[第6回公開講演会]「アフリカが世界を救う-紛争解決の新しいパラダイムを求めて」(2016年6月18日開催)

日時:2016年6月18日(土)13:30〜17:00(開場13時)
会場:東京大学駒場キャンパス18号館ホール

参加費:無料
定 員:120名(要事前申込,先着順)
お問い合わせ・申込先:
一般社団法人京都大学学術出版会シンポジウム掛
電話075-761-6182 FAX075-761-6190
Email sympo@kyoto-up.or.jp (件名に「大学トーク参加」とご明記ください)
※お申込みの際には、お名前、ふりがな、年齢、職業・学年、電話、Emailアドレスをお伝えください。

主催
東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」プログラム
東京大学大学院総合文化研究科グローバル地域研究機構・アフリカ地域研究センター
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
京都大学アフリカ地域研究資料センター
日本学術振興会ナイロビ研究連絡センター
京都大学学術出版会
活字文化推進会議

後援
読売新聞社・読売教育ネットワーク

詳細は以下のウェブ・サイトをご覧ください。
http://www.kyoto-up.or.jp/jp/africa-sympo201606.html

 

アフリカでは、とくに1990年代に入ってからいろいろな内戦や地域紛争が起こりました。それに対して国際社会は、PKOの派遣や国家建設の支援、あるいは国際裁判所による訴追など、欧米出自の思想や制度をアフリカに導入することを通して問題解決をめざしてきました。こうした介入は一定の成果をあげてきましたが、暴力によって切り裂かれた人間関係を修復するためにはあまり有効ではありませんでした。  このシンポジウムでは、紛争解決や共生の実現のために外来の制度や価値観をアフリカ社会に持ち込むのではなく、現地の人びとがみずから創造・蓄積し、運用してきた知識や制度に注目します。そして、アフリカの人びとの声に耳を傾けつつ、紛争処理や社会修復のために、この地域の在来の智慧や価値観を活用する道を考えます。

プログラム

13:30~13:35 開会の言葉 松田素二(京都大学、司会)
13:35~13:50 「アフリカ潜在力」研究プロジェクトの概要と成果 太田至(京都大学)

特別講演
13:50~14:50 「アフリカの紛争現場で社会の再構築に挑む」
瀬谷ルミ子(日本紛争予防センター・理事長)
14:50~15:05 休憩

討論
15:05~15:25 国際関係論の立場から 遠藤貢(東京大学)
15:25~15:45 アフリカ地域研究の立場から 島田周平(日本アフリカ学会・会長/東京外国語大学)
15:45~16:05 開発研究・実践の立場から 荒木美奈子(お茶の水女子大学)

 

16:05~17:00 総合討論

[第5回公開講演会/第19回全体会議]「現代アフリカの暴力を考える:大規模紛争からテロリズムの時代へ」(2015年1月24日開催)

日時:2015年1月24日(土) 15:00-17:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階会議室

現在のアフリカでは、大規模な紛争が多発した1990年代〜2000年代初頭の状況が大きく変化して、武装勢力が小規模化すると同時に国境を超えて拡散し、テロリズムが台頭しています。この講演会では、報道界の現場で長く活躍されてきた講師をお招きして、アフリカにおける安全保障上の脅威の変質、そしてアフリカ社会の伝統的な紛争解決方法の限界と希望について話していただきました。

講師の白戸圭一さんは、現在、三井物産戦略研究所・国際情報部・中東アフリカ室・主任研究員で、以前は毎日新聞外信部記者をされていました。とくに、ヨハネスブルク支局特派員や北米総局ワシントン特派員を歴任されています。著書の「ルポ資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄」(2009年、東洋経済新報社)は、第53回日本ジャーナリスト会議賞受賞を受賞しています。

プログラム

15:00-15:10
趣旨説明 太田至(京都大学) 
15:10-16:30
「現代アフリカの暴力を考える:大規模紛争からテロリズムの時代へ」白戸圭一(三井物産戦略研究所)
16:30-17:00 質疑応答

[第4回公開講演会/第15回全体会議]「現代アフリカにおける紛争のリアリティ」(2014年3月29日開催)

日 時:2014年3月29日(土)15:00~17:00

場 所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室

要旨

現代アフリカは、さまざまな紛争をどのように終結させ、紛争によって解体・疲弊した社会をいかに再建してゆくのか、という困難な課題に直面しています。この講演会では、報道界と学界で活躍されているお二人に、この問題について講演していただきました。

