[班研究会] 言語・文学班第8回研究会(2018年11月3日開催)

日時:2018年11月3日(土)11:30~13:30
場所:京都大学稲盛財団記念館318号室

発表者1:佐竹純子(プール学院短期大学)
タイトル「文学・音楽・潜在力―アパルトヘイト後の脱植民地化」

南アフリカ共和国の国歌である「Nkosi Sikelel’iAfrika」の最初の数行にズールー語とショナ語の歌詞を加え、一貫してコールアンドレスポンス形式で歌われ、「脱植民地化の国歌」と呼ばれている歌がある。本発表では、それを材料としてとりあげ、その歌詞を読み解くとともに、それが歌われる社会的場面を分析することをとおして、文学と音楽がアパルトヘイト後の脱植民地化のプロセスに果たす役割、およびその潜在力について議論した。

発表者2:村田はるせ
タイトル:「児童書の創作の場から-ベナンでのインタビューより」
児童書の創作の場から ―ベナンでの聞き取りより―

ベナンには「アフリカの小川(Editions Ruisseaux d’Afrique:以下便宜的にERAと記す)」という児童書専門出版社がある。ERAは1998年以来、約200作の児童書を出版し、ベナンだけでなく西アフリカのフランス語公用語圏諸国に流通させてきた。今回は、2018年10月に行った、ERAで作品を発表してきた作家・挿絵画家14人への聞き取りについて報告した。聞き取った内容は文献資料からは知りえないことばかりで、ベナンでの児童書の創作と出版の歴史をあきらかにするものであった。

なかでも重要だったのは、ERAの成功の鍵である共同出版の構想の起源や、ベナンの作家・画家によるERAへの貢献に関する情報である。ベナンでは1990年代前半までは児童書出版の可能性がほとんどなかったが、作家・画家たちはベルギーやフランスの文化支援の枠組みで行われたワークショップを通して知り合い、児童書作家画家協会(AILE)という組織をつくり、創作活動を始めていた。同時に、ERAの創設者で作家のベアトリス・ラリノン・バド氏も、周辺国の小さな出版社同士が契約し、共同出資をするという構想をたずさえ、児童書出版を開始しようとしていた。これらの人々の複合的な活動により、ベナンは西アフリカのフランス語公用語圏のなかでもとりわけ多くの児童書を出版する国となったのである。

作家・画家たちは、みずからの創作活動について、生い立ちを織り交ぜながら語ってくれた。そうした内容も、子どもが本にふれる機会がごくわずかしかないベナンのような国で、児童書創作者がどのように誕生するかを知るうえで重要である。彼らに共通する特徴のひとつは、幼いころから物語の本や漫画に夢中になった体験を持つことであった。彼らは身内や友人、偶然近所にあった図書館を通して読書の魅力を発見し、さまざまな手段によって本や漫画を入手していた。物語を楽しんだ体験は、あきらかに彼らの創作の原動力になっているのである。だが創作においては、伝承をとおして知った価値観、伝統的なものの見方、そしてベナン社会での人生体験が大きな役割を果たしていると考えられる。

This entry was posted in summary. Bookmark the permalink.