[政治・国際関係ユニット第8回研究会]舩田クラーセンさやか「アフリカにおける暴力/紛争と女性/ジェンダーを考える」(2013年7月13日開催)

日 時:2013年7月13日 10:30~12:30
場 所:京都大学稲盛財団記念館3階 318号室

プログラム

「アフリカにおける暴力/紛争と女性/ジェンダーを考える」
舩田クラーセンさやか(東京外国語大学)

報告

最初に舩田氏は、本科研のキーワードである「潜在力」や「共生」を検討する際に女性/ジェンダーが外部要因として扱われているのではないか、これらの概念を日本社会、たとえば原発事故後の福島において用いようとするときにいかなる問題を抱えているのかといった疑問を呈しながら、研究者自身がみずから生きる社会で置かれている関係性と権力の束を想起しながら、調査対象社会の「潜在力」や「共生」のあり方を探る必要があると述べた。つぎに舩田氏は紛争概念を検討し、紛争とは暴力を媒介としない対立や衝突も含めたより広い概念であること、紛争とはつねに「解決」されるべきものでもその発生自体を「予防」するものでもなく、構造的暴力や文化的暴力を顕在化させ、それを是正するきっかけにもなる局面として捉える必要があることを強調した。続いて、女性/ジェンダーと暴力/紛争との関係に議論を進め、暴力/紛争や平和をめぐる現象においては、女性を①「戦争や暴力の被害者としての女性」、②「平和の主体としての女性」、③「戦争や暴力の主体としての女性」として捉える立場がありうるが、②と③を扱った研究は少ないことに触れた。舩田氏は自身の研究において、モザンビークではそれまで十分な研究がなされてこなかった解放闘争に関与しなかった女性や、解放闘争に半強制的に関与させられることになった女性に焦点を当てた研究を、ルワンダでは現政権下で各地につくられている女性アソシエーション、とくにその内部の人間関係の葛藤に注目した研究を進めている。結論として、女性を社会の構成員として含めて考えたときに「潜在力」や「共生」のより多様な側面がみえてくる可能性があること、女性をめぐる権力関係に配慮しながらその生活へ着目することが、紛争下で展開する日常生活のあり方や日常生活のなかで発生している紛争のあり方を理解するうえでも重要であること、「女性研究者だから女性に対して調査しやすい」とアプリオリに考えるのではなく、女性が男性研究者に対して女性研究者には打ち明けないような話をすることもあるため、性差を越えた共同研究を進め、たがいの情報をクロスチェックしていくことが、実りある調査をもたらすことを指摘した。(佐川徹)

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