プログラム

15:00-15:30
「アフリカの紛争の現在(いま)を考えるために」 遠藤貢(東京大学)
15:30-16:30
「アフリカの紛争現場で感じた、つながること、つなげて考えることの大切さ」 高尾具成(毎日新聞社)
16:30-17:00 質疑応答

[第3回公開講演会/第10回全体会議]瀬谷ルミ子「アフリカの平和構築:現場からの課題と今後の選択肢」(2013年03月23日開催)

日 時:2013年3月23日(土)14:00~16:00

場 所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室

プログラム

14:00-14:15 趣旨説明と講師紹介 遠藤貢(東京大学教員)
14:15-15:15 「アフリカの平和構築:現場からの課題と今後の選択肢」
瀬谷ルミ子(日本紛争予防センター事務局長)
15:15-16:00 質疑と討論
16:30-17:30 瀬谷氏とプロジェクトメンバーとの意見交換会

要 旨

現代アフリカの多くの地域では、さまざまな紛争をどのように終結させ、紛争によって解体・疲弊した社会をどのように再建してゆくのか、という困難な課題に直面しています。アフリカの現場で紛争解決と平和構築の仕事にたずさわってこられた瀬谷ルミ子氏に、この問題について具体的な事例をとおしてお話しいただきました。

[第2回公開講演会/第9回全体会議]「紛争解決のためにアフリカの潜在力を活用する」(2013年1月26日開催)

日 時:2013年1月26日(土)15:00~18:00
場 所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室

プログラム

15:00~15:15 太田至(京都大学)「趣旨説明」 
15:15~16:15 松本仁一(朝日新聞特別企画顧問)「アフリカは紛争解決能力があるのか」
16:15~16:35 休 憩
16:35~17:35 ゲブレ・インティソ(アジス・アベバ大学教員)「エチオピアにおける法の多元性と慣習的な裁判(Legal Pluralism and Customary Courts in Ethiopia)」
17:35~18:00 総合討論

要 旨

趣旨説明 太田至(京都大学)

現代のアフリカ諸社会は、紛争によって解体・疲弊した社会秩序をいかにして修復・再生させるのか、争いのあとで人びとはどのように和解できるのかという課題に直面しています。この講演会では、こうした現実的な課題に対処するために、アフリカ人がみずから創造・蓄積し、運用してきた知識や制度がどのように活用できるのかを考えます。

アフリカは紛争解決能力があるのか
松本仁一(朝日新聞特別企画顧問)

□結論からいうと「ある」

□例:ソマリランド(280万人)
・80年代半ば、内戦が始まる。1991年バーレ政権崩壊。
・ソマリランド内部の武力抗争は続く。約20の氏族。5万丁のカラシニコフ。
・93年、ボロマ地区の氏族長老が和平会議を呼びかけ。
・長老82人が銃を手放すことを呼びかける。民兵は警察と軍に。
・国連が注目。UNDPが銃回収方法を担当。
・02年までに民間の銃はほぼ回収。
・市場、女性ばかり。治安に信頼。
・ただ、ソマリランドは「単一民族国家」――共通の利害感覚を持てる。

□問題は多部族国家:コンゴ民主共和国、ウガンダ北部、チャド、ジンバブエ
・経済が崩壊――食えない――部族に依存――部族優位社会に。
・部族パトロンはクライアントを養うためにワイロを取る――国家経済崩壊へ

□多部族社会での対立解消は可能か――イエス。
・部族を超える価値観を持つこと。「独立闘争」の時代は部族対立は目立たなかった
・部族に頼らなくても食える社会。働けば食べられる社会がそれに代わる。

□政府に任せておいたらいつまでも「利益誘導型」でだめ
・「働けば食える」「もっと働けばもっといいことがある」のインセンティブを。
・ジンバブエのORAP。インセンティブを持つ。
・南アの対モザンビーク、対タンザニア投資。雇用と労働の質の向上。
・経済合理主義を民間主導で持ちこむ実験中。OSR。

□一筋縄ではいかない。しかしやってみる価値はある。

エチオピアにおける法の多元性と慣習的な裁判(Legal Pluralism and Customary Courts in Ethiopia)
インティソ・D・ゲブレ(アジス・アベバ大学)

