[政治・国際関係ユニット第7回研究会]クロス京子「移行期正義における『和解』のローカル化―ローカルと国際の相互作用の観点から」(2012年11月17日開催)

日 時:2012年11月17日 15:00~17:00
場 所:京都大学吉田キャンパス・総合研究2号館 401号室

プログラム

移行期正義における「和解」のローカル化―ローカルと国際の相互作用の観点から
クロス京子(神戸大学)

報告

南米や東欧の民主化移行期に創出された「移行期正義」という概念は、冷戦終結後には平和構築の視点を絡めた「紛争後の正義」として導入されるようになり、紛争後社会において正義を尽くし和解を実現するためのプロセスやメカニズムとして定義されるようになった。南アフリカ共和国における真実和解委員会の活動以降、各地域のローカル正義に基づく和解制度が移行期正義へ公式に採用される「ローカル化」と呼ばれる事態が、世界各地で進展してきた。本発表では、このローカル化の過程にいかなるアクターが関わってきたのか、ローカル化された和解規範の特徴はどのようなものか、移行期正義がローカル化されることの意義、問題点はなにか、という3点が明らかにされた。とくに、国際規範と国内規範の双方に精通し、活動拠点を国内に持つ「ローカル・エージェント」と、同じく双方の規範に精通し国内外を自由に移動する「トランスナショナル・エージェント」がネットワークを形成し、協働することが、ローカル化の過程で重要な役割を果たしていることに焦点が当てられた。
議論では、「ローカル正義」の「ローカル」とは国際社会の規範に適合する部分だけを抜き取った内容を示しており、「ローカル化」の過程において「ローカルの標準化」、あるいは「ローカルの飼い馴らし(ドメスティケーション)」が進んでいることを強調したほうがいいのではないか、真実委員会の形成過程や機能を考える際には、上述のエージェンシーの動きだけでなく、移行期における国内のパワーバランスをより重視した分析をおこなう必要があるのではないか、「ローカル・エージェント」と「トランスナショナル・エージェント」の間に広がる権力の位相により注意を払う必要があるのではないか、移行期正義の取組みをアフリカへ司法制度を移植する植民地化以降の歴史のなかに位置付ける作業が必要ではないのか、といった指摘がなされた。(佐川徹)

カテゴリー: 政治・国際関係(テーマ別研究ユニット), 研究活動 パーマリンク