【2011年度派遣報告】太田至「東アフリカ牧畜社会における家畜略奪・紛争・民族間関係に関する研究」

(派遣先国:ケニア/派遣期間:2012年2月19日~3月6日)
「東アフリカ牧畜社会における家畜略奪・紛争・民族間関係に関する研究」
太田 至(京都大学アフリカ地域研究資料センター・教授)
キーワード:小火器, AK-47, レイディング, 商業化, 平和構築, トゥルカナ

研究目的

東アフリカの乾燥地域では、AK-47などの小火器の蔓延が社会的問題となっている。わたしが調査しているケニア北西部では、まず、1979年にウガンダのアミン政権が崩壊したときに、その軍隊から流出した小火器がケニアにもはいってきた。その後、2005年まで続いたスーダンの内戦、そして1991年にソマリアとエチオピアで相次いでおこった軍事力による政権交代などにともなって、ケニア北部の牧畜社会で小火器がはびこるようになった。ケニアの軍隊や警察から銃器や弾丸が横流しされているといううわさも絶えない。一方、東アフリカ牧畜社会では、近隣民族間で家畜を相互に略奪しあうことが続いている。家畜の略奪は、以前は生業のため―家畜を自分たちで飼うため―におこなわれていたが、近年では、略奪した家畜はトラックなどで都市部まで運搬され売却されているといわれている。このような背景のもとで、紛争の実態や民族間関係を記述・分析するのが、わたしの研究目的である。

今回の調査から得られた知見

トゥルカナ地域には、民族間の和平や共存を目的としたローカルNGOがいくつか存在する。こうしたNGOは、OXFAMやUSAIDなどから資金を得て、民族間の紛争解決と平和維持を目的とした活動をおこなっている。わたしがインテンシブな現地調査を実施しているトゥルカナ地域の北西部では、カクマを拠点としたLOKADO(Lokichoggio, Kakuma and Oropoi Development Organization)とロキチョキオを拠点とするAPEDI(Adakar Peace and Development Initiative)のふたつのNGOが活動を展開している。前者は主としてトゥルカナとウガンダのジエおよびドドス、後者は主としてトゥルカナとスーダンのトポサとの関係を担当している。また、隣国のウガンダには彼らのカウンターパートであるローカルNGOとして、DADO(Dodoth Agro-Pastoralist Development Organization)とKOPEIN(Kotido Peace Initiative)がある。

LOKADOは、トゥルカナと隣接民族のジエとの和平をすすめるために、2010年12月と2011年12月に、Moru-a-Naiyeceという場所で儀礼的な平和会合を開いた。この場所は、トゥルカナがジエから分かれて独立の民族となっていったという口頭伝承に登場する場所であり、両者が和平会議を開くときには、伝統的にこの場所が活用されてきた。2011年12月の集会には、トゥルカナ県知事やカトリック教会の司教、国会議員なども参加し、これを毎年12月21日の恒例の行事とすることに決めたという。

LOKADOの事務所には、隣接民族の若者を集めてサッカーの対抗試合を実施しつつ、平和教育をするプロジェクト「Playing for Peace」の宣伝ポスターが貼ってあった

「Playing for Peace」の成果を記録したDVD

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