日時:2014年1月25日(土)10:30~12:00
場所:稲盛財団記念館3階小会議室1
プログラム
「子どもの妖術師問題」
宮田寛章(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
報告
アフリカ各地における妖術告発の現状について報告したうえで、子供の妖術師に関する先行研究を紹介した。子供のもつ自己顕示癖と物質的な動機から心理学的に分析した研究、妖術告発を長老の権威の低下を分析した研究がある。妖術の脅威に適切に対処しなければならないが、旧来の方法では対処できなくなっている。近年の妖術告発や妖術師撲滅運動は暴力をともなうし烈なものになっている。ナイジェリア南部のナイジャーデルタに居住するエフィック・イビビオ社会では、妖術(Ifot)は、死を含むあらゆる害悪をもたらす不可思議な超自然的な力であり、黒妖術と無害な白妖術がある。妖術師は生得的なもので、霊的な力をもつ。妖術への対処としては、伝統医、スピリチュアリスト、ペンテコスタル教会の牧師に相談し、問題が妖術である場合には、妖術師を断定してもらう。その人物への自白、妖術を解いてもらうよう頼み、特殊な薬を飲ませて、妖術師であるか判断する。その判断によって、妖術師とされた人物が殺害されることもある。子供の妖術師問題は2000年前後から増加しはじめ、告発される対象が老人から子供へと変化した。その背景には、妖術告発をするペンテコスタル教会の牧師やスピチュアリストといった宗教的職能者の存在がある。子供の妖術告発は、子供の両親や近親者によってなされるという特徴があり、子供の再統合に対する取り組みの現状と課題という興味深い報告がなされた。
(大山修一)