(派遣先国:ケニア/派遣期間:2012年8月12日〜9月9日) |
---|
「21世紀ケニア社会におけるコミュニティ・ポリッシングの再創造に関する研究」 松田 素二(京都大学ア大学院文学研究科・教授) |
キーワード:ケニア, コミュニティ・ポリッシング, 選挙後暴力, ナイロビ, ルヒャ |
研究の目的ケニアは2007年暮れの大統領選挙後、死者1500名、国内避難民50万人という大規模な紛争を経験した。2013年3月の大統領選挙は比較的平穏に実施されたものの、前回選挙後暴動(PEV)後に指摘された紛争の根本原因の是正は遅々として進んでいない。こうした潜在的な紛争胚胎社会のなかで、人々が直接根本原因の解決に乗り出すことは至難のわざだ。そこで彼らはできるかぎり紛争(集合的な暴力行使)が生起しないように、あるいは仮にある地域で紛争が起きてもその伝播感染を防ぐような意識と実践を日常生活レベルで作り出すことによって、自らの生命と安全を確保しようと試みる。その一つの手段が、コミュニティのメンバーによる自衛的防衛活動(ポリッシング)である。 本研究の目的は、ケニアの都市部および農村部で試行錯誤されるコミュニティポリッシングの実態を調査することでその可能性と限界(問題点)を解明し、人々の日常世界に埋め込まれた紛争予防の知恵を「アフリカ潜在力」として検討することにある。 今回の調査から得られた知見今回の調査から得られた知見は以下の5点である。 第二は、ナイロビ・カンゲミ地区では2007年の暴動勃発後、多種多様な住民が地区防衛のための協同実践を自発的に開始した。キクユ、ルオを含む民族の異質性、地主、店子を含む階層の多様性、若者、長老を含む世代の多様性といった、通常は対立因子として作用する要因を超越した共同性が成立し、それをもとにした自発的なコミュニティ・ポリッシンググが有効に機能していたこと。 第三は、西ケニア・カカメガ県における3箇所の農村においても、2007年の暴動以降、村人が、警察やAPとは無関係に、自発的なパトロールと暴力調停のための自発的ポリッシング組織をたちあげ、それが選挙関係以外の安全維持に貢献していること。 |