日時:2018年1月27日(土)
場所:京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科稲盛記念館3階318
報告タイトル:エチオピアにおけるフードセキュリティ政策と牧畜社会
氏名:佐川徹
本発表では、2000年代半ばからエチオピア政策が推進している食料安全保障政策、とくにPSNP政策の概要を説明したあと、それが同国西南部の牧畜社会でどのように運用されているのか、またそれがほかの開発政策といかなる関わりを有しているのかを検討した。発表者の調査対象地域では、2000年代後半から複数の大規模な商業農業が稼働を開始し、また2010年代に入ってからは上流部に巨大なダムが建設された。従来、この地域では川の氾濫を利用した豊かな食料生産が可能であったが、これらの開発事業により長年この地で営まれてきた家畜放牧や穀物生産はその存続が危ぶまれる事態となっている。つまり、もともと相対的にfood secureであった地域が、大規模開発によってfood insecureな地域となりつつあるのである。本発表では、食料安全保障政策による食料や現金は、これらの開発事業が生みだした負の影響を埋め合わせることを主たる目的として、牧畜民に配分されていることを示した。質疑の時間には、大規模開発への牧畜民のより能動的な対応のあり方、PSNPにおけるFood for WorkとFood for Cashの使い分け、PSNPが形成・実行されるにいたった歴史的経緯、都市部における食料安全保障政策などに関する質問が出され、充実した議論がなされた。(佐川徹)