日時:2018年6月16日(土)12:30~14:55
場所:京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科稲盛記念館3階小会議室1
今回の班会議では、「グローバル化とアフリカの王位・首長位」というタイトルで、班員の松本による研究の進捗状況についての発表が行われた。発表では、アフリカの王制・首長制に関する研究史について回顧したうえで、グローバル化が進む現在のアフリカにおいて伝統的権威者の地位が持つ潜在力について、特にナイジェリア・イボ社会を事例とした報告がなされた。
アフリカ研究において王制・首長制は、長らく近代国家を相対化する存在として関心を集めてきた。しかし、1990年代になると近代国家に包摂された伝統的権威者たちが、国家行政のなかで果たす役割が注目されるようになった。アフリカの様々な国では、民主国家と君主制が共生関係にあり、前者による後者の保護、活用が顕著となったのである。さらに近年では、アフリカ諸社会の王や首長らが国家の枠組みを超え、グローバルな社会的文脈のなかで一定の役割を果たすような場合も見られる。ディアスポラ・コミュニティにおいて王や首長と称する者が存在するとともに、「アフリカの王」がインターネットを通じてある種の文化資源として流通する現象が起こっているのである。発表では、故郷であるナイジェリア南東地域を離れ国内外の都市部で暮らすイボ人移民たちが、移住先の地で新たに擬制的な王制を創造する動きについて、特に在日イボ人コミュニティの事例をもとに報告された。
発表後の討論では、アフリカ潜在力における伝統的権威者の位置づけや今日のアフリカ諸国における政治と文化の関係性について質疑応答や意見交換が行われた。
松本尚之