日時:2016年11月12日(土)10:30~13:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階小会議室1
(以下敬称略)
報告タイトル:非国家主体への武器移転問題と国家主権:アフリカに着目して
氏名:榎本珠良
所属:明治大学国際武器移転史研究所
反政府集団などの非国家主体への武器移転は、1990年代以降の国際的な政策論議の争点の1つになった。ただし、国際的な政策論議で非国家主体への武器移転問題が取り扱われることは、決して1990年代以降の新しい現象ではない。主権国家システムが形成されて以降、主権国家以外の主体への武器移転はしばしば問題視されてきた。しかし、その問題視のされかたは幾度となく変容してきた。
この報告では、まず、主権国家形成後から冷戦期までの国際社会における非国家主体に対する武器移転をめぐる問題認識の変遷を辿り、次に、過去の各時代と対比しつつ、1990年代以降の政策論議の特徴や背景を明らかにした。そして、1990年代以降の合意文書(アフリカの地域的な合意文書を含む)において非国家主体への武器移転に対していかなる取り決めがなされてきたのか整理した。そのうえで、この報告では、各時代の「非国家主体への武器移転問題」のフレーミングが、その時代に主流を占めた国家性認識や人間認識を反映してきたことを論じた。最後に、近年のアフリカにおける地域的合意の特徴を明らかにし、「アフリカ潜在力」プロジェクトのテーマとの接近方法(報告者の今後の研究課題)を検討した。
討論時間においては、冷戦期と冷戦終結後の政策議論や合意文書等の相違、アフリカの地域的合意の特殊性をもたらす原因、1990年代以降に非国家主体への武器移転に対する政策的対処として提案された複数のアプローチの詳細や相違、特定の紛争等が同時期の政策論議に及ぼした影響、19世紀の対アフリカ武器移転規制の背景などについて、質問や議論が行われた。そのうえで、報告者の今後の研究課題として、アフリカ諸国による合意文書の実施状況の調査などが提起された。
榎本珠良、太田至