【2012年度派遣報告】峯陽一「第16回世界経済史学会『開発主義の歴史的起源:アジアとアフリカの経験の比較』の企画と参加」

(派遣国:南アフリカ/派遣期間:2012年7月)
「第16回世界経済史学会『開発主義の歴史的起源:アジアとアフリカの経験の比較(Historical Origins of Developmentalism: Asian and African Experiences Compared)』の企画と参加」
峯陽一(同志社大学)
キーワード:開発主義, 経済成長, 比較研究, ルイス・モデル

2012年7月12日に南アフリカで開催された「第16回世界経済史学会」で企画したセッションで発表するための渡航であった。以下がそのセッションの要旨である。

近年のアフリカ大陸を覆うコモディティ・ブームによって引き起こされた経済成長の質と持続性への広範な関心のもとで、(民主主義的)開発主義の概念は南アフリカや他のアフリカ諸国で大きな注目を集め始めている。私たちのセッションは、アフリカの今後の開発のために、アジアの開発主義の歴史的経験からの教訓を得ることを意図しているし、またその逆のことも意図している。

アジアの開発主義国家は高付加価値商品の輸出の動的拡大をとおして持続的成長を達成した。そこでは、政府による精力的かつ選択的な介入がなされた。いくらかまえから工業政策と教育のポジティヴな役割にスポットライトがあてられていたが、効率的な開発政策の範囲はより広範なものである。農業政策は、他の政策同様に成長の経路を決定する重要な役割を果たしてきたにちがいない。

しかしながら、開発主義をめぐる議論は単なる政治的評価を越えてなされていくべきだ。本セッションの論考は、開発主義の経路を条件づけるものとして社会経済的転換の多様な側面を取り上げる。ルイス・モデルの枠組みにおけるターニングポイントをめぐる問いにくわえて、農村・都市移動、プロト工業化、技術伝播、労働倫理、時間管理といったトピックが含まれうる。開発主義は節約する意思がネイションのふつうの人々の生活を捕捉することを前提とする。この点において、労働の社会的再生産様式は、労働豊富なアジアと土地豊富なアフリカという一般的な背景のなかで、非常な重要性を有しているようにみえる。労働市場の統合や社会福祉と家事の機能といった問題についても議論されるだろう。

このセッションでは、開発主義の歴史的含意を、アジアとアフリカ、おもには日本と南部アフリカの研究者の直接的対話をとおして示す。ローカルな経験の同時性とアジアやアフリカの国々で過去の重大な時期に利用可能であった可能性の幅とを論じ、今日の開発主義をめぐる議論をより豊かなものとするための発表者を、本セッションでは迎える。

以下はセッションのプログラムである。

Part 1 The Lewis Model and Developmentalism in Africa and Asia
Session Chair: Kaoru Sugihara (The University of Tokyo)

Presentations:
Globalization and Tropics: W.A. Lewis's View on the World Economy during the Late Nineteenth Century
Kohei Wakimura (Osaka City University)

Arthur Lewis in Ghana, 1957-8: The Peasant Path of Post-Colonial Development Reconsidered
Yoichi Mine (Doshisha University)

Migrant Labour in Vietnam and Central Africa, 1920-1934: Comparative Colonial Perspectives
Webby Kalikiti (The University of Zambia)

Comments:
Euston Chiputa (The University of Zambia)
Tirthankar Roy (The London School of Economics and Political Science)

Part 2 Conditions of Developmentalism and Labour Question in Asia
Session chair: Yoichi Mine (Doshisha University)

Presentations:
Dual Structure Model Reconsidered: Labour Supply Behaviour in Japan’s Industrialization from the 19th to 20th Century
Masayuki Tanimoto (The University of Tokyo)

Developmentalism with Regional Dynamics: Factor Endowment, Industrial Policy and the Quality of Labour in Asia, c.1950-2000
Kaoru Sugihara (The University of Tokyo)

Comments for General Discussion:
Janis van der Westhuisen (The University of Stellenbosch)
Mzukisi Qobo (The University of Pretoria)
Gareth Austin (Graduate Institute of International and Development Studies)

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