日時:2017年6月17日(土)13:00~15:00
場所:京都大学 稲盛財団記念館3階中会議室
(以下、敬称略)
報告タイトル1:ダルエスサラームにおける人々の英語への態度
氏名:沓掛沙弥香
所属:大阪大学
本発表では、2017年2月にタンザニアの首座都市ダルエスサラームにおいて行った、(1)英語を教授用言語とする私立小学校への聞き取り調査および参与観察調査、(2)英語を教授用言語とする私立小学校で教育を受けた人、あるいはそのような学校に自分の子どもを通わせている人へのインタビュー調査の結果を報告した。実際には言語による問題ではないものの、英語を教授用言語とする私立小学校が提供している教育とスワヒリ語を教授用言語とする公立小学校が提供する教育に圧倒的な格差がある状況が、人々の英語への意識に影響を与えている状況が確認され、それに基づく階層意識や差別意識も見られることがわかった。さらに、英語で提供される教育の中にも格差があり、より高価な教育を受けた人はそうではない人と自分を差異化する傾向にあった。これまで人々は、スワヒリ語の共有によって形成されてきた「Umoja(統合、unity)」の意識を共有していたが、英語の重要性への認知が高まったことで言語格差が強く認識され始めている状況が確認された。
報告タイトル2: スワヒリ文学の読書環境の観察と創作の場の広がり
氏名:小野田風子
所属:大阪大学
今回の発表では、2017年2月24日から3月4日にタンザニアで行った読書環境についての調査結果と、スワヒリ語のFacebook小説について紹介した。ダルエスサラームとザンジバルで行った調査では、できるだけ多くの書店に赴き、売られている本の種類を観察した。その結果、教科書、宗教関係の本、ハウツー本は比較的身近だが、文学作品は非常に手に入りにくく、興味を抱きにくいことがわかった。一方タンザニアには、スワヒリ語で書いた自分の小説をFacebookに投稿し、多くの「いいね」を獲得している若者が複数いる。Facebookは出版のハードルが高い社会において、強い創作意欲を持つ若者たちの表現の場になっている。アフリカには読書の習慣がなく、本は必要に駆られて読むと言われるが、Facebook小説の人気は別の事実を示唆するものである。
沓掛沙弥香