoto University)

 

14:00-14:30 Mikewa OGADA (Center for Human Rights and Policy Studies)
Reframing Our Understanding of the Production of “African Potentials” for Conflict Resolution: Lessons from the Fragmented Localization of the Discourse of International Criminal Justice in Kenya
14:30-15:00 Shin-ichiro ISHIDA (Department of Social Anthropology, Tokyo Metropolitan University)
Egalitarian Conflict Management among the Îgembe of Kenya
15:00-15:30 Euclides GONÇALVES (Department of Archaeology and Anthropology, Eduardo Mondlane University / Centro de Estudos Sociais Aquino de Bragança)
The Colors of Justice: Village Chiefs, Secretaries and Community Leaders in Conflict Resolution in Northern Mozambique
15:30-16:00 Misa HIRANO-NOMOTO (Graduate School of Asian and African Area Studies, Kyoto University)
The Potential to Deter Conflict in Urban Africa: The Case of the Bamileke of Yaounde, Cameroon
16:00-16:10 Comment
Rumi Umino (International Center, Tokyo Metropolitan University)
16:10-16:30 General Discussion

Poster Presentation

October 5 (Saturday), 2013
Midori DAIMON (Center for African Area Studies, Kyoto University)
Performers Pick Up the Gauntlet: Tension between Audiences and Karioki Performers in Kampala, Uganda
Masaya HARA (Graduate School of Asian and African Area Studies, Kyoto University/ JSPS Research Fellow)
Social Ties and Food Exchanges in a Multiethnic Agricultural Community in Northwestern Zambia
Hitomi KIRIKOSHI (Graduate School of Asian and African Area Studies, Kyoto University/ JSPS Research Fellow)
Tree Management and Sharing Customs for Famine Food in the Hausa Society of the Sahel Region, West Africa
Yohei MIYAUCHI (Centre for Asian Area Studies, Rikkyo University)
The Powers of Neoliberal Communities: The Pursuit of Safe Living Environments in Post-Apartheid Johannesburg
Yuko TOBINAI (Graduate School of Global Studies, Sophia University)
How Did People Become “True” Christians? The Kuku Migration and the Christian Revival Movement in Greater Sudan
Eri HASHIMOTO (Graduate School of Social Sciences, Hitotsubashi University)
Prophets, Prophecies, and Inter-Communal Conflicts in Post-Independence South Sudan
Naoaki IZUMI (Graduate School of Asian and African Area Studies, Kyoto University)
Large-Scale Capitalist Farming of Agro-Pastoral Sukuma in Tanzania: Their Economic Relationship with Wanda Small-Scale Farmers
Sayaka KONO (Graduate School of International and Cultural Studies, Tsuda College)
A Study of Local Protest within the Framework of “Divide and Rule” in Apartheid South Africa: Being “Basotho” to Protest “Ethnic Antagonism”
Noriko NARISAWA (JSPS Research Fellow PD / Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University)
Gift-Giving for Developing Personal Friendship among Women in Rural Zambia: A Case Study of the Burgeoning Ceremony Called Chilongwe
Sayuri YOSHIDA (JSPS Research Fellow PD / Graduate School of Humanities and Social Sciences, Osaka Prefecture University)
Social Discrimination and Minority Rights: Petitions by the Manjo in the Kafa and Sheka Zones of Southwest Ethiopia
Hiroko KAWAGUCHI (Graduate School of Asian and African Area Studies, Kyoto University / JSPS Research Fellow)
Interpretations of Death and Relationships with the Dead among the Acholi in Post-Conflict Northern Uganda
Pius W. AKUMBU (Department of Linguistics / Centre for African Languages and Cultures, University of Buea)
Inter-Village Wars in Northwest Cameroon: The Role of Urban Dwellers
Kikuko SAKAI (Center for African Area Studies, Kyoto University)
Potentials of Informal Financial Systems in Extending Access to Financial Services in Africa: A study on Rotating Savings and Credit Associations and Accumulating Savings and Credit Associations in Kenya

Co-organized by
– The Grant in Aid for Scientific Research (S) Project: Conflict Resolution and Coexistence through Reassessment and Utilization of “African Potentials”
– The Center for African Area Studies, Kyoto University

[第12回全体会議]「南スーダン―継続する武力紛争と共存の可能性」(2013年7月13日開催)

日 時:2013年7月13日 13:30~17:40
場 所:京都大学稲盛財団記念館3階 中会議室

プログラム

13:30-14:00:事務連絡
14:00-17:40:「南スーダン――継続する武力紛争と共存の可能性」
14:00-14:15:栗本英世(大阪大学)「イントロダクション:CPA(2005年)以降の武力紛争の類型化の試み」
14:15-14:45:村橋勲(大阪大学)「民族集団間、集団内のコンフリクトと共存の可能性-CPA以降のロピットにおける諸問題」
14:45-15:15:内藤直樹(徳島大学)「帰還民と平和構築:東エクアトリア州トリット郡ロロニョ村の事例」
15:15-15:45:橋本栄莉(一橋大学)「武力紛争における予言者の役割:独立後南スーダン、ジョングレイ州の事例から」
15:45-16:00:休憩
16:00-16:30:岡崎彰(一橋大学)「「新南部スーダン」における新たな武力紛争」
16:30-17:00:栗本英世(大阪大学)「草の根平和構築の限界と可能性」
17:00-17:40:総合討論

