[海外出張報告] モハメド・オマル・アブディン(対立・共生班)スーダン 海外出張期間:2017年1月23日~2月23日

「スーダンにおけるFGM/C正当化の論理とその変容」
モハメド・オマル・アブディン

(派遣先国:スーダン/海外出張期間:2017年1月23日~2月23日)

スーダンにおけるFGM/Cの擁護派と反対派間の対立の現状と、双方が自らの主張を正当化するためにどのような論理を用いているのかを解明することを目的として本調査を行った。とくに、FGM/Cの問題が、政治論争のトピックとして表れている現状に注目しながら、FGM/C正当化の論理とその変容を明らかにしていきたいと考えている。

現地調査は、スーダンのハルツームにおいて実施した。まず、厚生省、内閣管轄下の国立子供福祉協議会(National Council of Child Welfare)、国会(National Assembly)におもむき、関連資料を収集した。また、ハルツーム大学社会開発研究所、アハファード大学ジェンダー研究所の担当者と面会してインタビューをおこない、図書館では資料を収集した。そして、青年男性(20代から30代)グループへのインタビューを実施し、また、複数の男性を集めてディスカッションを行うことも試みた。

今回の調査により、スーダンにおいては、FGM/Cの正当化をめぐって従来の成女儀礼としてではなく宗教教義として、認識され始めていることが明らかになってきた。すなわち、擁護者は、グローバルな反対運動の影響が強くなるなか、「伝統儀礼」として正当化することが困難になっていることから、別の論理を新たにつくるという動きがみとめられた。これに対して反対派は、FGM/Cは宗教との関連が薄いことを主張するという、消極的な対応にとどまっている。また、行政は、撲滅運動に前向きであり、キャンペーンなどを実施している一方、立法面では、FGM/Cの禁止法案を否決するなど、立法と行政の間では不整合がみられ、FGM/Cをめぐる現状は複雑化している。

今回は主として、擁護派と反対派がみずからの主張を正当化する論理がいかなるものであるかを調査してきたが、今後は、双方の主張がどのように一般の人びとに浸透しているのかを調査していく。また、男性グループのディスカッションを組織して感じたのは、公の場におけるこの問題への人々の発言と本音との乖離である。この事実は、FGM/Cについて語ることが、依然としてタブーであることを裏付けるものであるが、調査の方法を慎重に選びながら進めなければ、現状を正しく理解することは困難である。今後も、文献調査とインタビューを並行しながら調査をおこなっていくが、その際に、宗教家や医師など、FGM/Cに関連して人々によく知られている具体的な個人の活動とその人に対する人々の意見に注目しながら調査をすすめていきたい。

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