エチオピアには法の多元性がある―通常の公式な裁判と非公式で慣習的な裁判の二つが併存しているのである。家族内で発生する問題は、公式な裁判以外の場で取り扱われることが多いし、また、イスラーム教徒同士の争いはイスラーム法に則した裁判所で審議されることが多い。これとは異なり、伝統的なメカニズムによって人びとのあいだの争いが解決されたとしても、それは国家の法によって承認されることがない。しかしながら最近の調査によれば、農村で生活する人びとの大部分は、紛争解決の手段として、公式な裁判よりも慣習的な裁判を好む傾向があり、それは、都市部に住む人びとの多くにもあてはまることが明らかになっている。

これまでは、慣習的な紛争解決のメカニズムは「遅れたものである」と考えられてきたし、そうした慣習を廃止して、明文化された近代的な法律に移行しなければならないとされてきた。しかしながら現在、こうした伝統的なメカニズムが妥当なものであることが認識されるようになった。そして近年には、国家の法律では解決しにくい紛争は慣習的な裁判によって処理することを、政府が推奨するケースが多くなっている。

しかし、慣習的な紛争解決のメカニズムにはいくつかの欠点がある。すなわち、人権侵害がおこったり、女性や若年層が審理のプロセスから排除されることが批判されている。そのために伝統的な裁判は、エチオピアが批准しているさまざまな国際的な手段とは調和しない、という議論がある。また、一部の地域では、殺人事件のような重大な犯罪が慣習的なシステムによって裁かれているし、村レベルの裁判によって死刑が求刑される事例もある。そのために非公式な裁判システムは、公式な裁判と衝突するようになる。

この講演では、伝統的な裁判が妥当である理由は何なのか、どうして伝統的な裁判が好まれているのかを説明する。そして、こうした傾向は好ましく見えるが、それはどのような意義をもつのか、また、慣習的な裁判を利用するためには、どのような課題があるのかを論ずる。

Legal Pluralism and Customary Courts in Ethiopia
Yntiso D. Gebre (Addis Ababa University)

In Ethiopia, plural legal systems exist: the formal (regular) court and the informal (customary) court. With the exception of family matters that may be handled outside of the regular court and disputes between Muslims that may be taken to the Sharia court, conflicts resolved through other traditional mechanisms lack legal recognition. However, research reveals that most people in rural communities and many people in urban areas prefer the customary courts over the formal law for all forms of disputes.

In the past, the customary dispute resolutions mechanisms were considered backward practices that need to be replaced by the modern codified law. Today, there exists a growing recognition of the relevance of traditional conflict resolutions. In recent years, it became evident that sometimes government authorities encourage customary courts to address conflicts that could not be resolved through the state machinery.

Customary dispute resolution institutions are not without blemishes, however. Some are criticized for violating human rights and for excluding women and the youth from participation in hearings. This places traditional courts at odds with the international instruments that Ethiopia has signed. There are also instances, in some localities, where customary courts handle hard crimes such as homicide and even pass death sentences at the village court level. This is another source of confrontation between the formal and informal systems.

In this presentation, I will explain the reasons why the traditional courts remain relevant and in some cases even dominant; the manifestations of the recent seemingly favorable trend and its implications; and the challenges associated with the use of customary courts.

[第1回公開講演会/第1回 全体会議]「アフリカの紛争と共生:キックオフ」(2011年07月02日開催)

Poster

日時:2011年7月2日 (土) 13:30~16:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
共同主催:京都大学アフリカ地域研究資料センター
事前申し込:不要 Flyer(PDF)

内容

現代のアフリカ社会が直面する最大の困難は、紛争による社会秩序の解体と疲弊です。アフリカでは、とくに1990年代に入ってから大規模な内戦や地域紛争が頻発し、また、土地の所有と利用をめぐる暴力的衝突や政治資源をめぐる地域的な争いなど、多種多様な紛争が起こっています。そして国際社会は、リベラル・デモクラシーなどの欧米出自の思想や価値規範にもとづいて、こうした事態の解決をめざしてきました。 これに対して本ワークショップでは、まったく異なる立場をとります。それは、紛争解決や共生の実現のためにアフリカ人がみずから創造・蓄積し、運用してきた知識や制度があるという視点です。ただし、そうした知識や制度はアフリカに固有で変わらない実体ではなく、外部世界とのあいだで衝突や接合を繰り返しながら生成されたものです。本ワークショップではこうした知識や制度を、現在の紛争処理や社会修復のために活用する道を考えます。

