「ウガンダにおけるTVETと訓練生の技術習得」
鄭傚民
(派遣先国:ウガンダ共和国・カンパラ/海外出張期間:2019年11月19日〜12月11日)
ウガンダでは労働可能人口の増加率が年4.8%でとても高く、毎年70万人が労働市場に進入している(World Bank,2016:1)。失業者の3分の2が18-30歳で、青年失業は雇用機会の不十分および技術不足が原因とされている(World Bank,2016:11)。このような背景からウガンダでは2008年に国会で「Business, Technical, Vocational Education and Training ( BTVET ) Act」を制定し、2011年にはベルギー技術協力局(Belgian development agency:BTC)および世銀の支援をうけウガンダの教育・体育省( Ministry of Education and Sports)を中心に「Skilling Uganda」というスキル形成に重点を置いた技術訓練に関する計画を発表する。そしてその目標を「資格中心の教育から現場で使える技術教育中心へ、全ての人が受けられる教育へ、学校から仕事現場中心の環境へ、管理主体は政府から公立・私立へ」と掲げた(Skilling Uganda, 2011)。
今回の調査ではカンパラに所在する職業訓練校2か所を訪問し、ウガンダの職業訓練と技術習得に関して関係者へのインタビューおよび参与観察を行った。まず、調査では技術訓練校の理論授業と実習からの技術習得に関わる現状と課題をきくことができた。訪問した職業訓練校は国家により運営され、ドナーなどからの支援もある場所でまだ実習のための機材などは他職業訓練校に比較して整えられているという現状であるにもかかわらず、クラスの性格によっては訓練生の数が多くて実習授業などの時間が限られるということが問題として掲げられた。また2008年のBTVET法により2009年から始まったUBTEB(Uganda Business and Technical Examinations Board)国家資格は理論的な試験の分量も多く、実習の時間が十分ではないという指摘もあった。
職業訓練校内と産業現場での技術格差に関しては、技術発達による格差問題などが存在するという指導員の共通的認識があった。訪問したA校はこのような技術格差の問題解決および学生支援のために民間企業との連携体制を整えていた。実際、調査中にこの民間企業でインターン採用や就職に関するワークショップが開かれ、訓練生に企業を紹介し、求める人材像に関して説明しながら質疑応答するなどする場を観察することができた。A校では企業から社員の技術向上のための訓練を依頼されることやインターンシップから帰ってきた訓練生からのフィードバックを受けることなどで技術訓練校と産業現場の技術格差を認識し、対応するということであった。一方、B校はまだ新しく、民間企業とのコネクションはまだなく、これから産学協力を増やしていく必要性を感じているということであった。A校の修了生へのインタビューからも実習時間の少なさや現場で必要な高度な技術の習得が技術訓練校では習得が難しいとされた。
今回、訪問した学校の場合、様々な施設と設備を整えており、指導員は設備が利用可能な能力を持っていて、新しい技術を習得するためにドナー支援などで海外に行く機会もあるなどまだいい環境であったが、このような状況であるにもかかわらず、訓練生の数と技術格差に関する問題をもっていた。これはA校とB校のみの問題ではなくウガンダ教育体育省の戦略と予算支援の不足という政策的な背景につながっていて、一部の他校の指導員をインタビューした結果、地方の方の技術訓練校はより多くの問題を抱えていることが分かった。今後は他職業訓練校に関しても視野を広げ、ウガンダの職業訓練に関する実態をより学術的に詳しく検討していく。
参考文献
Ministry of Education and Sports (2011) Skilling Uganda: BTVET Strategic Plan 2011-2020 World Bank (2016) Country Partnership Framework for the Republic of Uganda