栗本英世
「イントロダクション-CPA(2005年1月)以降の武力紛争のリストアップと類型化の試み」

包括的和平協定(CPA)以降の経緯を年表として提示するとともに、生じた紛争について、その主体(SPLA、SAF、UNMISS、スーダン政府系民兵、反乱軍、LRA、正体不明の武装集団、市民/民族集団の8主体)による類型化をこころみた。また、ヌエルの人々が1910年代に好戦的にならざるをえなかった政治・軍事的な状況を議論した。

村橋 勲
「民族集団間、集団内のコンフリクトと共存の可能性-CPA以降のロピットにおける諸問題」

南スーダンに居住する東ナイル系民族ロピットの農村社会における生業や政治体系(年齢階梯と首長制度)、内戦(第1次内戦、第2次内戦)における国内および隣国への避難と難民化した状況、和解会議とウシの返還、自衛の動きなどについて説明したのち、集団間のコンフリクト-家畜の略奪と子供の誘拐、集団内のコミュニティ間の敵対、土地争いや殺害事件について検討された。CPA後にもコミュニティ間の対立は減少せず、一見、「伝統的な」家畜の略奪のようにみえるが、内戦中あるいは内戦後に関係が悪化し、襲撃と報復が繰り返されている。地域社会では武装解除がすすまず、暴力事件が多発している。その背景には、生活改善に対する政府の取り込みが進展しない状況、民族自立の動きと対立・分裂の加速化があるのだろうと考えられる。

内藤直樹
「帰還民と平和構築―東エクアトリア州トリット郡ロロニョ村の事例」

南スーダンをふくむ紛争後社会では、紛争・人権侵害が断続的に発生する場合が多い。このため、難民・避難民状態の長期化、帰還後の再難民、国内避難民化、あるいは、難民・国内避難民の帰還がすすまないという事態が発生しやすい。そのため、難民、国内避難民、帰還民などの非自発的移民を社会に再統合するための支援が重要となる。しかし、南スーダンでは外資系企業による土地収奪がすすみ、地域社会の住民生活に深刻なインパクトを与える危険性が高いことが指摘された。東エクアトリア州のロトゥホ社会における非自発的移民に着目し、彼らがさまざまなアクターに能動的に働きかけ、生活再編に対する営みに着目すること、平和構築や地域開発にむけた草の根の実践として評価する研究の方向性が示された。村にはアマンガットという広場が必要であり、その広場には柱(アロレ)が立てられる。儀礼には、豊穣と人生の豊かさをしめすソルガムが重要である。2009年と2010年には干ばつの影響もあって、ソルガムは不作に陥った。農村生活では、人々は農耕のほかに、漁撈や採集、ウシをはじめとする家畜の飼養、雇用、年金や恩給、酒造り、都市居住者からの送金をくみあわせ、伝統的な相互扶助システムも利用していることが示唆された。一方で、復興景気をあてにした隣国のケニアやウガンダからの出稼ぎ労働、有力者による農地の取得と開発がすすめられている現状が報告された。

橋本栄莉
「武力紛争における予言者の役割―独立後南スーダン、ジョングレイ州を事例に」

橋本氏は、独立後に発生したジョングレイ州での武力衝突におけるヌエルの予言者の役割を検討した。ヌエルにおいて、予言者は伝統的に戦いを仕掛ける存在であると同時に紛争解決者としての役割を果たしてきたとされるが、植民地時代には抵抗運動を率いたとされ弾圧の対象となった。南スーダンの独立後には、民族集団間の衝突が頻発するなかで、ダック・クウェスという人物が予言者として登場してきた。彼は以前からいくつかの奇跡を起こしてきたとされるが、2011年8月に近隣のムルレからの襲撃を予言したとして、コミュニティを越えて予言者としての評判を獲得した。2011年末から2012年のロウ・ヌエルによるムルシへの襲撃では、ヌエルの白軍6000~8000人が戦いへと動員され、マスメディアではダックが率いたと報じられた。しかし橋本氏の聞き取り調査によると、ダック自身が戦いを先導したわけではなく、電話をとおして予言の情報を前線部隊に提供するなど、副次的・限定的な役割を果たしただけであった。ダックがその後に逮捕されると、地域の人びとは彼を「ウィッチ」と呼び否定的な評価をくだしていたが、まもなくなされた武装解除政策によって人びとのあいだに政府への不信感がつよまると、ダックを正しいことをした「予言者」とみなされるようになった。また人びとは、19世紀の高名な予言者であるングンデンの予言を現在のムルレとの関係を説明する際に言及するが、ダックはこのングンデンの予言を成し遂げるために現れた存在としても語られるようになった。このように今日のヌエルにおいては、予言が過去と現在、敵と味方を結び付ける媒体となっており、人びとは予言者のことばをとおして紛争の原因を同定、共有している。質疑では、この予言者の事例のどの部分に「ヌエルらしさ」がみえるのか、ダックの紛争における役割が「副次的」という評価は妥当なのか、白軍の人たちが戦場でその場にいない予言者の指示を求めたのはどうしてか、といった議論がなされた。

