[政治・国際関係ユニット第5回研究会]秋林こずえ「紛争・平和研究とジェンダー研究―先行研究レビュー」(2012年07月20日開催)

日 時:2012年7月20日 15:00~17:00
場 所:東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1

プログラム

「紛争・平和研究とジェンダー研究―先行研究レビュー」
秋林こずえ(立命館大学)

報告

まず秋林氏は、ジェンダーと紛争・平和をめぐる議論や実践活動が、国連を中心とした国際社会で歴史的にどのように展開してきたのかをまとめた。とくに、2000年の安保理決議1325「女性・平和・安全保障」は、平和・安全保障政策へのジェンダー視点の導入や武力紛争下で女性を保護する必要性への言及がなされた点で重要である。つぎに、この安保理決議1325に関連して展開してきたジェンダーと紛争・平和研究を、トピックごとにまとめてレビューした。「1325決議の分析、批判」については、決議の採択過程をめぐる分析や決議の内容の限界をめぐる議論、「国連と女性、ジェンダー」では、平和の文化を女性の地位向上にどう貢献させることができるのかをめぐる議論、「軍事基地・長期軍隊駐留と女性、ジェンダー」では、基地とホストコミュニティの関係をめぐる研究や基地周辺にくらす女性自身による報告、「軍事主義とジェンダー」ではC.Enloeらによる女性を利用した軍事化がなされる過程や戦場と銃後の連続性を検討した研究、「PKOとジェンダー暴力」は平和活動部隊の駐留にともなう人身売買やレイプの発生をめぐる研究、「平和構築とジェンダー」では女性が平和構築過程に果たす役割をめぐる議論、「移行期、ポスト・コンフリクトのジェンダー正義」では、移行期正義におけるジェンダー正義の遅れを指摘した研究、「マスキュリニティと平和」では加害主体として男性が社会化される過程を分析した研究、「紛争における女性の役割、平和構築における女性の役割」では、平和だけではなく戦争に女性が果たす役割を包括的に捉えた研究、がそれぞれ取り上げられた。

質疑の時間では、1325決議が具体的に現実社会での紛争や平和構築にいかなる影響を与えたのか、伝統的な女性の役割は平和構築過程でどのように取り扱われているのか、国際社会の場でアフリカ女性が積極的に活動する姿とアフリカ農村部の「家父長制」下における周縁化された女性の姿をいかに連続的なものとして考えることができるのか、といった議論がなされた(佐川徹)

カテゴリー: 政治・国際関係(テーマ別研究ユニット) パーマリンク