日 時:2012年10月27日(土)
場 所:首都大学東京南大沢キャンパス国際交流会館1階中会議室
プログラム
13:00~14:50
石田慎一郎(首都大学東京)
「おそろしい隣人:ケニア・ニャンベネ地方40世帯10年の事件簿」
15:00~17:00
近藤英俊(関西外国語大学)
「敵対・同盟関係と妖術の『効果』」
報告
石田氏は、ケニア中央高地ニャンベネ地方の一集落における独自の紛争処理について論じた。この地方では近年土地が希少となり、1989年の土地登記事業開始以降、人びとが土地をめぐる権利意識を変化させ、土地所有に大きく関わるクランの役割もそれに伴い強化されてきた。そのような状況下、集団間同盟(イシアロ)=「おそろしい隣人」が紛争処理に利用されている。1つのクランに対し、特定の2つのクランがイシアロ関係となっており、イシアロには相互扶助や信義誠実が要求され、背くと制裁される。石田氏は、人びとがこの関係を利用し、個人間の争いなどでイシアロを使って宣誓や呪詛で解決を図ったり、賠償のとりたてを行っていることを指摘し、「官」や「専門家」に依存しない当事者同士の紛争処理が行われていることを、10年の事件簿を通して明らかにした。
近藤氏は、北ナイジェリアの都市カドゥナにおける、ある呪術師一家に起こった5つの事件(近藤氏自身が巻き込まれたものを含む)を取り上げ、グローバル化のなかでの平準化や蓄財といった妖術論を超え、当事者にとっての妖術がいかにリアルであるのかを例証した。家の主人で妖術師の男性は、一見ささいにも思えるネガティブな偶然の重なりに次々と妖術のラベルを貼り、出来事としての終止符を打っていく。それは彼にとって、わからなさ、不確実性を解決する手段でもある。当事者にとって、すべての出来事が必然だと感じられていく、つまり偶然性と必然性が重なり、妖術へと結びついていく過程とメカニズムが詳細に論じられた。また、その背景に、言語、宗教、民族的に「超多文化」であるカドゥナという都市社会の影響があることが示唆された(平野(野元)美佐)。