岡崎彰
「『新南部スーダン』における新たな武力紛争」

岡崎氏は、新南部スーダン、つまり南スーダン独立後のスーダン南部における新たな紛争の様相を明らかにした。新南部スーダンとは、地域的にはBlue NileやSouth Kordofanのヌバ山地の人びとにより構成されていたSPLA-North(スーダン人民解放軍―北部)からでてきた呼び方であるが、その後ダルフール各州の人びとによる運動体が合流し、SRF(スーダン革命戦線)が形成された。新南部スーダンには2005年以前から土地問題、資源問題、差別問題が存在した。この地域は天水農耕が可能な豊かな地域だったが、政府が世界銀行等からの融資を得て大規模な農場建設をおこなってきたし、石油などの資源も政府らが権益を握り、雇用や教育、日常生活における差別も被ってきた。そのため、この地域の人びとはSPLAに加わり南部の人たちとともに戦っていたが、2005年のCPA以降は南スーダンとは別個に戦いを進めていくことになった。2011年9月1日からはスーダン軍によるBlue Nileへの空爆もおこなわれ、地域住民はエチオピアや南スーダンへ難民化している。新南部スーダンの人たちが排除され続ける背景には、南スーダンが独立して以降、イスラーム、アラブ中心主義をつよめるスーダン政権が、自分たちの純粋さを示し統一を保つために、この地域の人びとを「内部の他者」として同定しているためである。2013年6月にはスーダンと南スーダン間の石油パイプラインが再閉鎖された。その理由の一つとして、スーダン政府は「南スーダン政府が新南部スーダンの反政府勢力を支援している」点をあげているが、その根拠は薄弱である。石油収入は南北両政府にとって重要であり、新南部スーダンの処遇が両国の関係の命運を握っているともいえる。南スーダンが独立したことは同時にスーダンが新しい国として再出発しなければならないことも意味するが、両国では新たな憲法整備も進んでいない状況である。それに対して、むしろ新南部スーダンの反政府勢力らが先駆的な多元主義的憲法案を作成している。岡崎氏は最後に「潜在力」ということばにまつわる問題群に議論を進め、国際社会が紛争へ介入することが中途半端な状態を持続させ「アフリカの潜在力」の発現を妨げているのではないか、「潜在力」を知っているのはだれなのか、「外部の研究者こそがそれを知っている」という認識があるならば問題なのではないか、もともと地域にあったなにかを「潜在力」として活用するしかないが、それを「活用する」といった途端に生じる温情主義的な立場をどうとらえるのか、国際的に批判をあびながらも政権を持続させているスーダン現政権のふるまいも「潜在力」と考えることができるのか、といった問題提起をおこなった。

栗本英世
「草の根平和会議の限界と可能性」

最初に栗本氏は、武力紛争に関するニュース情報からでは、そもそも「だれが」動員されたのかの詳細はわからないし、軍事的、社会的、医療的にも不明なことだらけであること、またメディア報道ではしばしば今日起きている紛争の歴史的文脈は等閑視されていることを指摘した。南部スーダンでは内戦中から数多の草の根の平和構築会議がおこなわれてきた。1994年のアコボ会議や1999年のウンリット会議などの成功例もあるものの、多くの会議での同意事項はその後実現されてこなかった。その理由を検討していく必要がある。一方、2005年のCPA以降は草の根の平和構築会議が開催される機会自体が減り、内戦で分断された社会が置き去りにされていることも問題である。また、草の根平和構築には限界もあるため、政府が「上からの平和」の役割を適切に果たす必要があるが、2005年以降政府はその役割を果たしていない。栗本氏が長年フィールドとしてきたパリ人とロピット人、ロトゥホ人のあいだでは、内戦勃発前に比べると人びとの往来は激減しているが、今日でもそれが途絶えてしまったわけではない。内戦中にも横断的紐帯は作用しており、それが人びとの生存にとってきわめて重要であった。このような関係は相互の生活の便宜を保障するものであり、共存を志向する人びとの関係性を地域の「潜在力」として捉えることができる。

総合討論

総合討論の場では、今年度に予定されているジュバでの国際ワークショップでどのようなテーマ設定をおこなうのか、という点が論じられ、栗本氏は①内戦中から「平和構築」という名目のもとにおこなわれてきた介入をどう評価するのか、②今日、地域の内部から生じてくる平和構築をめぐる動きにはどのようなものがあるのか、という2点を中軸に据えた議論をおこないたいと述べた。また、現在の政治経済状況においては「平和構築」にとってネガティヴに捉えられる要素も、中長期的には地域の安定にポジティヴな力をもちうる側面があることが指摘され、時間軸の取り方によって「潜在力」の内容が可変的なものとなりうることが共有された。
(大山修一、佐川徹)