「ルワンダにおける教員の能力向上にかかる調査」
辻本 温史
(派遣先国:ルワンダ/海外出張期間:2016年12月3日〜12月18日)
1994年4月~7月にルワンダで起きた大虐殺の犠牲者は、100日間で80万人とも100万人ともいわれています。これは当時の全国民の10%~20%が犠牲になったことを意味します。またそれだけではなく200万人を超える多くの難民を生み出しました。虐殺では多くの教員が犠牲になっただけではなく、学校・教材といったインフラ、教育制度も破壊されました。しかし、1994年7月に内戦が終結すると、各国の積極的な支援を受け、2000年には初等教育就学率が内戦前の水準に戻るなど、急速な回復を遂げました。2000年以降は、毎年7%~8%の好調な経済成長を背景に、12年制基礎教育、教員研修機会の拡大などの教育改革が進められてきました。
わたしは、2010年11月から2012年11月まで、JICAルワンダ事務所で教育分野を担当しました。ルワンダでは、現政権の強いリーダーシップの元、明確な政策と目標が掲げられ、政府はそれを実施するための努力をしています。一方で、政策自体が現場の実態と乖離していることが課題となっています。例えば技術教育・職業訓練分野では、技術標準枠組みとそれに基づいたカリキュラム及び教員/指導員資格制度を導入しようとしていますが、技術標準枠組みを主導する産業界が未成熟な上、ほとんどの教員/指導員は現行の仕組みでも十分に指導できる能力を備えているとは言えません。
そこで、わたしは教員個人がどのように教員としての力量を形成し、どういった困難を抱えているのか、教員個人の語りを中心とした調査を開始しました。まだ開始したばかりですが、虐殺の直接的な影響だけでなく、その前後の混乱期にも様々な困難に直面した実態が明らかになってきております。また、教員養成制度・資格制度が十分に整備されているとはいえない中で、必ずしも十分な知識や技能を持たないまま教員となった個人が、様々な研修機会を活用し、教員同士の助け合いを通して、教員としての能力を強化し、自信を得てきたことが少しずつ見えてきました。今後は収集した教員の個人の語りの分析を進めていきたいと思います。