キーワード

ルワンダ, 平和構築, 南スーダン共和国, ポストコンフリクト, 国家建設

プログラム

13:30~13:45 趣旨説明:太田 至(京都大学)
13:45~14:45 栗本英世(大阪大学)「回復しないコミュニティレベルの平和 ―「戦後」南部スーダンにおける平和構築の課題と限界―」
14:45~15:00 休憩
15:00~16:00 武内進一(JICA研究所)「紛争後ルワンダの国家建設とガチャチャ」

報告の概要

「趣旨説明」 太田至(京都大学)

本ワークショップは、2011年度から5年間の予定で実施する研究プロジェクト「アフリカの潜在力を活用した紛争解決と共生の実現に関する総合的地域研究」(科学研究費補助金・基盤研究(S))のスタートを記念するものである。現代のアフリカ社会は、紛争による社会秩序の解体と疲弊という大きな困難に直面している。この現実的課題に対して本プロジェクトは、西欧近代の制度や価値観を導入して対処するのではなく、アフリカ人がみずから創造・蓄積し、運用してきた知識や制度(=潜在力)を解明し、それを紛争解決と社会秩序の構築(=共生)のために有効に活用する道を探究することを目的とする。(太田至)

「回復しないコミュニティレベルの平和―「戦後」南部スーダンにおける平和構築の課題と限界―」 栗本英世(大阪大学)

Unrestored Peace at the Community Level: Challenges and Limits of the Peace-Building in the “Post-War” Southern Sudan Eisei Kurimoto (Osaka University) 2011年7月に独立が予定されている南スーダンでは、2005年の包括的平和合意の調印後、スーダン政府軍とスーダン人民解放軍(SPLA)の間には平和がおおむね保たれている。しかし、コミュニティレベルの平和は十分に達成されておらず、異なるコミュニティ間だけでなく同一のコミュニティ内でも武力紛争が発生している。コミュニティレベルの和解の促進を目的とした平和会議が開催されている地域もあるが、十分な成果は上げておらず、そのような試みすらなされていない地域もある。地域社会を再構築していくためには、コミュニティに内在する平和への意志(「平和力」)に注目した「下からの平和」のアプローチが重要であるとともに、「下からの平和」の動きを政府らが実施する「上からの平和」の営みと有機的に接合していく必要がある。 質疑応答の時間には、「下からの平和の営みを支援するためには具体的にどうすればいいのか」、「下からの平和と上からの平和の営みをだれがどう接合するのか」、「平和会合の開催だけでなく、より個人レベルでなされる商業活動を活性化していくことが必要ではないか」といった質問をもとに議論がなされた。(佐川徹)

「紛争後ルワンダの国家建設とガチャチャ」 武内進一(JICA研究所)

Rwanda’s Gacaca under the Post-Genocide State Building Shinichi TAKEUCHI (JICA Research Institute) 紛争後の国家建設と平和構築を、「政治的安定(Political sustainability)」と「異議・アカウンタビリティ(voice and accountability)」の指標から判別すると、三類型に類別できる。その類型とは、(1)両者の指標が低位のタイプ(例 アフガニスタン、スーダン)、(2)「政治的安定」の改善が「異議・アカウンタビリティ」指標の改善より大きいタイプ(例 ルワンダ、アンゴラ)、(3)「政治的安定」と「異議・アカウンタビリティ」の両方が改善したタイプ(例 ブルンジ、リベリア)である。紛争後の国家建設の実態は、国際社会の想定とはギャップがあり、紛争当事者の一方が政権を握ると強権化し、レジティマシーが失われる可能性が高くなることが指摘された。1990年~1994年にかけて内戦とジェノサイドを経験したルワンダでは、RPF(ルワンダ愛国戦線)が紛争後の国家建設を進めてきた。そのなかで、ジェノサイドに荷担した人物を裁く裁判、ガチャチャがおこなわれ、そのなかでは自白による刑期の半減が認められた。ガチャチャという裁判制度が始まり、トゥチは家族を殺害した犯人の検挙、真相の解明を期待する一方で、フトゥは家族の冤罪を晴らし、釈放を期待していた。ガチャチャの判決は、ひどくゆがんだものではないが、RPFの戦争犯罪は扱われず、「勝者の裁き」となっている傾向にあるため、人々に不満と諦念を抱かせおり、「法の支配」や「民主的統治」に寄与したとはいいにくい側面がある。紛争後社会における治安維持およびレジティマシーの確立を両立させる国家建設が重要である。 質疑応答では、ルワンダとブルンジの紛争後社会のちがいについて、紛争終結の仕方、国際社会の関与の強さが強く関係することが議論された。(大山修一)

参加人数:85名