京都大学では2011年から「アフリカ潜在力」プロジェクトを立ち上げ、アフリカに生きる人びとがみずから創造し使い続けてきた知識や制度(=潜在力)のありさまを解明して、それを人びとの和解や社会の修復のために活用する道を探究してきました。今回のアフリカセンター公開講座「アフリカから学ぶこと」は、この「アフリカ潜在力」を取り上げます。2016年に開始した後継プロジェクトのメンバーがアフリカ潜在力について実例を交えてわかりやすく語ります。
時間:15時~17時(開場 14時半)
場所:京都大学稲盛財団記念館3階中会議室
定員:50名(先着順)
受講料:1講座1000円、5講座4,000円
お申し込み方法
「お名前、ご住所、連絡先、受講希望講座」を記して、下記のいずれかへお送りください。
- Eメール manabiafrica@gmail.com
- 郵便 〒606-8501 京都市左京区吉田下阿達町46 京都大学アフリカ地域研究資料センター 公開講座係
- FAX 075-7535-7831
お申し込みいただきましたら5日以内に受講受付と受講料振込のご案内を返信いたします。
◆ 第1回 2017年 10月21日(土)
「アフリカの潜在力が現代世界を救う」松田 素二
日本社会におけるアフリカのイメージはどのようなものでしょうか。数百年つづいた人類史最悪の人身売買(奴隷貿易)の犠牲者、ヨーロッパの植民地支配の犠牲者、あるいは絶え間なくつづく内戦内乱の犠牲者、さらには貧困や飢餓、環境破壊や感染症の犠牲者といった負のイメージは、近代日本社会に限らず世界に定着してきたものでしょう。わたしたちのプロジェクトは、「victim(犠牲者)」とされてきた社会と人々が、直面する困難と絶望のなかで編み出してきた「問題解決」の知恵と、それを支える「哲学・思想」について、アフリカ人の研究者・実践家と協働して、現場のなかからとりだし、それを現代世界の困難の解決のための一つの処方箋として提示することを目指しています。
松田素二(まつだ もとじ):京都大学大学院文学研究科・教授
ナイロビ大学社会学科大学院修了、京都大学文学研究科博士後期課程中退、博士(文学)。東アフリカにおける都市-農村関係の動態に関する歴史民族誌を研究している。主な著書に『紛争をおさめる文化(アフリカ潜在力シリーズ第1巻)』(共編著、京都大学出版会、2016)『African Virtues in the Pursuit of Conviviality』(共編著、LANGA、2017)など。
◆ 第2回 2017年11月18日(土)
「自然保護と人びとの潜在力:畏れる力となにもしない力」山越 言
現代のアフリカで、自然保護はとても重要な問題です。しかし、そこでは「誰が」「誰のために」「誰の」自然を問題としているのでしょうか。西アフリカ・ギニアの片隅で、裏山に住むチンパンジーとともに暮らしてきたボッソウという村を事例に、この複雑な問題を考えてみましょう。植民地時代から、モノカルチャーのような集約的な農業と同時に、貴重な自然資源の保護を強要されてきた人々が、寡黙に保持してきた自らの土地についての在来の知恵に注目し、ローカルな視点から、これからの自然保護のあり方を考え直してみたいと思います。
山越 言(やまこし げん):京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授
1969年長野県生まれ、京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了、博士(理学)。
アフリカの野生動物と人々の暮らしの関係について研究。主編著に『自然は誰のものか』(京都大学学術出版会、2016)など。
◆ 第3回 2017年12月 16日(土)
「都市に生きる人びとの潜在力:カメルーンの小さな仕事から見えてくるもの」平野美佐
アフリカ都市は一般的に失業率が高く、大学を卒業しても、良い就職先はなかなかありません。それでも生きていくために、人びとは自ら仕事をつくり出します。行商人や露天商になり、家族を食べさせ、子供を学校にやり、住む場所を確保します。努力して、その小さな仕事を大きな仕事にすることも可能です。糊口をしのぐためだけではなく、夢や希望があり、人びとの潜在力が発揮される世界なのです。カメルーンの首都ヤウンデにおける小さな仕事の継続調査から、アフリカ都市に生きる人びとの潜在力を考えてみたいと思います。
平野(野元)美佐(ひらの・のもと みさ):京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授
総合研究大学院大学博士後期課程修了、 博士(文学)。
アフリカの都市、都市=村落関係、沖縄の模合などについて研究。主な著作に『紛争をおさめる文化(アフリカ潜在力シリーズ第1巻)』(共編著、京都大学出版会、2016)など。
◆ 第4回 2018年 1月20日(土)
「社会変化のなかでの潜在力:アフリカで忠誠心を考える」大山修一
わたしの調査は、アフリカ農村における自給生活を営む人々を対象としてきました。農村では現金を介在させることなく、貧困だったのかもしれませんが、そこには確かな豊かさが存在しました。そうした農村社会が近年、急速に変化していますが、人々の動きには経済的なインセンティブだけでは説明できない情景が見えてきます。父親や村長、長老に対して、チーフに対して、上司や親方に対して、宗教的指導者に対して、そして、ときにテロ組織のリーダーに対して、人々は強い忠誠心を示すことがあります。周囲からは見えにくい、人々の忠誠心が、平和を希求する社会の動きになると同時に、社会を破壊する動きとなる可能性があります。忠誠心を切り口として、アフリカ社会における貧困や不平等、テロの問題、そして、われわれの社会・暮らしを考えていきます。
大山修一(おおやま しゅういち):京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了、博士(人間・環境学研究科)。西アフリカ・サヘル地域において、都市ゴミを使った砂漠化対処技術の普及により、都市衛生の改善と環境修復、食料増産、紛争予防をめざしている。主な著書に『開発と共生のはざまで-国家と市場の変動を生きる』(アフリカ潜在力シリーズ 第3巻、高橋基樹・大山修一編)京都大学学術出版会。
◆ 第5回 2018年 2月17日(土)
「アフリカ潜在力:他者とのつきあい方をアフリカ人に学ぶ」太田 至
「アフリカ潜在力」に関する研究プロジェクトの大きな目標のひとつは、アフリカの人びとがどのように紛争を防止あるいは解決しつつ、共生を実現しているのかを明らかすること、さらには、そこからわたしたちが学べることを活用しながら、新たな共生の思想を創出することにあります。これまでにわたしは、アフリカの牧畜民のあいだで研究を続けてきましたが、本講座では、この人びとが一見したところ、わたしたちとはかなり異なる「人づきあい」をしていることを紹介します。彼らはつねに、相手に対して強引ともいえるやり方で積極的にはたらきかけて、同時に、相手の能動的な反応や深い関与をひき出すのです。本講座では、こうした相互行為のあり方から、わたしたちは何を学べるのかを考えます。
太田至(おおた いたる):京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授
京都大学理学研究科博士後期課程修了、博士(理学)。東アフリカの乾燥地域に分布する牧畜社会を対象として、家畜と人間のさまざまな相互関係について人類学的な立場から研究を続けてきた。また、この地域の開発や紛争解決に関する調査も実施している。主な著書に、太田至(総編集)『アフリカ潜在力シリーズ全5巻』(京都大学学術出版会、2016年)など。
主催:京都大学アフリカ地域研究資料センター
共催:日本学術振興会科学研究費補助金・基盤研究(S)「「アフリカ潜在力」と現代世界の困難の克服:人類の未来を展望する総合的地域研究」(代表:松田素二[京都大学])