日 時:2014年11月7日(金)
場 所:稲盛記念館3階小会議室II
島田周平(東京外国語大学)
「ナイジェリアのポテンシャルをめぐって」
島田周平氏は「潜在力」を考える際に、「潜在力」が及ぶ社会的・空間的・時間的範囲と、「潜在力」はプラスに働く場合とマイナスに働く場合がある点を常に意識しなければならないと述べ、「潜在力」がナイジェリアの地域紛争においてどのように機能しているのかを考察した。まず、ナイジェリアの地域紛争の背景を説明したのちに、ナイジェリアの地域紛争の特徴として、経済権益をめぐる争い、武力を背景とした実利主義の存在を説明した。また、紛争のさなかで、自警団、政治家の私兵、企業保安員、日雇い傭兵などの、あらゆるタイプの武装集団が出現しており、それらの武装集団は流動性の高い人々によって構成されていたことを説明した。そして、実利主義的な武力紛争が起こる背景として、ハウス制度がマイナスの「潜在力」として働いている点を示した。次に、ボコハラム運動が、1980年代頃から既に生じていた問題であることを示し、元々北部ナイジェリアのイスラーム社会で生じた活動が、次第に北部ナイジェリア全域、ナイジェリア全土、国際的イスラーム社会、国際社会へとスケールを拡大してゆき、もはやローカルな潜在力が働く余地のない範囲にまで及んでいると考察した。最後に、靴商人によって結成されたBakassi Boysの事例をとりあげ、政治に取り込まれることによって、市民組織が保持する機能が働かなくなることを示し、「潜在力」が機能する社会的スケールの限界を指摘した。(伊藤義将)