日時:2018年1月12日(金)15:00-17:00
場所:京都大学稲盛財団記念館大会議室
(以下、敬称略)
報告タイトル:「足元」からの平和構築―ジェノサイド後のルワンダにおける障害者支援―
氏名:ガテラ・ルダシングワ・エマニュエル、ルダシングワ(吉田)真美
所属:ムリンディ/ジャパン ワンラブ プロジェクト
司会:大庭弘継(京都大学)
コメンテーター:近藤有希子(日本学術振興会/同志社大学)
ルダシングワ夫妻は、ルワンダにおける1994年の虐殺後、1996年にムリンディ/ジャパン ワンラブ プロジェクト(Mulindi/ Japan One Love Project)というNGOを立ち上げ、以来21年間、足の不自由な障害者のための義肢製作を続けている。本報告では、ルワンダという国の概要とともに、当団体の活動である義足の無償製作と配布、また義足を履いて立ち上がろうとする者への職業訓練などの取り組みのなかで経験された苦労や想いについてお話いただいた。1994年の虐殺を経て「ゼロ」となったルワンダにおいて、人材も機材も施設もすべてを一から創りあげてこられたその過程について、写真を多用して生き生きと説明された。さらに、近年では義足を支援した者がパラリンピックを目指す姿についても紹介があった。
なお、ガテラさんの声を通してスワヒリ語で説明されたこと(ルワンダの歴史や活動内容の一部)は、真美さんを介して、その内容が会場へと届けられた。
コメンテーターからは、現在のルワンダの障害者を取り巻く困難な社会的状況が概説された。そして、しかしそのような社会のなかで、義足というモノによって喚起される人びとの想像力(憧れや可能性)、またそこで生じている社会関係についての質問がなされた。さらに、1994年の虐殺というすべてが「ゼロ」になった経験、つまり誤解を恐れずに言えば、ある意味ではさまざまな可能性が開かれたであろう瞬間を知るご夫妻だからこそ、今後の活動のなかにも未来を描き続けることができるのではないかという期待が込められた。
質疑応答では、ルワンダの都市‐農村間の生活の相違やその実態、および各地域における活動の難しさに関する質問がなされた。またコメントを受けて、軍人ではない一般の障害者に対する国家としての取り組みが乏しいなかで、彼らが今後いかに生きていくことが可能かということを、ガテラさんにスワヒリ語で直接問いかける場面も見られた。さらに、この活動はあくまでもお二人の個人的なつながりのなかで生まれたものであるが、そのような個別具体的でかけがえのない関係性の地平から、これからの活動のなかで目指してゆくものについての意見交換もおこなわれた。
(近藤有希子)