日 時:2012年1月27日(金)
場 所:京都大学稲盛記念館 3階 小会議室I
プログラム
北東アフリカ・クラスターはいかに、アフリカの紛争解決に貢献できるのか
報告
本研究会では、北東アフリカ・クラスターが行う最初の研究会ということもあり、メンバーがこのクラスターで取り組みたいと考えている課題について発表したのち、本クラスターが目指す方向性について議論を行なった。
重田氏は調査地でプロジェクトを行なうにあたって、自分自身が土地紛争を経験するようになったため、土地の境界をめぐる紛争の解決方法に関心があると述べた。次に佐川氏が、エチオピアの南オモ県で行われているダム建設や石油採掘、大規模農場の開発といった大規模な開発プロジェクトが引き起こす紛争について、エチオピア南部の半乾燥地域に暮らすダサネッチに注目しながら検討していくことを述べた。伊藤氏はエチオピアで観察されたジャールサ(jarsa)という紛争解決方法について触れたのち、北東アフリカという枠組みで扱うことができるテーマを模索中であることを述べた。遠藤氏はこれまでソマリランドにおける調停活動に重点をおいて調査を行なってきたが、今後はプントランドにおける和解のプロセスに注目したいと述べた。栗本氏はモニョミジ(Monyomiji)という紛争解決方法に興味がある点を述べ、ローカルな紛争解決のメカニズムには限界があるため、それを仲介する機関や組織の可能性を探りたいと述べた。内藤氏は現代のアフリカにおいて、グローバリゼーションのなかで展開する非西欧的な国家や市民社会の可能性について検討したいと述べた。
その後の議論では、まず北東アフリカ諸国がそれぞれ体験している紛争の背景や種類は大きく異なるため、北東アフリカという枠組みで考えるのは難しいという点が確認された。また、潜在力を疑う必要があるという点、対象としている紛争がどのようなものなのか検討する必要性、近代化ということに対して、「経済発展か文化の維持か」という二項対立的な考えかたを再検討する必要性などについて話し合いが行なわれた。そのほか、都市部の紛争解決方法やマスメディア、宗教や外部アクターの役割、またローカルな活動だけではなく、ディアスポラにも注目する必要性について検討が行なわれた。
最後に次回の研究会は5月12日に、弘前大学の曽我亨氏と京都大学の伊藤義将氏を発表者に迎えて行なうことを決定して研究会を終了した。(伊藤義将)