日時:2018年6月16日(土)12:30~14:30
場所:京都大学稲盛財団記念館3階301号室
今回の班研究会では、前回の班研究会の議論を引き継ぐ形で、「アフリカ潜在力」の具体的な事例への適応についてのブレインストーミングを全参加者で行なった。まず班長の目黒がこれまでの「アフリカ潜在力」の概念をめぐる議論を整理し、第一期の研究成果である『アフリカ潜在力シリーズ』各巻における「アフリカ潜在力」の定義の異同を検討した。「アフリカ潜在力」を具体的な知識や制度、実践、作法に基づき例示的に定義する一群の議論がある一方で、そうした明示の対象としてというよりもむしろ、アフリカ社会に関して従来とは異なる視角を与える示唆的な概念として理解しようとする論者も一定数いること、そして前者に属する議論の間にも、「アフリカ潜在力」の定義をめぐっては抽象度や背景認識の点で大きな違いがあることを確認した。次に『アフリカ潜在力シリーズ』の書評を取り上げ、そうした多様な「アフリカ潜在力」に関する議論を外部の研究者がどのように評価しているのかを確認した。その結果、「アフリカ潜在力」という概念に関する議論の深化や論点の拡張を期待する声が多くある一方で、そうした意見であっても「アフリカ潜在力」の概念定義の厳密化を求めている訳ではなく、その肯定的で実践的かつ発見的な特性の評価を踏まえてさらなる議論の活発化が望まれている事実が明らかとなった。
以上の概念整理および議論を踏まえて、環境・生態班としてこれから「アフリカ潜在力」をどのように用いていくのかを次に話し合った。その結果、「潜在力」という言葉から受ける印象は班員によって様々であるため、各個に概念的な議論を展開するのではなく、その意味は『アフリカ潜在力シリーズ』において説明されているものを基本的な前提とすること、その際に具体的な知識、例示可能な実践、示唆的な分析視角などのいずれの議論を採用するかは各自の判断に委ねること、その上で、各自が調査研究している具体的な事例への適用を試み、それによって研究上の新たな展開が生まれ得るのかどうかを検討することを、今後の方針とすることで合意した。第二期から新たに加入したメンバーもいる中では、「アフリカ潜在力」の概念をどのように理解し適用するのかという点について、なかなか合意がつくれないでいた。しかし、これまでの班研究会の結果として最低限の合意は形成されたと考えられるので、次回以降は事例報告を中心としつつ、可能な範囲で環境・生態に関する最近の研究動向のレビューも進めていきながら、「アフリカ潜在力」のこれまでの議論の適用可能性を検討していく計画である。